「おつかれさま」
数日前は、ぎすぎすしていた人に 
ひとこと言って、お茶を置いた 

「あら、はじめてねぇ」 
その人は大事そうに 
両手で湯呑みを包んだ 

一日、隣で働けば 
自 ....
目の前に、ひとつの器がある。 
(天から「私」への、願いの息吹が吹いている) 
世界にたった独りの、役者として 
私は私の器を、充たす。 
語り部は講堂内の明かりを全て、消した。 
百人の聴衆は、暗闇の一点に揺れる机上 
の灯を、観つめていた。(どんなに深い闇 
にさえ、この蝋燭の灯は負けないのです。) 
ぽっかり二つ空いていた席 ....
先頭の、早稲田のランナーが 
歯を喰いしばって近づいたので 
歩道で妻と旗ふる僕は 
「わせだぁ〜・・・!」と、叫ぶ。 

二番手の、東洋大のランナーが 
汗を滲ませ走っていたので 
 ....
疲れた同僚に声をかけ 
代わりにゴミ袋を、捨てにいった。 

困った顔した同僚に声をかけられ 
休憩時間を少し削って、手伝った。 

(あなたを助けたい)という一念は 
口に出さなくとも ....
毎日僕を職場まで 
車で送ってくれる君は 
無邪気な少女になって 
窓越しに、手をふる。 

門の前で振り返り 
いつもは緩んだ顔を 
きりっと締めて 
こめかみにあてた掌を 
真直 ....
「私が、」を脇に置く人は 
世界で最も素朴な花として 
天に向かって咲くでしょう 
林道の枯草を踏み鳴らし 
彼は音楽室へ歩む

灰色の壁に 
暗闇の口を開けたドアを入り 
細い通路を奥へ進む

無人の音楽室は広く 
黒板の前に置かれた 
パイプオルガンと椅子の上で ....
日のひかりをそそがれて 
開いた花を摘み 
掌にのせたら 
私の顔も、咲いてきた。 
遠くに見えるあの富士は 
名所と言われているけれど 

今・この詩を読んでいる 
さりげない姿勢のあなた自身が 
同じ地面につながった 
世界にひとりの、名所です。 

(日ノ本の全て ....
暖かいミルクティーを入れた 
ティーカップは首を捻るように 
皿の上で少し、傾いている   

人生は、少しぐらい 
わからない質問のある方が、面白い。 

(僕等は日々のテストをクリア ....
僕等は一体いつ頃から 
目に映る世界の色を、忘れたのだろう? 

カーテンの木漏れ日へと、はいはいしながら
丸い瞳を見開いた、幼い頃の自分。  

大人になってくたびれたこの胸から 
今 ....
いつものようにキスをして 
電車に乗った君の 
窓越しの笑顔に、手をあげて 

一人になった休日の僕は 
駅ビル内の喫茶店で 
朝食のパンをかじりながら 
ふいに 
自らを漂う雲と思う ....
日々の戦という 
共同の幻想に{ルビ塗=まみ}れ 
周囲の人の口から放つ 
言葉の槍に思わず むっ としてしまう 

そんな意地悪さんや、身勝手さん達さえも 
原子爆弾の投下された、あの  ....
のび太君はいつも 
スネ夫にからかわれては 
頭が煙の昇るエントツになるものの 
テストや体育の時間になると 
何故だか決まって、負けるのです。 

そんなスネ夫にも 
時折気まぐれの風 ....
今夜、Ben'sCafeという詩の家に集う僕等は、 
日常の全ての仮面を脱ぐだろう・・・言ノ葉
を愛する思い一つを胸に認めて、見えない風
に背を押され、見えない糸に引かれ、一つの
夜に ....
草原の何処に埋もれたかもわからない 
{ルビ薄荷草=はっかそう}の薫りを吸い込めば 
いつしか血の気は引いて来て 
遠い過日に、栗毛の少女が立っている 

もし、あなたがたった一人 
追想 ....
(ひとりの人の裏側に 
 かけがえのない死者が  
 音の無い 
 息をしている・・・ ) 

    * 

 浜に満ちては引いてゆく 
 海の呼吸の淵を歩む   
 痩せた青年画 ....
日常の、人間模様の只中で 
自らを ぱっ と灯して 
周囲の素顔を、照らしたい。 
二俣川の運転免許試験場に行ったら、人間達が列になり、渋滞していた。列に割り込む若者に「あなたは何処に並んでいるの!」と青い制服のひとが叱り、視力検査の小部屋では、レンズを覗く初老のおじさんが健気にも「 .... その夜の舞台で歌手が 
「ぞうさん」を唄った時 
観客様は皆、懐かしそうに 
うっとり微笑みを浮かべるのでした 

途中出演のチベット人が 
故郷の山々を唄った時 
タイムスリップした観 ....
昨日散歩した{ルビ草原=くさはら}が 
今日はまっさらに刈られていた 

私はその中心に立ち 
夏の終わりの太陽を仰いで 
両手をあわせる 

人生の筋書きはいつも 
計り知れず 
 ....
僕の黒い目覚まし時計は、いつも一緒。 

実家でベルを鳴らし、寝ぼけ眼の僕を起こす時も 
職場の昼休みの休憩室から、身を起こす時も 
終電に乗れず、ネットカフェの個室で丸まった時も 
一人旅 ....
あわてんぼうの君は 
いつも夜の電灯のつまみを 
捻り過ぎては、外してしまう 

何事も、焦ってやると 
つくはずの明かりも消えてしまうから 
電灯のつまみは、ゆっくり廻そう。 


 ....
哀しい破片がばらばらと、街には落ちて 
いるのです。涙の如くきらきらと、冷た
い路面に光るのです。{ルビ理由=わけ}も無くあの日
地上に産み落とされた、みなし児達の星
屑です。羊飼いの面影で夜 ....
隣の人が茶をこぼし 
{ルビ布巾=ふきん}でさっと机を拭いたら 
皆の顔を ぱっ と照らす 
ひとつの電球になりました 
青空に姿を隠した、謎の舞台監督 
雲から地上に垂らす、見えない糸に結ばれた 
人形達は知らぬ間に、日々の物語に笑って泣いて 
「 自分という花 」を、咲かせている。 
君よ、忘れたもうな 
いかなる時もあかい実を{ルビ包=くる}む 
透きとほった 
ほおづきの殻のあることを 
草原に寝転んで 
胸の自肌に手をあてる 

まっ青な空に燃える 
あの太陽と私 

目に見えぬ糸で、結ばれている 
僕等の語らう間には 
遠い昔から 
暗闇を照らして燃える 
暖炉の炎が、揺らめいている 
服部 剛(2148)
タイトル カテゴリ Point 日付
お茶の効用 自由詩311/1/20 23:53
器 自由詩311/1/6 0:05
夫婦の灯 自由詩111/1/6 0:03
箱根駅伝 自由詩411/1/6 0:00
日溜り 自由詩210/12/29 0:31
朝の合図 自由詩210/12/29 0:21
天の花自由詩110/12/29 0:13
黙想の部屋 自由詩310/12/24 1:07
花の顔自由詩210/12/24 0:25
名所について 自由詩410/12/24 0:18
哲学者の顔 自由詩3+10/12/4 21:57
木漏れ日の窓自由詩110/12/4 21:30
雲の箱舟自由詩410/12/4 21:18
レンブラントの絵 ー両手を開いた父親ー 自由詩010/11/28 19:54
ドラえもんのいない世界で 自由詩310/11/28 19:31
黒い小さな舞台の上で自由詩210/11/25 22:21
草原にて 自由詩110/11/23 22:33
死者の息 自由詩210/11/23 22:27
無題自由詩210/11/23 22:16
免許の更新 自由詩410/11/17 18:56
まどさんの夢 自由詩410/11/17 0:07
林道を往く自由詩010/11/16 23:57
黒い目覚まし時計自由詩010/11/16 0:03
明かりのつけかた 自由詩310/11/15 23:49
星々の唄 自由詩210/11/12 0:02
電球の人 自由詩110/11/10 23:59
あやつり人形 自由詩110/11/1 23:25
殻 自由詩610/11/1 23:19
いのちの糸 自由詩110/11/1 23:16
暖炉の炎 自由詩0+10/10/31 23:16

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