クリスマスの
イルミネーションの陰には
忍者がひそんでいて
みんなのおこないや
愛の深さを偵察しているのでござる
担当する区域を
偵察し終えると忍者は
忍び足で誰に気づかれることもな ....
水道の蛇口から
船の汽笛が聞こえる
船に乗った
親子の会話が聞こえる
いつになったら
港に着くの
少女の声がする
父は黙して
母はかもめを指差して
話をそらした
遠い昔
....
あそこに見える
あの鐘は
みんなの心の中にあるだけで
実際にはない
一年に一夜だけ
あなたはそんな嘘話を
僕に聞かせてくれたものだった
今夜もまた
その夜が訪れたけれども
嘘 ....
1.少女
地平線の上で
縄跳びをしている
少女がある日
その向こう側に
行ってしまった
縄は残されたまま
速度をうしなわずに
今もまわり続けている
地平 ....
沈んでるいつかの冬の奥底に
春知らぬまま消えた季節よ
向日葵の鮮やかさほどの白さかな
恋を重ねし色も重ねし
大胆に時には装う花もあり
見渡せば冬の枯野原
霜焼けの愛する人の手を ....
少年は
言葉の世界に暮らし
少女は
意味の世界に暮らした
地平線には
さみしい遊具があった
あれからどれくらい
年月が過ぎたのだろう
錆びついてしまった
心のように
ち ....
地平線の上で
ブランコに乗っている
少年がある日
そのこちら側に
来てしまった
ブランコは残されたまま
速度をうしなわずに
今も揺れ続けている
地平線のこちら側には
意 ....
未来は過去だ
そして
過去は未来だ
なんて言うと
歴史学者か何かと
思われるかもしれないが
ある時代を生きることのできる
人間の絶対量は決まっている
たとえば
西暦1969年生ま ....
地平線の上で
縄跳びをしている
少女がある日
その向こう側に
行ってしまった
縄は残されたまま
速度をうしなわずに
今もまわり続けている
地平線の向こう側には
言葉のい ....
老婆は
朝市で売れ残った
5本の胡瓜のうち4本を
田んぼの用水路に捨てた
4本のうち1本を
散歩中の老爺が川で拾った
老婆のきょうだいの老爺は
翌日老婆と一緒に
ふたり仲良く胡瓜を
....
とても遠いところに
家族がいる
つまり今は
一人で暮らしている
自分以外にしない
呼吸の音を
耳をそばだてて
一人聞いている
父も母も
兄弟も姉妹も
そして友さえも
....
機関車が吐いた雲が
今日はめずらしく
空になっている
そのはるか上層部で
空はやわらかく
諧調をなして
やがて海が広がっている
海は黙ったまま
何も言わずに
ただ海であろうと ....
夏の朝
朝顔が咲いている
なぜ咲いているのか?
それを完璧に説明することが
できないように
冬の夜
雪が降っている
その向こうにいつも
待ち焦がれるあなたがいる
なぜいるのか? ....
手を繋ぐと
聞こえる音が
聞こえなくなりそう
明日のように曖昧な
昨日の出来事のように
今はまだ
起こるべくして
始まるべくして
ただ静かに
呼吸をしている
空が遠い
あ ....
ああ
そこの
ここからそこの
すみずみまで
感じている生命よ
あなたのそこの
感覚鋭く
ときには鈍い
生命よ
わたしは悲しい
青い鳥
空は命に溢れても
この地上の
....
雪が降る
その国に
女が積もる
女
という字の形をして
組み合わさって
結晶を構築して
やがて
細い
細い
洞穴となる
思春期のこと
その奥の奥
たどり着いた先に
赤ん坊が ....
彼は彼の心の中の都市で
素敵な歌を歌う
僕は時々その歌を聴きに
都市に行く
そこで彼は誰からも理解され
誰のことも理解している
眩しい太陽
美しい恋人
すべての人々を魅了し
すべて ....
天使はやさしすぎたので
天国に連れて行かれました
その意味がわからない
一匹の猫は
黒い海を見ながら考えていました
お母さんのことを考えていました
お母さんは天使のようなおひとだった
そ ....
二十世紀らしく
賑わっていた街が
二十世紀の博物館になった
二十一世紀の街
欲しかったものは
当時の十分の一ほどの
価値で手に入る今
戦争の意味さえ
その程度のものだったらし ....
そらを飛ぶ
きっとやまねこは
高いところに住んでいる
高級なんだな
やまねこはきっと
金持ちなんだろう
やまねこはきっと
こまりごとなんて
ないんだろう
里のほうには
堕落した ....
三輪車は行く
何も知らないまま
道が道であることも
わからないまま
どこまでも
たどり着く場所があることを
想像さえ出来ないまま
ただひたすら行く
なにごともおそれず
やがて神に出 ....
挨拶するわけでもなく
さよならを言うわけでもない
この世界にはありえなくて
その世界にはありえた
幻想の高原のどこか
僕らはつじつまの合わない
黄色いポストに
手紙を出しに行く
過ぎ去 ....
真冬のベランダの部屋から
明るい声が聞こえていた
どんなに傷つけられても
いらない子だと言われても
最後のその時まで
ひたすら明るくあり続けた
お母さんのことが
大好きだったから
いってくれれば
よかったのに
そういって
あなたは
いってしまう
いってあげれば
よかったのだ
そうおもって
わたしは
おみおくりする
おみおくりのとちゅう
いぬがないて ....
少年は言った
明日の朝
荷物をまとめて
出て行くと
片道列車で
行けるところまで
行くのだと
てのひらの少年は
そう言ったのだ
彼はいったい
誰だったのだろうか
ゴム跳びのループの中で
時が止まったのは
宇宙のどこかで
誰かがゴムを踏んで
時を終わらせたから
ほとんどの人達が
そのことに気づくことなく
永遠であるかのように
演じているだけの
....
存在するために
薬さえ飲む
どうでもよいことばかり
世界にはあふれていて
秋の微弱を感じては
明日という名の薬を飲み
夢を好む
昨日の事が
縮図のように
うごめいていた
春でした
パラパラ漫画の
途中のひとこまが足りなくて
ぎこちない様子は
まるでぼくの人生のようだ
足りない日記の一ページのことは
思い出せないけれども
思い出せないふりをしているだけで
ほんとうは ....
秋の空は澄んでいる
そう思ったら
澄んでいたのは
わたしの方だった
あのひとは今
春なんだな
そう思っても
わたしの気持ちまで
春になるとは限らない
ふとポケットに手を入 ....
来年の今頃も
聞こえている唄
うたう命を
知ることもなく
野たれ死んだわたしの
希望のように
これからはじまることは
まるで懐かしい
出来事のように
知っているかのようだ
今わたし ....
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