分かれた空がさらに分かれ
水のなかの葉をすぎてゆく
音は動き 季節は動く
ほどけては鳴る遠い金
映るすべてに傾く空を
青はころがり
かがやいてゆく
陽は落ち ....
白 灰 午後 虹
放られたままに響く冬
窓に映る野を馳せる
手のなかの声 粒の声
まわる色 重なる色
水に濡れた小さな神話の
終わりとはじまり
陽から降りつづ ....
川の水と
海の水が
からだのなかで
縞模様に重なり
相容れるようでいて
相容れることのない
ふたつの双葉になってゆく
ゆらめく二枚の絵の前に立ち
ゆらめく水から来 ....
ふたつの瞳
ひとつの鍵盤
さざ波のように混じる音
静かに言葉を連れてゆく音
通り過ぎる会話と
通り過ぎる雨に冷やされ
白くつづく午後の道
人の声は昇り 人の声は去る
....
たくさんの雀が
それぞれの空を持ち
わたしの内をはばたいている
淡い羽が 喉を昇り
外に出て 腕に乗り
別の色の 空へ帰る
繰り返す
今ま ....
雑音の雲の子守歌
雪を蹴り 光る
雪を蹴り 光る
凍ることのない遠い音
夜には優しい二本の手首
朝には見えない起伏を照らす
起伏のひとつであるわたし
片方の目 ....
街に新しい色が来て
赤はみんないなくなる
空の鳥は銀になり
小さな家を埋めたので
原の鳥はただ一度だけ
冬へ昇る階段になり
原を行き来する足跡に
雲と羽を散らしながら
空の鳥 ....
そんなひまがあったら
窓を開けて月に吠えます
そんなひまがあったら
空をつかみ鳥になります
そんなひまがあったら
雲をちぎり雨を描きます
そ ....
水に浮かんだ子のまわりに
鳥のように大きな若葉が
一枚 一枚と落ちてくる
子は枝を噛む風を見つめる
見ぬふりをする空を見つめる
黒い衣 黒い犬
黒い土の上に ....
たくさんの旗
白黒の街
ベランダの雨
白黒の街
空を撲つ音
白黒の街
窓に映る陽
白黒の街
通りは祭
白黒の街
みんなを連れて
白黒の街
消えてなくなる
白黒の街
....
ひとりひとりの背に棲むものが
夜更けに互いを呼びあっている
見えないものの通り道に立ち
腕をひろげ 聴いている
夜の光の下 揺るぎないもの
幾つもの影のなか
ひとりきりのもの
....
軋みを撒いては走り去る鉄
遠い悲鳴のように過ぎてゆく
またひとつ助けられない小さなものが
手の甲に重なり 増えてゆく
開こうともせずに開く瞳が
そばにたたずむふた ....
白の白からはじまる声
ゆるくほどける水の鳥
ひろくとどまる陽の光
町に渦まく影を着せる
散る鳥 生まれる鳥の中心
人と機械の目のなかでさえ
生きた絵のように咲きひらき
....
ほたるになりませんか
と 呟いたひとの目
雪を見つめていた目
私のいない目を
空と空の隔たりを
思い出す
森のすきまを覆う街
道をゆく赤い衣たち
誰かがまいた白い紙
銀の飾り
頬かむり
目にいっぱいの赤
目にいっぱいの赤
階段は鳥
そっと踏みしく
脱ぎかけ ....
右耳に車は聞こえない
左耳に降る金属音
追い抜くたびに空は笑う
切れぎれに拍手は過ぎてゆく
飛び去れ
飛び去れ
ひとりと
ひとりの道
ひとりの自転車の他はみん ....
青になってはじめての青
目のなかに鳴る金の糸
歌をつなぎ 手をつなぎ
熱い国の衣のように
風を立てる輪の踊り
雲を混ぜる手の踊り
遠い水に火を散らし
遠いふるえのした ....
ひとつの落雷のはじまりと終わりに
すべての線路がはばたいては消える
火のような虹が
幾つも幾つも噴き上がる
ふところの鍵が重い夜
出会いがしらの火花の ....
空を破る鳥があり
空を貫く鳥がある
裂けめと裂けめの間から
別の空はすぐ消える
見る鳥だけがそれを見る
去る鳥だけがそこへ去る
雨と緑に
鴉ばかりが実っては鳴 ....
冷たさだけの空を流れる星に
母親は
わけのわからない詩を書く子より
ボーナスの出る職に就く子がほしい
と願った
堕ちる天使と微笑む地使に
自分は
わけのわからない言葉以外
....
がちゃがちゃと
サンタの袋はかさばっていた
人殺しのおもちゃをほしがる子供で
世界はあふれていた
誰にでも 好きです
好きです と言って
みなを集めてまわる詩人を見て
自分は死ぬまでひとりでいいや
と思った
誰からも 好きです
好きです と言われ
みなに囲まれている詩人を見て ....
花に触れた虫たちが
ひらきふるえる花になり
花のまわりを
まわりつづける
暗闇のなか
さまざまな数字たちが立ち上がり
わずかに差し込む光の下で
花粉のように踊り ....
夜明けと午後と夜中の夢に
同じ女の子が現れて
わたすものがあるけど
まだなんなのか
よくわからなくて
と言った
気が付いたら
受け取っていた ....
踏切の陽
濡れた傘ごし
枕木を追う
複眼の火
草の管
草の筒
草の洞
あふれでる
穂の明るさ
光の背の道
はじまりの
花の
はじまりに
よみ ....
夜の砂の上の家
花のように動いては止まる
朝になると人は戻り
少しだけ掃除をして
着替えをしては出かけてゆく
昼と午後は暑い
風と風のすきま
....
訪れるものに告げられる
訪れてなお訪れるのだと
川の水は増し 鳥たちは
乾く間も無く飛び立ってゆく
まじわり はなれる
指の内 指の外
同じかたちの ....
やわらかな文字が降りてくる
葉の裏側の粗い緑に
次々と染まり 降りてくる
朝の方位へはばたく鳥の
青い青い羽の炉心へ
影はたなびくように落ちてゆく
午後の淵 ....
そのままの静かな脚の間から
見える色は枯葉だった
風と風ではないものの境に
あなたは立っていた
空き地に囲まれた家が
はじめて舞うもののようにふるえてい ....
流れはじめる雲はみな
夜の灯りに焼けたように
薄暗く赤く降りてくる
あの雲のほうに行くのだ
町をがさがさと覆い隠す
あの雲の視線を向くのだ
曲がり角を ....
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