夕暮れの川辺から
対岸の街を
眺める
私の前を
私と共に
過ぎ去って行った時間
満ちて行く川面の
流れが速すぎて
網膜に到達出来ない
暗い流れが
流れる音にすりかわる時
見えない ....
もうこれ以上流せない
昨日の涙に
あじさいは
あじさい色に
言いたいことが
たくさんあり過ぎて
何も言えなかった
こころの色が
雨に濡れるあじさいみたいに
いつしか わずかに濃くなる ....
明るい空から降る雨を
見ていると
青桐のみどりは
いっそう映える
あまりに明るいので
消えてしまいそうな花の色
五月の柔らかな光の中で
現れては消える面影
あまりに明るいので
まなざ ....
雨の午後
二階の窓ガラスにも
いくつもの雨粒が
雫 になり
流れ 落ち…
流れ 落ち…
通りの向こうで
顔の見えない傘が
立ち止まり
通り過ぎる
いつまでも
宛名を書けない手紙に ....
いつの間にか
大人になっていた
少年の終りが
大人への裏返しみたいな
知らぬ間の不意打ち
大人になって
子供の時間を捜す
小さい頃 理由もなく
大人みたいになりたかった
幼年の頃
....
風化した地名が
風にめくれる
とある地方の砂浜に
長く伸びる犬の影
午後の陰影が
時間を止める
孤立した犬の
悲しい視線を
誰も受け止められないだろう
一瞬
犬と私のココロが
入 ....
"祭日。陰り"
Kの日記の最後
その後の唐突な終り
無造作に切られた
電灯のスイッチのように
Kは消滅した
何の感慨も残さなかった終り
"共感する& ....
初めは小さな湧水だった
流れの始まりは
始まりの音
川の変奏へと
流れる川の音を
聴いていると
行く先々で
音が変わる
一人
佇んでいる
二人
柔らかなやり取り
....
夕焼けを
陽が沈むまで見ていたい
そう思いながら
いつもかなわない
夕焼けを見るのは
いつも帰り道の途中
遠くの森は
暗く沈み始め
自分の影さえ
別の生き物に見える
世界のすべてが ....
言葉(コト)撰びの哀しみの後(ノチ)たまゆら 冷えびえと定着し難き陰画
また来む日とうそぶく夕暮れ 在りし日の潜像しんしんと濃くなる
雨に濡れた
青桐の
新芽のみどり
雨粒一つ一つの
音の輪郭
季節外れの
冷たい風と雨粒を掌に
雨音は
変奏し続けるだろう
古い端切れの
ほつれた
一本一本の糸の
誰かの記憶のよ ....
ぎこちない鑿(ノミ)の跡の石仏を見て
「素朴」という言葉を捨てた
飢饉デ死ンダ者タチヘ
追悼ノタメ
目鼻立ちも定かでない
自然石のような石仏に
表情は要らない
飢エテ倒レタ者タチヘ ....
もう逢えないはほんとだった 明け方の利久椿の九相
見えない風に震えていた
あの時
柔らかな時間に浸蝕された白い花弁のささくれ
鬱金香
が 首をかしげ始める
思い出すたびに
遠くなる指先の感触
言葉の誘惑に負けて
どんなに美しい言葉をか ....
古い畳の上の
小さな端切れを見ていると
きものをきるのと同じくらい
楽しくなる
五月の空の下を
どこからか 不意に
クチナシの香り
五月の風を感じながら
香りの行方を
探したくなる
....
何だか分からないけど
言葉で「定義」すると安心する
分かったような気がして来る
分からないモノやコトの凹にイミを充填する
定義しなければ前に進めない?
進むために何でもいいから充填する
ご ....
静かにリンゲル液漏れ出で発熱する自画像
漏斗に浸水して饒舌やみぬ鴕鳥の如きソフィスト等
緩慢に
闇を燃やす
ロウソク
の滴
夜は等寸に
切り分けられる
薄紙に定着したしみのような方寸の記憶
が無造作に重なる
**風景**
それから 物語…
(あったか ....
夜伽無精卵温めをり立ちいづる半音階の夢
橋懸りに若き裸身ありて放火の予感にさいなまれ
アヰイロの階調遥けく うすくうすく遠ざかるいくつもの記憶(トキ)
剥落ある写真の眼差し夕暮れて今日と明日(アス)の間(アハヒ)を行き来せる
春夜まとふ身いつしか見えざる東北(トウボク)の桜花幻視する
人気(ヒトケ)なき通りをマネキン誘拐され行く春の日うらら
早婚の少女の睡眠浅し桃色の指先のプレリュード
中耳に日章旗解けをり回廊に夥しき英霊
王国蜃気楼の彼方呼べども昔々在りしとて
コトバがあふれる
グールドの鼻唄まじりの
バッハの平均律を聴くたびに
コトバの「意味」の間に
虚しい風が吹き抜ける
遂にそのものであり得ないことを
思い知らされる時
あふれ続ける
コト ....
ケイタイより幻聴の狂想曲(カプリチオ)その日の午後少年失踪す
杳として知れざれば黄昏に少年マッチすりをり
いつのことか
忘れていた
色彩の花は
不分明な闇に
溶け始め
たおやかな
曲線の匂い
に埋没して
ユリ科植物
の夜は
深く沈む
花粉のついた
指
の先に
花は
匂いを残し ....
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