日々の些細な場面の中に
潜んでいる


――花よ、世にたった一人の、花よ

0歳の蕾
40歳の蕾
100歳の蕾

いつかドラマの
年老いた主人公はTV画面の中から
私の目を見 ....
風呂場には蛇口の摘みが、二つある。
「青」と「赤」の{ルビ捻=ひね}りを、調整セヨ。

ある日、老父は云いました。
「クールヘッドとウォームハートが、処世術」

(目に見えぬ人のこころの調 ....
人々の賑わう風呂屋の食堂で
ハイボールのジンジャー割りを
ぐぃと飲み、机上に置く。

ジョッキの内側に広がる
琥珀の海に
細かな気泡が…昇ってる。

この世には重力というものがあり
 ....
夏の夜の旅先にて
ふらり、身を入れた店で
フォアローゼスの水割りを傾けながら
もの想う

もうずっと探してる
あふれる時を

氷がからん、と合図して
ようやく僕は、目を覚ます
瞬き ....
今も昔も旅人は
長い橋を渡るだろう

――{ルビ何処=いずこ}から何処へ?

傘に弾ける豪雨に身を屈める日も
雪の坂をずぼり…ずぼり…上る日も
灼熱の{ルビ陽炎=かげろう}ゆらめく夏の日 ....
はらはらと…桜舞う
花冷えの夕空の下
隅田川に浮かぶ、屋形船。
賑わう船内に
{ルビ三味=しゃみ}の音は鳴り

柱の影で
芸者は男に、酒を注ぐ。

少し離れた柱に凭れ
旅人は独り
 ....
林の中を歩いていたら
3ヶ所を蚊に、刺され
むず痒さを耐えながら
ぎこちなくも、歩いた。

(もう会うこともなかろう、蚊の腹は
 僕が痒い分、充たされたのか?)

思い巡らせ歩いていた ....
或る授賞式のホールにて
首を回して
天井の鏡を仰いだ、遠くに
(もう一人の僕)と目があった。


おーい  
林の中に、ふりつもる
無数のつややかな枯葉を
踏み拉き…
幾世代もの祖先を想い
自らの重みを、歩いていた。

――遠い空では、飛行機の音が
  長い長い尾を引いていた…
  
  何 ....
フォーク歌手があこーすてぃっくぎたあを
掻き鳴らす、ある夜のライブハウスで偶然
隣り合わせたお洒落な婆ちゃんが「じゃあ」
って店内から出てゆく、繁華街のネオンの
合間をゆっくり抜けて小さくなっ ....
「中野ぉ~中野ぉ~でございます」 
ぷしゅー…っ ドアが開いたホームには
なぜかお巡りさんが、目を配らせている。
今日は伊勢のサミット最終日 オバマさ
んは広島原爆ドームにて黙祷する――。
 ....
路面に、跳ねた
鳥の糞すら
書家の一筆の如き、あーとだ

――この世界は
  詩に充ちている
枝に留まった、夜の{ルビ梟=ふくろう}
少々首を傾げ
まっ黒いビー玉の瞳で
あなたをじぃ…と、射る

――梟は、仮の姿で
  ふっくりとした着ぐるみの中に
  小さな哲学者がいるらしい
 ....
あなたは、咲こうとしている

――長い間
時に風雨に、身を{ルビ晒=さら}し
時に日向に、身を開き
地中へ…根を張り巡らせて
世界にたった一人の、あなた
という花を咲かせる為に

蕾 ....
(自明)とは
自ら明るい、と書く。
わたしの命の照明灯は
元来――明るいもの  




  
コップに入った残りの水を
もうこれしかない…と、思うのか?
まだこんなにある…と、思うのか?
私の受け取りようである。

底深い・・・・・井戸にも似て
汲み尽くせぬ

あたりまえの日々 ....
知っていた?
君が一冊の本の
密かな主人公であることを。

――ほら、百年後の美術館に
  飾られた、額縁の中から
  赤いシャツを着た女の人は
  椅子に腰かけ
  頁を捲る、音が聴 ....
さぁ、足許の川面に揺れる
一艘の舟に乗ろう。
(自らの重みをぐぃ…と下ろして)

誰かが置いていったまま
傾いた左右の艪を、握り
今、漕ぎ出そう。

――旅の始めは、後回しにならぬよう ....
あの日、僕は立ち尽くしていた。
天使について綴った原稿を
夢の鞄に入れたまま
古びた出版社の、門前で。

地下鉄の切符売り場で
曇り空の東京の地面の下
蜘蛛の巣状に張り巡らされた、路線図 ....
夕暮れの帰り道で
ジャージ姿の青年達が
手にしたスマートフォンと
睨めっこしながら下校している。

少々早足で追い越す、僕は
声無き声で呟いた。
――染色体の一本多い、周は
  彼等と ....
聖者などに、なれない僕は
凸凹だらけの人間です。

凸凹だらけの僕が、あの日
凸凹だらけの君と、出逢い
凸凹だらけの息子がおぎゃあっと生まれ
歩み始めた、日々の凸凹道。

青春の日、僕 ....
――あなたは、聴くだろう。
日々の深層の穴へ
ひとすじの{ルビ釣瓶=つるべ}が…下降する、あの音を。

――漆黒の闇にて
遥かな昔に創造された、あなたという人。
遺伝子に刻まれた、ひとつの ....
天にはひとつの
(視えない手)があり
私は、全ての恐れ・震え・野心を
不思議な手の上に、置く。

この胸に乱れた炎は
いつしか――闇に溶け去り
静かな青い火となる。

そうして私は、 ....
私ハ、亜十夢。

アノ日カラ、人間ノフリヲシテ
娑婆ニ混ジッテイルノデス。

胸ノ蓋ヲ開イタ燃料ハ
何時モ ばうわう 燃エ盛リ
気ヅイタラ…今日モ日ガナ
鼻息荒ゲテ! 働キマシタ。
 ....
門の前はひっそりとして
呆けた顔で、立ち尽くす
{ルビ襤褸着=ぼろぎ}の男

雨の滴は、腕を濡らし
門柱に ぺちゃり と
白い糞はこびり、落ち

(この世を覆う、雨空に
 数羽の烏は ....
旅先のホテルの部屋にて
机の上に置かれた一枚の紙

「この部屋は私が清掃しました  
 ゆっくりお過ごし下さい
            〇〇」

名前のみが直筆の
見知らぬひとの心遣い ....
一日の仕事を終えて
帰った家のソファに、坐る。
ママは台所に立っている。

人より染色体の一本多い、周は
パパが足を広げた間に
ちっちゃい{ルビ胡坐=あぐら}をかいて
「おかあさんといっ ....
桜吹雪の舞うのは
春のみか――?
否、人々は気づかぬだけ。

目を凝らせば
宇宙永劫二度と無い
今日という日の花びらが
ほら、目の前に透けて

ひらひらと  
能面被って
声を、殺して
あえて明るい色彩の着物を身に纏い

たとえそれが千年昔の恋物語であり
源氏に捕らわれた{ルビ重衡=しげひら}が、死刑へ歩む
前夜の密やかな宴だとしても

透け ....
死者はいつでも待っている
あなたの過ぎゆく並木道で
枯葉舞う、からっ風と共に

思いの外
素敵ないたずらを、起こそうと  
服部 剛(2148)
タイトル カテゴリ Point 日付
ひとの蕾自由詩016/7/15 23:34
湯けむりの夜自由詩116/7/15 21:01
琥珀の水自由詩216/7/15 20:18
夢ノ声自由詩316/7/14 0:05
旅人の橋自由詩416/6/23 19:30
春の屋形船自由詩016/6/23 18:58
ある日の献血自由詩416/6/17 18:33
呼び声自由詩216/6/13 0:33
緑の懐より自由詩516/6/13 0:28
頬の赤らむ夜の恋唄自由詩116/6/13 0:19
中野~高円寺探訪記自由詩216/5/28 23:59
路面の文字自由詩216/5/28 23:10
梟の目自由詩316/5/19 23:06
もう一度、蕾から自由詩516/5/19 22:51
自明のひと自由詩316/5/19 22:39
コップの水自由詩316/5/9 22:08
本の世界自由詩016/5/9 21:59
旅人の舟自由詩416/5/9 21:52
路線図自由詩316/4/23 18:07
たまねぎ   自由詩516/4/23 17:25
妻への詫状自由詩316/4/20 23:29
零の世界自由詩516/4/18 23:35
青い火自由詩216/4/11 20:23
亜十夢の丘自由詩016/4/9 20:43
自由詩216/4/9 20:08
名も無き人へ自由詩616/3/28 21:22
キャッチボール自由詩616/3/23 18:30
日々の風景自由詩616/3/17 23:48
能面の女自由詩416/3/17 23:29
風のいたずら自由詩216/3/11 20:29

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