日が沈む音がして
二人は無口になった

語り尽くされた
愛の抜け殻の中を
夏の匂いが吹き抜ける

あなたの心の声も
花火の音に掻き消されて
何も聞こえなかった
コーヒーカラーが
ミルクとまじりあう
そんな季節があった

選ばれたものだけが
ミルクとまじりあえた

牛乳屋さん
で働くあなたが
何も言わずにぼくと
まじりあってくれた

選 ....
あなたから生まれいずる愛がある

バス停に生まれてバスを待ってたの

向日葵がくびかしげてる夏野原

恋に溺れ綺麗なままで水中花

夕暮れにネオン涼しき予感かな

今年またなくなり ....
夜の滑り台で遊ぶ
流れ星の願いが叶う
お父さんとお母さんは
むかし屋根の上で
恋に落ちました
ガラス時計から
コードは生まれ
世界のどこか
不協和音の子供たちの
空を信じてやまない
平和とそれ以外が
夏に調和したら
秋の足音が
もう道に迷っている
ボケットに
愛をつめこんで
電車は走る

窓の外には
形を変えた愛が
こんなにも多く

ざぶざぶと
波に洗われ
そして
さらわれてゆく

あなたが
待っている
駅までつづ ....
うっかり昼寝している間に
半開きの窓から
しちがつの祭りが逃げていった
あわてて町中を探すと
黒山の人だかりがあり
かきわけて中に入ると
側溝に落ちたしちがつの祭りが
救出されているとこ ....
生まれては消えてゆきます片恋は炭酸水の泡の数ほど

もくもくと瞼の裏に夏の雲夕立のあと虹ふたつ

遠雷におびえる硝子風鈴の母を呼んでるかぼそき声

はてしなく走る草原夏の日の思い出は今ポッ ....
片恋のボタンはずして息をする

坂道を二人乗りして夏が行く

できたての朝は真夏のゼリーかな

水族館ガラスに映るあなた見てる

砂浜の足跡がまた波に消え

潮騒の残響に潜む君の声
霧のポケットから
たよりなくこぼれおちる
飴でできた郵便受けに
新しい手紙が届く

閉ざされた空から降り注ぐ
涙の化石ひとつひとつを
言葉に記すように雲のページは
静かに静かにめくられ ....
テレビの中のひとが
環境問題について話していました
テレビの外のひとは
そんなものだろうとみていました
テレビの中と外の境目に
三つの色がありました
太陽と植物と空の色でした
ひとの色で ....
「フラノ」というレストランで
イタリア料理を食べてから
私は回想バスに乗り
帰るべき家をさがす旅に出た

バスが「いのちの相談センター前」を通過するとき
入口に行列ができているのが見える
 ....
空泳ぐ魚が水面に映ってる

せせらぎの声が今日は風邪ぎみで

光る瀬に低空飛行の戦闘機

居眠りの私を蟻が巣へ運ぶ

川の瀬に溺れる私の夕まぐれ

さようなら魚が跳ねて言いました
鍋のなかに
台風が生まれた
鍋のなかに
溺れてるひとがいた
お玉ですくうと
意識をとりもどし
あわてて帰って行った
料理ができあがる頃
あなたは帰ってきた
助けてくれて
ありがとう ....
雨の空を見上げて
あなたからの手紙を待つ
何日も何日も
待てども待てどもこない
手紙は連日の雨で
空にとけてしまったかもしれない
そう思って家に帰ると玄関先で
それは静かに待っている
 ....
わさびが
目にしみた
とばかり
思っていたら
あなたは
ほんとうに
泣いていたのだった
このあいだのこと
ごめん
とあやまると
わさびが
目にしみただけよ
と言うあなたが
目 ....
十年以上も昔の地図と
現在の地形を見比べている
かつてあそこには
二つの山などなかった
かつてあそこには
草など生えていなかった
その草原の奥にある
深い谷から水が溢れ
湖となったそこ ....
新車のマグロに乗って
市場にマネキンを買いに行った
一番新鮮そうなのを一体買って
醤油色の帽子をかぶらせたり
わさび色の下着を着せたり
山芋色のコートを
羽織らせたりしてるうちに
お腹が ....
もうひとりの
あなたが
もうひとりの
わたしと
会っているとき
あなたは
電話で
会いたいね
という

もうひとりの
あなたが
もうひとりの
わたしと
けんかしてるとき
 ....
あなたのそこから
わたしのここへ
わたしのここから
あなたのそこへ
ながれるふたつが
ひとつになって
ここはこれから
どこへいく
そこはそれから
なんになる
そこはここでは
ない ....
真夏の砂浜の
パラソルの下の
ちゃぶ台に
貧乏な親子の
食卓があって
その隣には
サンオイルで
てかてかと輝く
若い女が
こうらぼしをしていて
やきすぎると
肌に悪いと思ったのか ....
人違いをした
人違いしたのは
はじめてではなかった
はじめて人違いしたのは
デパートのおもちゃ売場で
母親とまちがえて
知らない女の人に
おもちゃをねだったときだった
知らない女の人は ....
橋の上を
こどもたちが
笑いながら歩いてる
橋の下を
川が笑いながら流れてる
あんなに笑顔で溢れていた橋が
今は静かにこわされてる
橋の向こうに
笑うひとが
いなくなったために
よほど
苦しかったのか
あなたは
泡をはきながら
空高く水面へ
浮かんでいった

えら呼吸が
苦手なわけでは
なかったが
ときどき
疲れてくると
肺呼吸してしまう
悪い癖があ ....
睡魔が
風に乗って
教室へしのびこみ
誰かをいねむりさせる頃
遠い国では
核ボタンを押す
大統領が
睡魔におそわれて
世界は救われる
かみつこうとする
ライオンの疾走は
あえなく ....
にんげんたちが
ひそやかに休暇を楽しんでいた
ヌーディストビーチ
木陰から高性能カメラで撮影した写真の
投稿雑誌が創刊されてから
そこは動物園と呼ばれるようになった
ときどき妻が
キッチンの引き出しの中をのぞいて
笑っているのはなぜだろう
中をのぞこうとして近づくと
あわてて閉めて私を追い払う
みんな眠ってから
トイレに行くふりして
開けようとした瞬 ....
修理相談センターに電話すると
またあの女のひとが出る
状況を報告して電話を切って
しばらくすると
修理のトラックがやってきて
私を段ボール箱に梱包して
工場へ連れて行く

修理されてい ....
バスが停留所を見失って
行方不明になったことをニュースで知った夜
しばらく停留させてほしいと
誰かが私の家を訪れた
誰かと思ったらあなただった
あなたは風呂の小窓から
夜空を走るバスを指さ ....
ただ
みずからの内部を冷やし
その恩恵として
私の食物を長期保存し
やがてそれらは胃袋で消化され
私の腹を肥やし
あなたはただ
それだけのためのように
生きて
今日やっと
天に召さ ....
小川 葉(1581)
タイトル カテゴリ Point 日付
花火自由詩307/8/3 21:17
カフェオレ自由詩107/8/2 11:07
水中花俳句007/8/1 3:21
夜の滑り台自由詩107/7/31 21:29
調律自由詩107/7/31 2:18
黄昏自由詩607/7/28 18:40
しちがつの祭り自由詩407/7/27 0:33
思い出短歌707/7/27 0:05
真夏のゼリー俳句6*07/7/25 1:24
二番目のきみへ自由詩707/7/19 21:24
自由詩307/7/19 3:00
回想バス自由詩6*07/7/16 23:16
さようなら俳句607/7/16 17:24
ヒグラシ自由詩407/7/15 17:59
雨と手紙自由詩607/7/14 22:09
わさび自由詩607/7/14 20:55
ウィリー、ウィリー、きみの名は、自由詩5*07/7/13 23:44
鮮度自由詩207/7/13 20:53
話し中自由詩407/7/13 1:16
ひとつ自由詩107/7/12 22:51
パラソル自由詩3*07/7/11 2:30
人違い自由詩907/7/10 22:16
自由詩907/7/10 3:12
呼吸自由詩407/7/9 1:51
睡魔自由詩507/7/8 17:13
月刊「動物園」自由詩207/7/6 1:22
引き出し自由詩14*07/7/5 23:25
ゆりかご自由詩407/7/4 23:23
停留所自由詩407/7/3 22:39
冷蔵庫自由詩007/7/2 23:43

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