トイレットペ-パーの残りを
使いきり、ちんと鼻をかむ 

残った芯に
印刷された ありがとうございます
の文字に
僕も呟く ありがとう

最近は鼻づまりがひどくて
なかなか寝つけずし ....
わなわなふるえる
ひびの、よろこびかなしみよ
それがこの世のさだめなら
汝のコインに息を吹きかけ 

明日の行方へ、投げてやれ!

くるくると…裏表見せる
放物線のその先は
道 ....
晩酌は水割りのグラスを手に
ピスタチオを口に含み
わった殻を小皿へ落とせば 
ちりん、と鳴る  

世界のあちらこちらに
美しい雑音たちは
今も
音を鳴らしている

さあ明日も ....
シーンを変えろ

問題の周囲は幻で
{ルビ那由多=なゆた}の日々の中心点は
いつも自分自身 

いたずらにふり回される前に
指よ、鍵盤の上を踊れ 

瞬時を歩む、ジャズマンの手のよう ....
あなたの形見のランプは、魂の姿に似て
夜になると書斎の椅子に腰かける
僕の仕事を照らし出す

* * *

あの日
この世の時間と空間を離れ
自らのからだを脱いだあなた ....
川の向こう側にある
瓦屋根の
民家の壁に、ひとつ
白いマークがありました

それは鈴の姿をしており
風が吹くと
小さな余白の中から
音のない音が聴こえます

 ちりりん ちりりん  ....
仕事を終えた電車の中で
ついポケットから取り出すスマホの画面に
誰かからメッセージはないかと、探す

家に着いて
ポストの蓋を開けては
誰かから便りはないかと、探す

忘れた頃に届く
 ....
机の上に延びる
湯呑みの影が
お地蔵さんの姿に視える、夜

――もしや

目に映る風景の
あちらこちらに宿る
心というものか
今日もふらふら
音のない家へ帰る男の背中は
言葉にならない寂しさを{ルビ醸=かも}し出す  

〈人生はひまつぶし〉と嘆く男の一日は
二十四時間ではなく 
長さの計れぬ夜なのだ 

こ ....
令和三年・一月三日 
三が日の間に息子孝行しようと思い 
{ルビ周=しゅう}の小さな手を引いて
川沿いの道をずんずん、歩く

野球場の芝生を
解放していたので
そのまま手を引いて
ずん ....
この街には
音のない叫びが無数に隠れ
僕の頼りない手に、負えない 

渋谷・道玄坂の夜
場末の路地に
家のない男がふらり…ふらり
独りの娼婦の足音が、通り過ぎ 
酔いどれた僕の足音が、 ....
岩には、顔が隠れている
口を開け、叫ぶ顔は恐そうだが
岩の本人は、そうでもなく
案外あかるい、無音の呼び声なのだ

岩と岩のつらなる下に
崩れた岩の口元から、源泉の湯は流れ
心身を温める ....
線路は明日へ、延びてゆく
明日の線路は、過去へ至り
過去はまた道の続きへ

二度とない今日の日を経て
旅の列車は走り始める

恋に傷んだ、町を過ぎ
日々の重さに憂う、町を過ぎ
 ....
僕の存在理由は nothing
君の存在理由も nothing

そう思っていた
僕の頭の空洞に 風は吹き 
風は滝のように体内の通路を下り
魂の器の底に渦巻けば
遠い記憶は……甦る 
 ....
久々に浅草の
{ルビ老舗=しにせ}の喫茶店「アンジェラス」に行ったら
すでに閉店していた 

「アンジェラスの鐘」は「お告げの鐘」

もう鳴らない、その鐘は
やがて記憶の風景に響くでしょ ....
あの日、若くして病に倒れ
この世を去っていった歌姫よ

あなたは姿のない絶望の闇と向き合い 
動悸の乱れる日も
副作用で口の中が傷だらけの日も
死の不安に独り…震える深夜も
最後まで、生 ....
テレビを点けたら
そこはアメリカ合衆国
ホワイトハウス前 

バイデン推しの国民と
トランプ推しの国民が
まっ二つに入り乱れ 
ポリスマン達は{ルビ眉間=みけん}に皺を寄せて
にらみを ....
詩人の友の「活動二十周年」を祝う
朗読会に出演した  

それぞれの闇を越えて、再会を祝う
ステキな言葉の夜だった 

トリの朗読をした彼が
最後の詩を読んだ後
客席の後ろにいたほろ酔 ....
私がその男を目撃したのは、19年前の夏。
井の頭公園野外ステージのオープンマイク。
オレンジ色のTシャツに、黒縁眼鏡、銀ぎら
ぎんのプラスチックのマイクを握りステージ
に立った男は「OK~~~ ....
病と闘うあなたが 
病院の廊下を歩き
自らの動悸が乱れた時
どんな思いが過ぎったろう?

お母さんが見舞いに訪れ
病室を去った後
頬に涙の伝うあなたは
窓外の青い空をみつめ、呟いた
 ....
テレビの中の壇蜜さんが言った
「コロナウイルスの影響で
 私たちは人生ゲームの{ルビ双六=すごろく}の
プラスチックの車に乗せられた
エノキみたいに顔の無い人形になった」

元来、僕等はエ ....
鎌倉の甘味処・無心庵の窓辺で
手の届きそうな垣根の外に
緑の江ノ電は がたっごとっ と通り過ぎ 

殻を割ったピスタチオの豆を
口にほおばり、かみしめ 
麦酒を一口

また窓外に
江 ....
書かれたチョークの白い文字
「 孫が悟った、空の色 」
ずっこけて、転がって、這いつくばっては
立ち上がり(瞳はぎらりと、ぎらつかせ)
またずっこけて、膝擦りむいて、血糊を
なめ、それでもまだ夢を見て、今宵の夢
を見たくて ―この世界に恋がしたくて ....
日頃ぐうたらな僕が 
一念発起して 
庭の草をむしり始めた

夏の太陽はぎらぎら笑い
ぽたり、ぽたり
{ルビ滴=したた}る汗は目に沁みる

草のむしれる感触に
無心で熱中しながら、熱 ....
夏風にそよぐ
無数の葉のなかで
蝉時雨を浴びながら
自らに問う

――今日
  ひと時の
  今を
  生きたか 
僕は今日 
仰向けに横たわる 
蝉のうつくしさを、知った
電灯の力をかりて
風にゆられる
{ルビ向日葵=ひまわり}たちの笑い声
さやかに響く 夏の夕暮れ 
机に置かれた一杯の水に
天井のランプは、反射して
小さな虹が架かる

今日も何処かで
人の間に
虹の橋はあらわれる
私はお茶をよく{ルビ咽=むせ}る 
体質だからと、言い訳しても
どうやら違うということに
最近気付いた 

お茶を一口啜ったら 
まずは静かに味わうものを
流しこんでは、咽ていた 

 ....
服部 剛(2142)
タイトル カテゴリ Point 日付
ありがたや自由詩521/6/7 20:39
道しるべ自由詩421/5/28 0:10
日々の音楽自由詩221/3/31 18:44
ジャズマンの指自由詩321/3/11 20:39
風の吹く午後自由詩421/3/6 22:47
鈴の音自由詩121/3/2 19:22
風を待つ自由詩221/2/2 18:32
ひと影自由詩821/1/24 23:53
夜の信号自由詩321/1/20 18:49
野球場の夢自由詩421/1/7 20:19
Slow Boat自由詩220/12/30 23:19
岩の顔自由詩120/12/10 20:36
「車窓」自由詩220/12/5 21:34
life for a reason自由詩420/11/19 19:21
お告げの鐘自由詩420/11/18 23:59
三色の流星自由詩320/11/14 23:25
コトバの剣自由詩120/11/12 0:01
Avanti自由詩4*20/11/7 23:59
死紺亭兄さんへの手紙 自由詩120/10/14 23:59
歌姫の墓前にて自由詩320/10/9 18:46
Poetry Road ――ある朗読会の夜に――自由詩320/10/7 19:01
黄色い蝶 自由詩220/10/5 18:01
某駅の伝言板に自由詩220/9/28 23:38
詩人達の夜自由詩720/9/20 22:36
麦茶の味 自由詩620/8/31 17:12
夏の歌自由詩120/8/27 0:07
晩夏の空自由詩120/8/27 0:05
夕景自由詩120/7/30 18:32
自由詩320/7/22 23:58
茶の心自由詩320/6/8 19:58

Home 戻る 最新へ 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 
0.11sec.