日々の舞台で、僕は自らを奏でよう。
わたしは回る器
道を歩くとき
佇むとき
疲れた夜、布団を被り目を瞑るとき
いつも
わたしの存在の中に立つ芯は、回転している
目には見えない陶芸家の
血液が流れる透明の手に
ふれ ....
突然の突風!
で、かつらの飛んだおじさんが
とってもイケてる男である
可能性について
ある夜、僕は考えていた
クリスマス前の何故か切ない
歌舞伎町を{ルビ漫=そぞ}ろ歩きながら
....
やがて夜は更けゆき
恐れと不整脈は
徐々に…消去するだろう
私はゆっくり「扉」を、開く
(微かな光は隙間から洩れ)
まぶしい彼方から
誰かの影が
一通の手紙を携え
こちらへ歩い ....
あの頃
布団に包まりながら
小さな糸口を探していた
抱えた頭の中で
絡まる悩みを
こねくりまわしては
豆電球のぽつり、灯る
薄暗がりの部屋で
見上げた
時計の針はすでに 午前一時 ....
ノミは無限へじゃんぷするが
コップに入れて、蓋をすると
そこまでしかとばない
人よ、自らの頭上の空の
ひろがりに
蓋をする{ルビ勿=なか}れ
ジョン・レノンのいない世界で
僕等は何を歌おう
時代の不安にも
群衆の病理にも、薬は無い
夜の部屋で
壁に掛けられた絵画の風景
二十一世紀の廃墟を見渡して
塔の高さで立つ巨人 ....
生きるとは、自らを{ルビ繙=ひもと}いてゆくこと。
わたしの骨がぎくしゃくと、鳴る
肯定的な歌
1+1=人間じゃない
不恰好な日々のつまずき、こそ
しんしんと軋み泣く骨の{ルビ声音=こわね}、こそ
人間の調べ
すけるとんよ
ぎくし ....
誰も自分の正体を知らない
一生、気づかぬ人もいる
思春期に一度気づけど、
結局まぼろしの人も
ひとりの部屋で
鏡に映る自画像は
右と左が逆だし
ああ俺は!
一生涯、己の姿を視れ ....
あなたに貼られた
〇×□ etc.
無数のラベルを
べりべり…剥がす
天然のいのちの顔が
出てきたよ
曇った周囲を
仄かに照らし出す
世界にたった一人の
電球の顔
....
亀有に住む妻の友から
宅急便が届き
段ボールを開ける
ぎっしり入った愛媛蜜柑の
一人ひとりが太陽の顔を浮かべ
手を突っこみ、皮を剥き
(つややかな汁は弾け)
うまい――思わず目を瞑る ....
日々の「詩の扉」をくぐり抜けてゆく。
逆境をおもろいわと、言ってみる。
あなたが歌を歌う時
あなたは歌そのもの
僕が言葉を語る時
僕は言葉そのもの
僕等が一人ひとりの日々の旅路を
ゆったりと加速して…歩めば歩むほど
人間は歩行になる
――あっ 真 ....
「友への手紙」
君は桜吹雪の彼方へゆく
僕は{ルビ永遠=とわ}へ詩う
友よ、ありがとう
今宵は何故か・・・涙の美酒だ
* ....
自らを、時の流れに譲渡せよ。
はじめて新橋の飲み屋で、あなたと
互いの盃を交わした夜の語らいに
いくつもの言葉の夢がありました
あなたと出逢ってからの
日々の流れのなか
小さな、言葉の芽がようやく
土から顔を出した ....
今宵、酔いどれの
耳には
便所を出た
白い洗面台の横に置かれた
金のニワトリの
悲痛に明るいお叫びが
脳裏の遥か彼方から
ひびいてくる
白い線につながれた
黒いスマートフォンは
小さな画面を閉じた暗闇に
遠く ぽつねん と浮く
青い惑星の夢をみる
来春、息子が通うであろう
養護学校を見学する
教室の窓外から
先生に笑顔があるか、見る
こども達に笑顔があるか、見る
言葉を話さず無垢にも笑う
息子をあずける豊かな場かを
廊下の ....
あなたは知っているだろうか?
秘密のさぷりのあることを
目には見えない
あの透きとおる粒のさぷりを
うつむく夜に
ーーごくり
ひと飲み
で
あなたの体内に具わる
エンジン ....
朝の古びた駅舎で
ペンキのはげた屋根上から
剥き出しの大きな電球が
辺りをそっと照らしている
ひとり、ふたり
音も無く通り過ぎ
これから街へ出てゆく、私も
何者かに淡く照らされて ....
人と人の間は
ひとつの場であり
ふいに風の息吹はふくだろう
互いの瞳の間に
密かな電流の通う
場面を探しに
今日も、私はドアを開け
あなたに
会いにゆく
今宵、我は旅が一体何であるかを確認した
*
酔い醒めの露天風呂にて
ざぶんと裸はたちあがり
キンシクイキノ外へ、出タ
(竹垣に映る人影は、赤いはらを掻いていた) ....
朔太郎住居跡へゆく、途中
路面にくしゃり潰れた柿はあり
(種は、離れて落ちており)
あわれな柿の橙色の只中に
くっきりとした{ルビ蔕=へた}の渦巻く瞳が
遠い過去から
しゃ ....
「別れのブルース」で有名な
詩人・藤浦洸の住居跡を訪れると
碑の傍らの{ルビ叢=くさむら}に棄てられた
ビニール傘が{ルビ埋=うず}もれ
秋の中天にてらてら耀いていた
今日も太陽は ....
悔しいことがあったなら
ぺしゃんこの空き缶に
自分の姿を重ね
思いきり、蹴っ飛ばせ
(人に当てちゃだめヨ)
空き缶は
すーっと空へ吸いこまれてゆく
私は手紙を綴っている
今日の日が
二度と無いことを知らずに
あなたの顔の面影を浮かべ
手にしたペンを、余白に落とす
おもいの…高ぶりに
自ずとペンは動き出し
無我の歩調は便箋を往 ....
突風に路上の白いビニール袋が
ふくらみ舞い上がる、朝
早い流れの川の水面を
つーーー
と、流れに身をまかせ
ひとり目の鴨はゆく
三メートル後ろでは
細い足をじたばたさせて
安住 ....
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