星が刺さるほどに冴え返って

赤く爛れた月がうずくまっている

砂利を踏む音だけが

近い

門構えを超えると

冷たい墓石の間から

卒塔婆の墨字が倒れかかる

かねてか ....
喉から太い棒でも吐き出すみたいに

喉を丸く膨らせて

叫んでいる男があった

付き添いの若者が言うには

鶯になりきっているのですよ

いや、一向にそうは思えませんね

男は ....
感動的だ

ナイロビのスラムの何百万人のなかから

一人の少年を選んで

持って回った親和力(テレビカメラ)で気安くなり

何日間もその不幸を見続けたあげく

「君は今幸せかい?」 ....
ボール紙の小さな箱が濡れしおれている

白地に赤い矩形を散らした面は泥じみている

その上で蟻の細い行列が幾筋も

行きつ戻りつし交錯しあっている

つややかに黒い頭蓋のうちの

 ....
さっきモナリザを見た、よ。

電信柱のかげから出合いがしらに

公園でクサダさんが倒れていたっ、て

ケエドオミャクが切れていたっ、て

画布はナナメに(そう、もちろん)引き裂かれてい ....
 「子どもは純真なものだ」という常套句があります。その場合たいていはそれに引き換えての「大人の純真でないさま」を揶揄する目的があったりもするのだろうとは思いますが、その非難されるべき「大人の純真でない ....  どなたかが「アルキメデスは亀を飼っていたが、夏目漱石は猫を飼ったことがない」と書いてあったのを見て、それとはややずれますが、やはり詩を書くということに関係すると思えることを書いておこうと思います。
 ....
自動販売機のまえでポケットを探ったら

孔のあいた小銭が一枚出てきた

もっとないかとなおも探ったら

小さなねじが入っていた

何のねじだろうと首をひねったが

煙草を買うのはあ ....
階段を駈けあがる音つづいて扉をたたく音

新聞屋のたぐいかと思えばきみ

洗い立ての髪が匂う

いつかの女の子と同じシャンプー

がさごそいう白いポリ袋も同じ

決まって長葱が顔を ....
河原でハマグリを焼いた

たった一人で

誰にもらったか覚えてない

買った記憶もなかった

まだ食べてみもしないうちから

香ばしさが口中にひろがった

煙ばかりが立って
 ....
あなたは迷うように見上げた

今日の散光を苦い舌でなめて

長い午後を霞ませる問いかけに

指がわずかに答えようとしかけたのを

隠すみたいに柔らかい拳にして

立っていた

 ....
言葉は物に触れられない
物に触れるのは私たちの手だ
とはいえ
言葉無しには物ですらない
そして言葉は時には物そのもののようなふりをする
そのことが
どんな明証も不可能にする
と同時に
 ....
冷えた月光が酔い痴れ
猫が舌なめずりをしている
木枯らしが掃き溜めた暗がりで
誰かの影を踏んだと驚き
見返れば
巨大な墓石が黒々とつらなるあたり
茫として仄明かりに白む天蓋
一閃の流れ星 ....
白い帆のような女たちが証券取引所めいた渚で戯れ
ぎこちない自然が波間に照り映えているはずのどこかのリゾート地で
凶暴な不信を滲ませながら立ち働く一団の
不信の中軸のごとく立ち尽くした若い俳優の
 ....
茹でた卵白
大きすぎる腕時計
意図的な長い刹那
鳴る
期待をはぐらかすように
響きもなく
喩えようもない自失
上目遣いに
憐れみをあてにして
温泉場の射的場みたいにうらぶれて
電話 ....
街路は静かだ
 たくらみのみ隠然と
 安普請のパネルのうちにしこる
 怪しげなるは自分自身であると認めぬか
 当りもしないクジ券を
 数枚買ったことであろう
 今宵
 世の中は
  ....
知人たちの馴染みのある穏やかな表情や繰言のような発話が、
開かれては閉じ、また開かれて行く中を、
生の伴侶たる時間は細紐のようにゆらめいている。
窓外の散光は変わらぬままと見えながらほんの僅かづ ....
丘のうえにやせた人影がある
夕ぐれどき
犬の吠える
長く尾をひいて
雲は赤光に群がるから
西の空だけ覆われている
ベンチの倒れた公園に
郷愁を拾うよそ者が増えて
小さな顔の老婆は住処を ....
立ち込める花のいきれ
咲いているのは闇
棘を立てる傷ついた茎
棘を立てさせる傷のうずき
窪みに鉱毒色の水溜り
羽根のある女が溺れていた
罰の不在を照らす稲光
柔肌を掻き乱すさざ波
引き ....
すれちがいざま斬りつける嬌声に
手負いと成り果て影を垂らす
愉悦のうす皮の散り敷く裏通りのあたり
あんばい良く酒場の明かり
絶命の呈で
{ルビ傾=なだ}れ入ると棺桶よりは少し広い

早速 ....
月夜
枯れ枝が影を伸ばして扉を開けた
幼子のたどたどしい歌声が
夜気に流れた
眠ったまま儚くなった子どもが
死んだことも知らず歌っている
灰のように静まり返った家内で
若い母親はテーブル ....
尖った爪の先で
地面を掻く
見慣れぬ生き物の
陰鬱な唸り声
影が揺れる
長い執拗な行為の持続
無数の線が刻み付けられ
あるいは
何かの想念を
かたどるものであるかのごとく
しかしま ....
破れ垂れ下がった灰いろの空
ちかくとおく恐慌じみた声楽が追い立てる
中身がすっかり空になったのは財布だけではない
傾ぎながら電飾のすり鉢のそこを通り過ぎた
それを寒風のなかから眺めていた
ど ....
午後、人気の失せた列車のなかに
 男が眠りこけている
 その影が伸びたり縮んだりしている
 場違いに鮮やかなドレスが
 その影を踏み散らしていく
 にわかに騒がしさが戻って来そうに ....
古めかしいホールのような場所で見知らぬ人が
懐かしげに笑いかけた
腐りかけの甲殻類の臭いがしてきた
いつの間に
おかしな縫いぐるみを頭にのせた
全裸の人たちのなかにいた
気味が悪いほど上機 ....
 濁る水のほとり凍て石を
 つまぐりつつ死人はわらめく
 騒ぎ落つ枯れ葉あかく
 みょうとして沈黙ににたり 
 くらめき惑う
 せらせらと
 せらせらと
 腐肉をこそぎ
 白糸のたばし ....
 軒下に掛けられた鉢植えを
 風が巻いた
 アスファルトの上に敷物をして
 わたしたちは寝そべった
 あなたの腕に敷物の痕が残っていた
 日曜日
 時間もまた渦巻型をしている
 飲みかけ ....
アシタバ(27)
タイトル カテゴリ Point 日付
密会自由詩106/4/11 21:51
ウグイス自由詩006/4/11 19:26
感動的な日々自由詩1*06/4/10 11:10
自由詩4*06/4/6 20:48
モナリザ解体(仮題)自由詩2*06/4/5 14:59
子どもの「純真さ」について散文(批評 ...2*06/4/4 14:33
嘘とパラドクス散文(批評 ...0*06/4/4 1:58
毛糸編み機未詩・独白0*06/4/3 18:47
同じでないもの自由詩206/4/2 16:46
ハマグリ(蛤)自由詩206/4/1 20:24
バス停自由詩4*06/3/31 23:14
モノローグ自由詩006/3/30 10:40
自由詩206/3/29 22:16
整理された暴動自由詩106/3/29 14:18
ランボーと殺人自由詩106/3/28 21:30
街路自由詩006/3/27 16:21
集い自由詩106/3/25 1:26
こいまぐれ自由詩206/2/2 12:16
夜園自由詩206/2/1 13:10
酔いどれおるふぇ自由詩106/1/28 0:54
幼き歌声自由詩106/1/25 15:59
見慣れぬ生き物自由詩206/1/25 15:48
北斗七星[group]自由詩205/12/23 23:02
列車自由詩105/12/4 11:15
あるパーティーにて自由詩005/12/2 12:27
ものわざわゐ自由詩405/12/1 10:31
日曜日自由詩305/11/30 18:00

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