芽、夏の始まる頃
なだらかに繁茂し
雨戸のような
古い匂いのする部屋
少年は水棲生物の絵を描き
鉛筆の芯はそのために
おられ続けている
逝くもののために祈り
生まれるもののために祈る
 ....
昨晩まで裏庭で死んでいた父が
今朝は生き返って
何かの冗談のように
冗談を言いながら食事をしている

自分の胸に手を置けば
小さな鼓動が伝わってくる
それは生きていることの証なのに
多 ....
午前、町の本会議場では
一般質問に立った初老の議員が
延々と演説をしていた
議員も当局側も
数名が舟を漕ぎ始めている
誰が忘れていったのだろうか
傍聴人席には一冊の事典
その立派な装 ....
さようならー
さようならー
大声で
両腕を大きく回して
さようならー
さようならー

死んでいきたい

感謝も惜別もいらないから
ただただ
さようならー
という言葉し ....
あそこにいる人が
あなたの本物のお兄さんだ、と
偽物の兄は言った
青空にあんなに高く手を挙げて
いつまで疲れないのだろうか
明日になったら
偽物の兄が大好きな
餡子のお菓子を持って
 ....
ラーメン屋のカウンターで
長い廊下にぐるぐる巻きにされる
あなたも厨房で
ぐるぐる巻きにされている
狭いお店のいったいどこに
こんなに長い廊下があったのだろう
聞けばあなたはこのお店の店長 ....
角の先から尻尾の先まで
数えている間
よだれでベトベトの浴槽に
肩までつかっていると
今日の牛の冷たさが伝わってくる
それはほんの少し痛くて
やはり懐かしい
牛はただこちらを
 ....
丘の上に立って色の無い偏差値について語ろうとすると
バナナの風が熱帯雨林の方角から吹いて
学習ノートの文字は穏やかに飛ばされてしまった

間違えることなく世界にはたくさんのリビングがあって
 ....
野を渡る風が表皮をなぞると
確かに私たちからは
生きているものの匂いがする

ひれ状に並ぶ背中の突起物にさえも
既に意味は付与されているのだ

と、唐突に閃光が走り
どこか、と ....
メロスが走っていた頃
大半のメロスは
走ってなかった
セリヌンティウスが王に囚われていた頃
大半のセリヌンティウスは
自由に街を往来していた
少年の青白く細い指は
ページをめくり続け ....
たった一つの君は
風のように吹いているが
たとえば
コートのフードを躍らせたり
トマトの表面にとどまる水滴に光を与えるとき
微かな掌の温もりに似た質感を残していくのだ
そう 僕らは ....
家屋は言葉のように
優しく朽ち果てていた
時間があればそこかしこで
両親は笑顔を絶やさなかった
幸せな玄関ホール
その壁には今でも
兄と私の指紋が残されていて
静かに機械の匂いが ....
メロンパンが破裂して
扉が開いた
向こう側には
名前の知らない海峡がひとつあって
多分自分もあっち側なんだと思う
それなのに僕は波音を聞きながら
こっち側でひたすらメロンパンの
 ....
フリマの一番隅の方で
いなくなったままの父が
お店を出していた
犬がいっしょにいた
名前をペロといった
父が好んでつけそうな名だった
お店には小さな靴が一足
子供のころ私が履いて ....
見事に文字化けしていました
文字化けしてどうなったかというと
まだなってません
議場で私たちは深く愛し合い
お互いの身体のいたる所を弄り合い
底辺かける高さわる2
三角形の面積はど ....
やがて光が空から降りそそぎ
何かの形になると
それはわずかばかりの質感をもって
わたしたちの背中を押す
わたしたちは少し慌てたように
最初の一歩を踏み出す
でも決して
慌てていたわけでは ....
俺の死体が落ちていた
パンツの中だった
パンツは汚れていた
パンツは洗われてなかった
おまえによって

おまえは植木のひとつひとつに
水をやり
それぞれに優しく声をかける
そ ....
手荷物、は戦いだった
毎夜欠かすことなく
網棚はやって来て
月はまるごと列車でよかった
主翼があれば飛行機でよかった
ぼくは懐疑的な目
愛についてを語る

農家の野菜売りのおばさん ....
話に尾ひれがついて
泳ぎだす速度で
泳ぎだす
身体にあたると少し痛く
自分の血はまだ赤い

眠たい目を擦りながら
恋人のだらしない口元にキスして
唇から溢れたものは
唇に戻る ....
中村が集団となって土ぼこりをあげながら
ひなびた宿場町を走る
中村が健脚だとは聞いていたが
この地で生まれ育った番頭ですら
中村がどこに行こうとしているのか知らない
おい、とうろく、 ....
部屋に突然インドがやって来て
勝手にインダス川を氾濫させるものだから
部屋は水浸しになるし
大切にとって置いたものも
すべて流されてしまった
これは何の冗談だ、と
食って掛かっては ....
夜の更ける頃
君の身体から
今までに聞いたことの無いような
音が聞こえてきた
安らかに君は君の中で
溺れているのかもしれなかった

+

縄跳びの回数を
数え間違えて
少女はずっ ....
太った男の人が
日向で陽の光を浴びて
まだ少しずつ
太っている
やがて坂道経由の犬がやって来て
すべてを食べてしまった

+

お座り、が得意な子でした
お手、もしたし
 ....
焼き鳥が
香ばしい匂いを振りまきながら
暁の空を行く
カルシウムでできた複雑な骨を失い
たった一本の竹串を骨にすることで
初めて得た飛行を
力の限り大切にしながら
もうコケコッコ ....
手に触れるすべての
温度と湿度が
いつもより優しく感じられる
マリオをやれば
たくさんコインを取れる気がする
喪服に袖を通す
今日はもう
泣かずに済むのだと思う

+

 ....
好きなものを頼みなさい
メニューを渡すと
娘はしばらくうつむいて
星が見たいと言う
隣のテーブルにバスがいたので
手を繋ぎ乗る
ひとつ前の停留所で
サーカスを見るために
大半の客は ....
よく晴れた日
ハンガーに吊るして
自分を干してみる
きっと人はこのように
優しく干からびていくのだろう
水分も記憶も失いながら
+

鏡に向かって
笑う
そんな嘘
ばかり ....
尖った粘土に
刺さった虫
のように
息だけ
している
息しか
できない

+

明方
キリンの群れが横断歩道を
渡っていく
あれは首長竜の一種だ
と弟に教える
弟は悲しそ ....
人の嘘で
鳥は空を飛ぶ
鳥の嘘で
ドアは人を
閉じ込める
ドアの中で
人は鳥を
飛ばし続ける

+

いつも
三人なのに
いつも
八等分
してしまう

+

 ....
朝のやかん
なぞって
もう一度寝る
エビの夢を
見ながら

+

階段
すべてが
階段
そんな
建物

+

夕刊の
「帰」という字を
黄色く
塗っていく ....
たもつ(1782)
タイトル カテゴリ Point 日付
芽、蘇生自由詩1105/12/6 19:03
蘇生自由詩1105/12/4 8:12
架空少女事典自由詩805/12/2 15:02
さようならー自由詩5*05/11/30 17:25
自由詩505/11/29 19:22
ぐるぐる自由詩705/11/25 21:57
自由詩605/11/24 22:21
偏差値自由詩405/11/22 17:51
幻獣自由詩1205/11/20 11:43
自由詩1105/11/18 8:47
ブラックボックス自由詩10+05/11/16 21:32
優しい機械自由詩3105/11/14 19:56
デイゲーム自由詩705/11/12 19:33
フリマ自由詩20*05/11/10 8:39
法案自由詩405/11/9 15:33
祝詞自由詩1305/11/8 23:43
発見自由詩605/11/8 8:34
手荷物自由詩705/11/7 9:20
自由詩1405/11/2 14:36
とうろく自由詩1205/11/1 19:25
小詩集「書置き」(九十一〜一〇〇)自由詩29*05/10/31 19:30
小詩集「書置き」(八十一〜九十)自由詩2105/10/23 8:32
小詩集「書置き」(七十一〜八十)自由詩1605/10/18 23:20
小詩集「書置き」(六十一〜七十)自由詩1305/10/13 23:35
小詩集「書置き」(五十一〜六十)自由詩1205/10/10 16:55
小詩集「書置き」(四十一〜五十)自由詩12*05/10/8 19:18
小詩集「書置き」(三十一〜四十)自由詩1705/10/6 12:41
小詩集「書置き」(二十一〜三十)自由詩1805/10/4 8:55
小詩集「書置き」(十一〜二十)自由詩37*05/10/2 16:37
小詩集「書置き」(一〜十)自由詩1705/9/30 23:48

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