今宵もまた
お父さん
あなたは咳をしていますね

青い毛布をかけましょう
それはあなたの首元で
小さな海となるでしょう


お父さん
わたしは
あなた ....

しゅんじゃく神社
と云う神社をみかけた
春寂神社と云う字である
煮過ぎた菜っ葉を
噛んだときの音みたいだ
と思った

神様も春は寂しいんだろうか


教習所の帰りに
落ち ....
毎年この時期になると
瞼が退化するので
夜は
眼をあいたままねむる
口をあいていると
小さい生物の死骸が入るから
歯はくいしばるようにしている

深更
瞳孔がうっとりとひらき
 ....
受験を控えた少女が
堪えきれずに道端で
脱皮を始めた

その横をダックス・フントが通る
かれは短足を気にして
朝夕ぶら下がり健康器を
使っているのだけど
伸びてゆくのはもちろん
足じ ....
かわつらさんの奥さんは
精神を病んでいるそうだ
深夜
誰も居ないキチンで
皿を一枚ずつ割るそうだ
あの夫婦は
せっくすれす
だから
ってすずきさんが言ってた
そういうすずきさんに ....

林檎は何時でも
小気味よい音を立てて
裸になってくれる
こんな女の人がいたらいいなと思う
十月の昼間は少し暑くて
隣家から
おもいっきりテレビの音声が聞こえる
シンクには
小腸み ....
泥棒のような前傾姿勢で
妹の洋服を
箪笥から引っ張りだして纏った
ふわわ、と甘いにおいが漂った

わたしは服を持って居なくて
だから何時も裸で暮らして居るのだが
この頃はとみに寒く
や ....
秒針が/ちくともちくとも何かを刻む/焦燥をこぼす君の眼差し

自死を希う/君の髪からフレッシュベリー/毎晩シャンプーしている癖に

此の世には/奇跡もドラマも無いけれど/幻覚や妄想なら ....
うばすてやまについて考えている
祖母をそこへ連れてゆきたい
訳ではない
昼下がり
冷えた湯呑みが二つ
並んでいる

祖母が歩くと
割烹着のポッケットから
何かがこすれ合う音がする
 ....
身分証明書を
と言われて財布を探ったが
パン屋のレシートがぱらりと落ちただけ
カード入れにはブックオフのカードだけ
午後の図書館だった

カウンターのミセスは
住所と名前が記されている  ....
品詞の群れが
淡青く固まって
規則正しく
埋まっている
あの砂浜の
崩れたお城のあたりに

それらは風化し
擦り切れて
最早
意味など成さないのに
皆が使いたがるのは
如何して ....
座るところが空いていなくて
仕方なくしゃがんだ
光る突起をさわれば
流れるみたいだ

壁一面に十一桁ずつの
番号が書いてあって
お呪いかと思ったらそれは
悪戯なのだった
なめくじが這ったみたいに淡い ....
電車は学芸大学を過ぎた
橙の薄日が
くすくす眼を射り
わたしは数年前に
逃がしてしまった犬の事を
茫洋と考えていた

毛並みの良い犬だった
ルクスと云う名で呼んでいた
或る日鎖をひき ....
十月の昼下がり
ガードレールに寄りかかって
ゆっくり喫煙をすると
内側にある熱いものが
とろけるように放出されてゆく

確か理科の時間に習った
高温のものと低温のものを並べると
熱 ....
母が二階で
掃除機をかけている
天井が振動
する度に埃が落ちる

右側の窓を
あけておくのを忘れてしまった
閉めっぱなしでは祖母が
家の中に入ってこられないのに

 ....
乾きたてのネグリジェーは柔らかく
僅かに生臭いにおいがした
貝のぼたんが付いている
それを
人差し指で
上から順にさわってゆくと
真ん中のぼたんだけ
緑色の丸いぼたんに
付け替えられて ....
りんごは優しく指を濡らし
珈琲は
のどぼとけを笑わせながら
そっとすべりこんでくる

隣のうちのベランダに
タオルケットが干してある
いつから干してあるのだろう
もうずっ ....
大きい声を出すと
ずぼんがゆるくなって困る
とお兄ちゃんは言う
あたりまえだ
大きい声を出しても何にもならないと
承知の上でまだ怒鳴るから
そういう羽目になるのだ

お兄ちゃんは
人 ....
日を追う毎に
わたしの頭は
軽くなってゆくようです
わすれていくのだろうか
こんなにも容易く

赤信号が青に変わり
裏路地は繁華街になり
たった今あったものが
次々と消えてゆき
 ....

ひとあし歩くごとに
わたしの身体からは石が落ちます
からからに乾いた石は
薄い色をしています
わたしはそれを
さらさらかちかち と踏みしだき
疲労し続けましょう
名 ....

雨のような音がしていた
始終ずっと
雨のような音がしていた

よくよく考えてみると
それは雨の音ではなくて
誰かの足音だったのかもしれない
雨の音は段々近づいてき ....
目覚まし時計の電池を抜いて
針を止めてはみたものの
時間が止まるわけでは無くて
時間が戻るわけでも無くて
ぴかぴか光る文字盤を見ている
わたしはきっと
何かを後悔してるのかもし ....


最近
妻が出来た
嫁を娶ったのではない
わたしは女であるから

正確にいえば
嫁の方から勝手に来たんである

或る夜のことだった
四百円を手にちゃらちゃらさせながら
 ....
国営放送の請求書が
ひらり
と郵便箱に滑り込む頃

誰かの忘れ物が
公園の隅で
しゅか、しゅか
光る

睫毛に引っ掛かる
砕けた陽射しはもう
夏のように
貪欲ではなくて

握り締めた領収書は
たまし ....

曖昧に舌を含んで
ただ笑った
あなたの考えている事は解らないと
言われたから
悲しむだけの隙間も無くして
ただ笑った
薬は二週間分出たから良かった


フォークを持つと
人 ....
遠い国から
のろいに満ちた手紙が届いた
開くと燃えてしまったから
何と書いてあったかは知らない

遠い国から
いかりに満ちた電話がきた
電波状態が悪いらしく
途切れ途 ....
空は何時か
還る人の為に在りますから

行き詰まって

流れるしか無い雲の
あんなにも柔らかそうな姿態

曼珠沙華は
意味を見失っている
紅くしか咲けないから

間接は曲が ....
吉田ぐんじょう(147)
タイトル カテゴリ Point 日付
きえる—父へ、きれぎれに未詩・独白1306/11/17 15:40
習作自由詩806/11/15 15:31
変貌する女自由詩1406/11/14 18:02
或る平和の情景自由詩1006/11/4 19:41
近所のひとたち自由詩1406/11/2 13:24
所感自由詩1806/11/1 15:39
すみちゃんのセーター自由詩1706/10/27 12:36
父やその他の皆の為に短歌1606/10/22 11:15
うばすてやま自由詩1306/10/18 10:57
図書館に通う自由詩3706/10/17 11:59
品詞の活用法自由詩606/10/16 20:33
駅構内の、携帯写真+ ...306/10/15 17:32
『ルクス、』自由詩1006/10/15 16:31
熱移動自由詩506/10/13 17:32
深層心理の怪物自由詩706/10/13 11:10
洗濯物と海自由詩906/10/12 21:37
単純な留守番自由詩906/10/12 13:05
きつねつき自由詩706/10/11 13:31
わすれていくこと自由詩1406/10/8 16:10
石と旅する自由詩1206/10/8 14:49
音と言葉自由詩906/10/7 5:22
めざましとけい自由詩706/10/7 3:45
妻の話自由詩2706/10/6 13:06
ひかり携帯写真+ ...606/10/5 1:22
びょ、ーき自由詩1306/10/4 17:53
遠い国自由詩706/10/4 17:16
独り言自由詩1506/10/4 17:09

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