あなたが
中古
静かに軋む二輪車の
匂い
角を曲がる
何かを思い出し
もう一度角を曲がる

イニシャルを失ったまま
あの縄跳びもまた
どこかへ行くの
駆け込み乗車は
錆びて
 ....
坂道の途中にある小さな花屋で
何度か花束を買った

買わない日の方が多いのに
そのことはあまり覚えてない

上り終えるあたりから見えてくるピアノがあって
軟式野球部員のカヂさんがよく曲を ....
夏休み
街から人はいなくなった
窓という窓
木陰という木陰
ベンチというベンチ
そのいたるところから
少しの匂いと
体温を残して

静寂、というには
まだわずかばかりの音 ....
久しぶりに実家に戻ると
父はまた少し小さくなっていた

質量保存の法則というものを
信じるのであれば
生真面目に生きることを止めようとしない父は
きっと
何処かで
何かを
与 ....
友達と仲直りをした娘は
昼食を食べ終え
さっさと青空の下に飛び出していった

子供同士っていいね
うん

娘たちは今ごろ
どのあたりを走っているのだろう
昨夜の小さなほころび ....
家具屋に行った
広いフロアを丹念に見て歩いたが
家具はどれも高くて
困ってしまった
結局小さな置時計をひとつだけ
買って帰ることにした
また時計を買ってきたの?
呆れ顔でそう言う妻に ....
さよならの「さ」は
さよならの「さ」

さよならの「よ」は
さよならの「よ」

さよならの「な」は
さよならの「な」

さよならの「ら」は
らっぱの「ら」

突撃らっぱ ....
池袋のスクランブル交差点
ど真ん中で俺は
釣り糸をたれる
ジョニー にぼしのジョニー
おまえはどこか
白い皿の上で美しく
干からびている
ジョニー にぼしのジョニー
おまえもかつて ....
あなたからの手紙、
「。」が全部ミジンコで
「、」が全部ゾウリムシ
だったよ
どうでもいいから
早く会いたい
言う男 の 言う が
ぷかぷかと空に浮かんで
言う の 雲になり
言う の 雨を降らせる
言う男 は 言う の雨にうたれながら
言わない
言う男 の 言わない は
地面にこぼれて ....
錦糸町では世界が
落下を始めていた
世界は徐々に
錦糸町に収束し
凝縮し
一点の穴から
落下している
俺は子供の頃
家のものに連れられ
錦糸町駅で降りた
公園ではルンペンが ....
ため息が汽笛となり
涙は色の無い雨となり
配膳車で旅をする
乗っているのは
おまえたちというより
俺たち
港町
哀歌
巨大なカウンターに腰掛け
俺たちは
おまえたちの肩を
そ ....
ふでばこを開けると
アフリカの草原が広がっていて
夕日に向かって一人
お相撲さんが
四股をふんでいる
何故あの日
僕はふたを閉じてしまったのか
守るべきものなんて
まだほんの少しだ ....
夜が街を歩いている
きらきら きらきら
瞬く星や月を身にまとって
夜が昼間の街を歩いている
きらきら きらきら
なんとゴージャスな
きっと昼食もゴージャスに違いない
誰もが夜に注目してい ....
空は鋼鉄製の空
優しい飛行機だけが
僕らの所有する
すべてだった
乗客は皆
海のかたちをしていて
ポケットは
いつもだらしない
客室乗務員が
小学生のように
一人
また一人と
 ....
男は長い間カバンの中に住んでいたが
ある日旅をすることにした
もちろんカバンを忘れなかった
昼間は旅を続け
夜になるとカバンの中で寝た
朝起きると同じ場所にいることもあったし
誰かの手 ....
窓ガラスがケラケラ笑うので
つられて笑った拍子に
右手にコンパスを刺してしまった
ついでに半径五センチ程の円を描こうとしたが
うまく描けないものだから
窓ガラスはいっそう声を高くして笑う ....
すべてが終わると
その町にも銃を担いだ人たちがやってきた
彼らはこの国の言葉や
この国の言葉ではない言葉で話すものだから
町の人々はますます無口になった

少年は喧騒と沈黙でごったがえ ....
金魚もいないのに
君は金魚鉢を買ってきて
それから金魚の餌と
水道水の塩素を中和する
透き通った小さな薬品も
買ってきて

それでも結局金魚鉢の中を
金魚が泳ぐことはなかったのは
 ....
ポストになりたくて男は
ポストの隣に立ち大きく口を開けた
ご丁寧に首から
「本物のポストです」
と札もぶら下げてみた
けれど誰も手紙を入れてはくれない
華やかに装った初老の女性も
 ....
玉ねぎが自分で自分の皮をむいている

オレハ ドコニイルノダロウ

いくらむいても自分は出てこない
それでも玉ねぎは自分をむき続ける

オレハ イッタイ ドコニイルンダ

その間 ....
手紙は
シロヤギさんが食べました

シロヤギさんは
クロヤギさんが食べました

クロヤギさんは
僕が食べました

僕は夕方
手紙になりたい
双子の兄弟が天秤の右と左に乗った
同じものを食べ同じものを着ているのに
右にのった弟の方が重かった
弟が髪の毛を数本抜いて
ようやく天秤は釣りあった
天秤から降りると
母親は二人の ....
どうせなら
この世にいるすべてのライオンが
友達だったら良かったのに
あいにく僕には一頭の友達もいない
だから食べられても仕方ないんだ
そんな言い訳ばかりが得意になっていく
ライオンのこと ....
酔っぱらった僕は
フライパンの真似をして
空に羽ばたいた
一番高いところで
激しく嘔吐したけど
よく見ると
それは言葉だったので
ますます気持ち悪くなった
一限目 数学
 ただ何事も無かったかのように
 男は黒板に数式を書き足していく
 黒板がすべて埋まると消して
 再び数式を書き始める
 数人の未成年がノートに書き写していくが
 誰も男の背 ....
部屋の中で素振りをしていると
外は激しい雨が降っていて
どこかとても遠いところから
僕の知らない動物の鳴き声が聞こえる

シマウマはたてがみも縞模様なのだと
テレビ番組でやっていた ....
心臓破りの坂
に破られる心臓
そして
けたましく鳴り響く電話機
に似た形のビニール袋
に梱包された
けたましく鳴り響く電話機
の絵

範囲内の限りにおいては
どうにでもなる
 ....
食後に飲むはずだったビタミンが
テーブルの上で醗酵している
その熱で君の言葉は燃え尽きてしまった
僕らはたくさんの窓や部屋を投げあって
ぶつけあって、お互い
何となく傷ついてる
夏 ....
横断歩道の真中で
持ち主を失った目覚し時計が鳴っている
この世のどこかにはそんな交差点があって
生きている人間は普通に呼吸しながら
もう生きていけない人間に
静かな止めを刺しているんだろ ....
たもつ(1691)
タイトル カテゴリ Point 日付
中古自由詩705/7/2 9:19
月日自由詩5*05/7/1 8:43
夏休み自由詩1805/6/29 17:59
法則自由詩1305/6/26 21:27
青空自由詩1405/6/21 22:41
自由詩1105/6/19 8:32
さよなら自由詩1405/6/17 23:58
にぼしのジョニー自由詩14*05/6/16 22:38
。、自由詩12*05/6/15 22:12
言う男自由詩905/6/13 17:49
錦糸町では世界が自由詩805/6/11 17:25
演歌自由詩1005/6/10 8:50
ふでばこ自由詩1305/6/9 20:10
自由詩605/6/8 16:03
おぼろげ自由詩905/6/7 8:55
旅の果て自由詩1605/6/5 11:21
外の景色自由詩405/6/4 9:14
すべてのあとで自由詩4705/6/2 12:47
金魚鉢自由詩1205/6/1 8:38
自由詩805/5/31 14:47
メタファー自由詩1705/5/30 9:47
手紙自由詩905/5/29 7:17
正確自由詩1205/5/28 6:43
言い訳自由詩805/5/27 8:32
嘔吐自由詩905/5/26 8:30
授業自由詩805/5/25 13:03
素振りなら負けない自由詩1605/5/24 10:48
あの日自由詩605/5/23 15:58
過ぎていく自由詩605/5/22 20:46
出発自由詩705/5/19 21:25

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