自分の親を(去っていった父親も含む)見ていて思う。あの人たちは、職業で、普通のサラリーマン、OL以外の職、例えば医者や、技術屋や、パイロットや、タクシードライバーや、介護職の方々や、そういう人たちを ....
愛の詩綴るこの指君想い目覚めてみるは淡い面影
泣きたいと願う瞼に涙なしくずれゆく見えぬ思いに涙ありけり
振り返る夜のホームにたちつくす君の振る手に明日の香りが
降り続く雨の後の空架か ....
爪の泣き声が聴こえて指を見た指は若芽のようにぐにゃぐにゃと揺らいで
私の思考を悩ませた。指の爪には足が生えていた爪の足はとことこと浴槽
を歩いて空間中を旅しはじめた。ごきぶりのように爪の足 ....
秋晴れに君を想うは遠い夏指先残る君のぬくもり
吹き抜ける草原の風耳澄まし彼方に君の声が聴こえる
この皮膚の何処かに夏を探したく外した指輪白き面影
君の身に刻みたくても刻めない募る想い ....
誰かの声が聴こえた気がして私は耳を澄ます
部屋のなかにも外にも誰もいない。けれど私
は誰かの気配を感じる。鏡に映る私が私では
ないように感じる。そっと手を伸ばせば届く
ような感覚に支配されて私 ....
彼方から雨が降ってくる。その雨たちを束ねて
鋏で切って海を千切りたい。鎖につながれたこ
の心は固まったまま四角の水槽を往来している。
夢を見ることも赦されずに、花咲く季節も見れ
ないまま私は歳 ....
誰かが私の涙を見て笑っている。
それは優しさではなく、あたた
たかなオブラートで包んだ刃だ。
私にはどうしてこんなにもわか
るのだろう。それは私の母たち
が愛のない身体に流してきた雨
と同 ....
見えないナイフを抱えて走る。
私は胸のなかに盲目のナイフ
を抱えている。何も見えない
くせにたくさんの人を傷つけ
て泣きながら笑っている私の
ナイフ。月明かりの匂いだけ
はわかるようで顔を ....
なにかことばが書けるとしたら
私はここになにを書こうかたと
えば当たり前かもしれないけれ
ど詩人は嘘つきでその嘘は多分
真実と嘘の合の子でどこからど
こまでが本当でどこからどこま
でが嘘な ....
私の瞼に咲く花は
いつも明るく黒い色をしている
明るい黒い色は
ナイフで切り刻まれた
唇の笑顔になって
翼のようにひろがっている
空を見上げては
飛びたがっている
私の明るく黒い花は
....
人というのは、生まれながらにして孤独を背負う生き物なのだと確信した時から人生が始まったような気がする。私がこの事実を教えてもらったのが、27歳ぐらいのときで、けれど、27歳になっ ....
花びらを握りしめた
手のひらをそっとほどく
花びらは蝶になり
夜明け前の赤い空へむかって
円を描きながら飛んでいく
*
指先から聴こえる
川の鼓動をたよりに
目を覚ました足で
鼓 ....
握りしめた手のひらがほどけるときがいつかやってきたら
私は何か大きな憎しみに似た罪を赦せるのだろうかそれと
もまた別の何かを求めて自己を握りしめる旅をはじめるの
だろうか。いつかは私一人にな ....
指先に流れ込んでくることばたちが綴る詩は
川の流れにたゆたう髪のように絡みついては
また流れていく。ことばたちは生まれては海
月になって遥か彼方の階段をめざしていく。
ことばたちが昇っていく階 ....
秒針が耳の背中にこびりついてはなれない。
私は朝を生きながら夜を数え続けている。浮
かんでは消えていったいくつもの海月たちは
無言の会話を繰り返して味のない笑い声を立
てる。見えない海が目を覚 ....
書きたいときに、いつでも気軽に手軽に詩やエッセイや書評、短編小説などが書けてしまうのが、このスマートフォンないしアイホンだろう。私も仕事のかたわら、ほんの少しでも(ほとんど昼間だが)時間を見つ ....
本の頁を捲る度に、
髪をかきあげる度に、
引っかかる右手人差し指のささくれ。
ささくれの向こうには、
見たこともない懐かしい未来がある。
*
またひとつ、
母親に嘘をついた。
....
私よ、
手のひらにはなにもない。
そのなにもないからだから、
何をうみだせるのか、
常に問いかけよ、
まっすぐに、
大きく目を開いて。
*
どこにいるのかも、
わからない場所 ....
空腹を満たすようにあなたは水を飲む。
水はその身体に浸透し血と混じりあい血の赤い色素を超えていく。あなたのなかの色という色を溶かしこんで、水により透明になったその身体のなかの水は、あなたの毛穴や瞳や ....
追われる、追われる、追われる、
ピストンのなかの液体のなかの私が、
押される、押される、押される、
外へと弾き出される。
なにも持たないはずなのに、
何かがいつもゆれている。
私には見 ....
唇に針を刺して、
ぐるぐるとかき混ぜる。
歪んだ赤い月が、
いくつもうまれる。
その月のなかに、
あなたが映っている。
人形を抱いた幼いあなた。
小さなあなたは泣いていた。
唇をかみし ....
筆絶した空に浮かぶ星は、
迷路をつくるかのように、
地に落ちていった。
私はその落ちた星たちを、
拾い集めてことばをつくった。
死にながら生きていたことばたちは、
息をしながら低く輝いてい ....
じっと空間を見つめていると、
何かが聴こえてくる。
実際には何も聴こえないが、
目にうつるものが音を帯びてくる。
色にも音があるのか、
音に色があるのか、
空間は息吹を宿して、
この身体 ....
気がつくと、
一面真っ白な部屋のなかにいる。
部屋には窓一つない。
空気がこもっている。
部屋中に白い音がする。
天井に向かって手を伸ばすと、
目には見えない皮膜に触れる。
シャボン玉の ....
(声がきこえますか)
白い壁に凭れて、
暫く目を閉じていたら、
誰かの声を聴いた。
(声がきこえますか)
空耳だと思い、
壁をはなれて歩きだしても、
声はついてくる。
....
あなたは目にうつる白いものを、
すべて青に変えてしまう。
水鏡にうつる足元の世界に生きる、
私たちの空まで。
あなたの青に染められた私たちは、
本当の青を知らなくなった。
ただ、雨の色 ....
鏡の前の裸を殺す。
ぎゅるぎゅるぎゅるぎゅる、
揉みほぐし、
パンを捏ねる。
肉体パン。
じゃがいもの塊。
括れも曲線もわずかにしかない、
皮膚のしたにまとわりつく、
べっとりとした臭 ....
悔しくて、悔しくて、悔しくて、
何度も、何度も、キスをする。
かなしくて、かなしくて、かなしくて、
いつまでも、いつまでも、抱きしめる。
別れが近づいていることが、
わかればわかるほど、 ....
何かが足りない朝。
足りないのは眠りか、
ことばなのか、
前頭葉にかすみがかかる。
指を伸ばすわずかな距離に、
フィルターがかかる。
誰もが犯したくなくて、
犯してしまう領域。
....
もっともっと、
きみをかきたい。
もっともっと、
顔のちがうきみを。
きみはとてもうつくしいのに、
きまぐれで少し意地悪だ。
でもそんなきみに、
ぼくはずっと恋をしている。
き ....
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