彼は探していた
花束を手渡す
たった一人の{ルビ女=ひと}を

高い壁に挟まれた路地
いくつもの窓の隙間から 
漏れる{ルビ喘=あえ}ぎ声を耳に
彼は通り過ぎた  

( 一面の曇り ....
その人の瞳の内に 
永久の春が在り
遥かな昔から
桜の木が立っている 

冬の冷気を越え 
降りそそぐ春の日射し 
今にも開こうとする無数の蕾に 
こころは{ルビ軋=きし}む 

 ....
フェンスの下に 
種は{ルビ蒔=ま}かれ 
土から小さい顔を出した 
緑の芽 

いつしか 
空へと背丈を伸ばす 
一本の木 

錆びた金網は樹皮に喰い込み 
幹はフェンスの{ルビ ....
コーヒーショップのテーブルに 
プラスティックのコップがふたつ 
うずまいたくりーむふくらむ 
アイスカフェ・ラテSとM 
仲良さそうに並んでる 

テーブルに向き合う 
ふたつの{ルビ ....
朝起きたら 
いつも台所に立つ母が 
地を這う赤ちゃんになっていた 

家を出て 
電車を待つ駅のホームには 
はいはいのまま赤ちゃん達が並び 
全ての席は座る赤ちゃんに埋め尽くされ 
 ....
小学生の 
ガキ大将が子分に肩を組み 
「 お前はまだ{ルビ0=ゼロ}人前だ 」 
と言いながら 
目の前を通り過ぎていった 

大人になっても0人前のわたしは 
誰に肩を組まれるでもな ....
 僕は 詩 というものの縁で、幾人もの友と出逢ってきた。もう会
わない友もいれば、長い付き合いになるであろう友もいる。かけが
えのない友がいながらも、僕等は時に「ひとり」を感じてしまう。 
そ ....
昨日はきみを傷つけたので 
布団にしがみついて
うつ伏せたまま 
闇のなかに沈み 
眠った 


夜が明けて 
目覚めると 
窓枠の外に広がる 
朝焼けの空 
ふわりと浮かぶ 
 ....
コンビニのレジの後ろに 
「 迷子です 」 
と貼り紙のついた 
こどもの靴が置かれてた 

つまさきをそろえた 
寂しげな迷子の靴 
なぜかぼくの足にぴったりに思え 
後ろ髪を引かれ ....
ひとりの部屋で 
哀しい唄を聞きながら 
歌詞を机にひろげて読んでいると 
窓からゆっくり日は射して 
机を覆う影は 
波のようにひいてゆく 


  * 


窓の外を見ると  ....
灰色の壁に囲まれた
音の無い部屋

黒い衣を身に{ルビ纏=まと}い
「死」を決意した病の老女 
一点をみつめ 
椅子に腰かけている 

( 左手の薬指に今も{ルビ鈍=にぶ}く光る 
 ....
緑の葉を一枚 
唇に{ルビ銜=くわ}え 
言葉の無い唄を奏でる 

黒い影の姿で空を仰ぐ 
わたしのまわりが 
ひだまりとなるように 





  * この詩は「詩遊人たち」 ....
子供の頃  
両親のあたたかなまなざしに 
まもられて 
幸せはいつも 
「 そこにあるもの 」 
だった 

やがて大人になり 
自らの手を伸ばし 
{ルビ掴=つか}もうとした 
 ....
ひとりの少年が 
壁をつたうパイプの上を 
猿の手つきでのぼってる 

壁の頂で少年は 
( 見ざる・言わざる・聞かざる ) 
のおどけたそぶり 

次の瞬間 
頂から 
両腕ひろ ....
昨日は職場のおばさんの 
くどい{ルビ小言=こごと}に嫌気がさして 
かけがえのない他の人さえ 
土俵の外へうっちゃり 
しかめっ面でひとり相撲をしていた 

昨晩見た夢のなかで 
旧友 ....
だうな〜で 
仕事さぼった翌日に 
こころの{ルビ垢=あか}・{ルビ錆=さび}ふりはらい 
いつものバス停に向かう 

歩道の 
前を歩く女子高生 
突然ふりむき 
( すかーと ふわ ....
昨日 美術館で買った 
イタリア製のボールペン 

褐色の木に刻まれた 
( The Paper Pen ) 
なめらかな筆記体の文字 
金色に光る ペン先 と 頭 

「 さぁ、これ ....
 今日は休みだったので、十日位前から駅のポスターで見て行きた
いと思っていた「オルセー美術館」が催されている上野の東京都美
術館に行った。展示されていた詩情ある名画の数々は、やはり味わ
い深いも ....
夕暮れ 
いつもの通学路で少年は 
独り咲いている 
紅い花をみつけた 

家に帰り 
父と別れた母に話すと 
「 毎日水をおやりなさい 」 
と言うので、次の日から 
少年はいつも ....
日中の忙しさからすっかり静まり返った 
午後九時過ぎの特養老人ホーム

入院先で亡くなった 
Y爺さんの{ルビ亡骸=なきがら}が入った棺桶は 
施設内の小聖堂に運ばれた 

いつもはほと ....
「Le Poete」(詩人) 
という名の店が姿を消した後 
新装開店して「Dio」(神) 
という名のピザ屋になった。 

消えた、前の店と同じく 
ピザ屋は毎日空席だらけ 

カウ ....
昨夜の大雨で 
水{ルビ溜=たま}りに{ルビ浸=つ}かった靴に 
古新聞を丸めて入れる 

翌朝 
すべての水をすいこんだ 
古新聞を取り出し 

しめった重みを 
ごみ箱に捨てる  ....
嵐のあと 
歩道に{ルビ棄=す}てられた 
ぼろぼろなビニール傘 

雲間から射す日射しに 
一本だけ折れなかった 
細い背骨が光る 

あのような 
ひとすじの {ルビ芯=しん}  ....
夕陽をあびる 
丹沢の山々に囲まれた 
静かな街の坂道を 
バスは上る 

時々友の家で 
深夜まで語らう
( 詩ノ心 ) 

午前三時 
友の部屋を出て
秒針の音が聞こえる部屋 ....
丘の上の{ルビ叢=くさむら}に身を{ルビ埋=うず}め 
仰向けに寝そべると 
空は、一面の海 

宙を舞う 風 に波立つ 
幾重もの{ルビ小波=さざなみ}を西へ辿れば 
今日も変わらぬ陽は ....
昨日の仕事帰り、バスに乗る時に慌ててポケ
ットから財布を出した僕は、片方の手袋を落
としてしまったらしい。僕を乗せて発車した
バスを、冷えた歩道に取り残された片方の手
袋は、寂しいこころを声に ....
迷える羊の私を 
いつもの空から見守る羊飼いよ 

誰かに愛を求めては
粉々に壊してしまう私を 

自らを嘲笑うかのように 
紅く波打つ海に溺れる私を 

憐れんでください 

 ....
父と母と少年と 
3人家族に囲まれた 
座席の隅の窓際で 
車窓に流れる景色を見ていた 

( あいするひとにさられたばかりのわたしは
( すっかりかたもそげおちて 
( めのまえにみを ....
「 生れ落ちた その日から 
  へんちくりんなこのかおで 
  わたしはわたしを{ルビ演=や}ってきた 」 

という詩を老人ホームで朗読したら 
輪になった、お年寄りの顔がほころんだ。  ....
残業の仕事につかれて夜道を歩いていると、
遠い空の下にいる君の声が聞きたくなり、
携帯電話を持たない僕を、
闇に光る電話ボックスが声も無く呼んでいるようで、
僕は今夜もガラスのドアの中 ....
服部 剛(2142)
タイトル カテゴリ Point 日付
砂の街 自由詩11*07/3/25 1:24
「 桜 」 自由詩16*07/3/23 12:00
蕾 自由詩6*07/3/23 11:04
くりーむ 自由詩4*07/3/23 10:42
夢 〜赤ちゃんの国〜 自由詩8*07/3/21 20:59
雲の輪 自由詩6*07/3/21 20:37
詩友への手紙 〜新宿にて〜 散文(批評 ...10*07/3/19 18:35
「 夜明け 」 自由詩11*07/3/19 17:32
「 迷子の靴 」 自由詩13*07/3/18 17:11
「 窓辺の日射し 」 自由詩7*07/3/18 16:59
「 椅子に座る老女 」 自由詩7*07/3/16 1:32
口笛 自由詩13*07/3/15 21:31
「 月夜の照明 」 自由詩4*07/3/15 20:41
「 頂の猿 」 自由詩907/3/13 20:16
弱者の拳 自由詩15*07/3/13 19:58
まい・れぼりゅ〜しょん ー僕の太陽ー  自由詩12*07/3/10 21:28
「 お洒落なペン 」 自由詩3*07/3/10 2:30
ゴッホとの対話〜オルセー美術館にて〜 散文(批評 ...407/3/9 9:14
「 青い如雨露 」 〜薔薇と少年〜 自由詩14*07/3/8 20:47
「 遺体の顔 」 自由詩10*07/3/8 20:17
( ピザ屋 Dio にて ) 自由詩11*07/3/6 23:37
「 寺の仏像 」 自由詩7*07/3/6 20:38
「 壊れた傘 」 自由詩13*07/3/6 20:21
「 遺影の顔 」 自由詩10*07/3/4 22:41
願いごと 自由詩15*07/2/28 22:28
路上の手袋 未詩・独白12*07/2/25 15:28
羊飼いへの祈り 未詩・独白507/2/25 14:26
「 写真の女 」 自由詩707/2/25 14:00
「 透明人間 」 自由詩16*07/2/23 21:45
また一つ、愛が終わった。 未詩・独白7*07/2/22 0:17

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