件の匣の開けちゃいけない蓋、隙間から中、見ようとしたら
全部もれて逃げていっちゃった魔物のいろいろは、風になって目にみえなくなって
ひとの息と一緒に吸われては吐き出され、伝播してゆく、から、世の中 ....
海のそばの公園は芝生がまだ青くて、快晴、強い風
空の真ん中らへん、釣り針みたいな飛行機、光った
口をあけてみてた女の子、ぴょんと、跳びあがって
側転 側転 側転 側転 側転
芝生は ....
音に関しては鈍いたちだが、ふとした拍子に、頭を掠めることがある。
普段の雑事をこなしているときや、ひとりでしずかにしているときも、常に頭の中は言葉が囁きほどの音量で反響している。
でもそれは、 ....
せせらぎに、眼は吸い寄せられ
覗きこめば
透明が、流れの奥行きへと手招く。
身を浸すと
視界のさきに、青磁いろの無音がひろがり
ありえない深さが
いくつもの巨岩を抱えていた。
{ルビ水= ....
噛んで、呑みこんでしまえば
たいしたことではなかった
と、いうことなのか。
てのひらに、吐きだしてみる
つぶぞろいの屈託。
楠は#100、#150、#180、#220、#280、#400の順に紙やすりを当てると
曇りがとれて、すべすべになるんだ。
きょうは暑かった。
日が傾いて、ようやく軽くなった風が子供たちの声 ....
塗り固めておいた嘘を
少し泡立てて、手早く刷いたら
ホントウ、は淡く化粧した見て呉になって
まぶした、シアワセ
剃り残した
ゆうがたの緩んだ空に
遠目から見つけた大待宵草の花弁のような ....
言葉が逃げていってしまう。
わたしは言葉を結びたい。さといもの葉っぱが夜露を結んでころがすみたいに。
そんなふうにして、わたしは心のかたちの一部分を作っていたのだ。
わたしの目や耳やからだの表面 ....
{ルビ医師=いし}らバス{ルビ停=てい}にいてすばらしい
{ルビ酸欠=さんけつ}さん{ルビ診察検査=しんさつけんさ}
{ルビ残念捻挫=ざんねんねんざ}
インテリ{ルビ庵癌=あんがん}あり{ルビ転 ....
八月、蝉が鳴く。
斜面の高いところで、
楠がこんもりと枝を張って
身をゆする。
むいたばかりの
ゆで卵みたいな青空の表面へ、
陽射しをはじきかえしている。
降りそそぐ、
眩しい小さなつ ....
カフス不可
カバラならば可
カラスミすら可
かるい体なだらか射るか?
カマドウマ舞う土間か
カメラ騙しまだ騙し{ルビ斑目=まだらめ}か
悲しいなかに叶いし仲
踵痛いと{ルビ母=か ....
櫃、入れろよ。パンでくるみ
大きな鳶と人々亡き
おお、ミルク?電波?ヨロレイッヒ
生るな桃の実よ、{ルビ水面=みのも}も鳴るな
砂は口説く、人間に功徳話す
たぶん、豚
たんぼを適当に切り抜いて、開いた空間に建てたような小学校だった。敷地とたんぼは舗装道路でくぎられていたが、ブロック塀や植え込みで囲われてはいなかった。校舎はカステラのひと切れみたいに呆然とつったって ....
ほうっておかれて、いいのだ。
忘れていてくれたほうが
ほっとするのだ。
猫じゃらしなんかを
そよがせて
雲の影を
ひたいに映して
空想していたいのだ。
刺繍がいい。輪郭を隈取ってから、鎖のような針目を重ねて面を埋めてゆく。糸の光沢は緻密で重く、かさぶたのように薄く盛りあがる。色彩の濃淡を綾目に託す刺しかたではない。絵模様のひと色いちまい毎、面と面を ....
日がたかくなったら
口をつぐんでしまった。
なにか
言い残した風情で、
種に託したのだろうか。
昼ごはんのあと
かたづけがひとまず済んだ
うす明かるい台所。
水切りかごの中には茶碗や箸や
小鉢や玉杓子なんかが、
伏せられて
おとなしく乾くのを待っている。
毎日なにかしら、人の手が触 ....
台風一過、朝寝坊をひっぱって、眠りの水面から浮上、ざばっと目蓋を開いたら、
窓には洗いたての青空一枚(梢のふしゃふしゃした陰影と、ひとひらの雲も泡立てたばっかり、といったところを添えて)光って遠くに ....
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