じいちゃんが逝った朝
病室にばあちゃんの姿がない
窓の外は風にあおられた雪

あたしは瞳孔を確認して
お決まりのせりふを吐く
息子の白髪頭が傾く

「独りになったら
都会に行かん ....
静けさに目ざめた朝
千本格子に寄って眺める
まろくぼやけた夕べの足跡
やはらかに雪肌が吸ひ込む
とほい魚売りの声

せめておぼろな冬の陽が
見まがふばかりに華やぐやう
乾ひたくちび ....

H:「もっと前に,きみに出会ってたらどうだっただろう,って考えてたんだ」
S:「もっとステキだったかも知れないし,もっとつまんなかったかも知れない」
H:「プラスマイナス…ゼロ…」
S:「 ....
ビル風がないている
5階17号室の伝説
−入室した患者は寛解する−
突き刺さる2月の夕陽

あとどのくらい…?
18号室の質問に
科学者の仮面で答える
3ヶ月≦x≦6ヶ月

藁 ....
真夜中にピッチの着信音
どんな目覚ましよりも効果がある
気がつくと白衣を引っ掛け
廊下を小走りに駆けている

おとなしい茶色い目の
奥さんを思い浮かべる
父親に似て意志の強そうな
 ....
夕暮れの死は淋しい
夕陽が容赦なく
色を注ぎ込む部屋
異界から配膳の喧騒

疲れ果てて
干からびた唇は静止する
腐臭の隙間を漂い来る
まずい魚の煮物

LEDライトで確認する
 ....
Early a cold evening falls
Deeply a long night disgusts me
A spot illuminant in sepia is lonely
 ....
はやい夕暮れ
うんざりする長い夜
セピア色の点光源
薄暗がりの背景に
うかびあがって
忘れられた
映画のポスター
ひたすらうらぶれてる

スーツの男
作業服の男
セーターの男 ....
うつ病のひょっとこ
暗い目
マジ過ぎて笑える

面白い顔で
沈鬱な表情
文句なく笑える

「笑っちゃいけない」
お行儀いい人は言うけど
笑えちゃうんだからしかたない

偽善 ....
まっている
K帯の着メロが鳴るのを
まっていたくない

TVをつけて見てるふりして
CDをかけて聴いてるふりして
お湯をわかしてお茶をいれたり
ベランダの花に水をやったり

まっ ....
かあいいミニパンダミニパンダ
なんでも食べる
どぶネズミのように殖える殖える

雨漏りするクルマどころじゃない
火を噴くスマホどころじゃない
1ユーロで買えるミニパンダミニパンダ

 ....
今朝もぎゅうぎゅう
詰め込まれた通勤電車
トンネルを抜けると爽やかな朝日
お尻のあたりに妙な違和感

さわさわさわさわ
動けない…
首をねじったらつったけど
目の端に黒縁めがねの男 ....
七夕飾りを作った
網飾りと提灯をつけた
短冊を書いてヴェランダに飾った

あいにくのくもりぞら
空を見る気にもなれず
意味のないTVドラマを観た

ヴェランダで妙な物音がする
カ ....
あたしの両目には
瞬きできるまぶたがない
いつも涙を流している

見開いているのに
像はゆらゆら揺れる
世界はいつも揺れている

あたしの左手には
指輪をはめる指がない
いつも ....
しあわせがサラサラと
指の間から
零れ落ちていく
静寂

音も立てないで
苦しみもしないで
描いた文様は
風に吹き消される

伝わらない思いを
伝えようとあがいた
その言葉 ....
明るくふるまうのは
終わりを予感するから
‘おびえている’ なんて
いい気にさせたくないから

言いかけた言葉を
飲みこんだきみは
カモメを指さしてごまかす
中途半端なやさしさ
 ....
 夕暮れが近づいてくると,昼間あんなにたくさんいた観光客の姿も減って,運河のさざ波が落ち着きを取り戻してくるように見える.この町には都会にいるような物売りの姿がない.美術館の横の広場で,それも‘No  .... 目覚ましの音が鳴ったら
脊髄からの命令でボタンを押す
腕をフトンに引っ込めたら
脳が朝に在るあたしを認識する

薬は早期覚醒を抑える
暗闇でのしかかってくる壁は消えた
もう少しの辛抱 ....
隣のおばさんは
自治会の会合に熱心すぎる
向かいのおじさんは
信心深くて線香を焚きすぎる

あたしは
隣の女子高生のアニメ友達だし
向かいの大学生とはテニスをする
純粋培養の仲良し ....
きみに抱きしめられたとき
気が遠くなりそうだった
だからあたしも
力をこめてきみに抱きついた

気を失ったらダメだ
って思ったんだよ
そんなことで
あたしを責めたりしないでよ

 ....
とりたてて喜ぶほどでもない
あたりまえのことを渇望する
今日は昨日よりも調子がいい
そんな錯覚でも気分がよくなる

まわりの誰と比べても
あたしなんて可愛いもんだ
錯覚か幻想だけでも ....
蕗を茹でる鍋にぶちまける
キッチンの戸棚に隠してあった
とっておきの塩
ザルツブルクで見つけた

とっておき なんて
未来を楽観できなきゃ
思い浮かばない道化芝居
あたしは無理をし ....
なんとはなしに気ぜわしい夕暮れ
劇場に向かう華やいだ人々の甲高いイタリア語
船着場に打ち寄せられたのは老いて死んだカモメ
ひたひたと岸壁を打つ波音だけの静寂

午後には特別なミサがあった
 ....
そんな厳粛なものではなかった
壮麗な教会のどこか枯れた香りではなく
天に召されようとする生身の横たわる部屋は
真冬でも蠅が飛び交いそうな腐臭に満ちていた

‘なにかがおかしい’と疑いながら
 ....
城に上っていく石畳に夕陽が反射する
あなたがこの瞬間を見たのはいつの頃?
使い古したカメラのフィルムに残されていた
あなたの鼓動が聞こえてくる

あなたから聞いたピヴォの名前にひかれて
日 ....
何度きみを見送ったんだろう
あたしの涙をやさしく拭って
ひとさし指を立てて笑いかけてくれた
きみの痛みには気づきもしないで

あったかいカフェ・オレを
飲ませてあげればよかった
つめたい ....
真っ白いノートに
青いインクでスラッと書きたい
なぐさめかもしれない
ラブレターかもしれない
高らかな決意かもしれない
それとも
別れのコトバ?

ノートの表紙は
いろんな色で彩って ....
つららが少しずつ短くなった
しずくがきらめいて揺れてる

あたしの頬に触れる指先は
ささくれだって冷たいけど
やわらかな子猫を抱くような
そんなしぐさから伝わってくる

手の冷たい人は ....
丘をのぼる石だたみの坂道でうずくまっている
ベレーをのせたあたしの夢 ただの酔っぱらい
指にこびりついているのは絵の具じゃない
細かい灰色の砂ぼこり 指の間から零れおちた砂の残骸

こんなと ....
追いかけた夢のかけらが
透明なみどりのガラス瓶のなかで
体を揺らせるたびに
きりんこりんと泣く

泣き声を聞きたくなくて
じっと身をひそめる
あかるい場所から目をそらせる
みじめな思い ....
藤原絵理子(271)
タイトル カテゴリ Point 日付
小雪舞う朝自由詩8*14/2/6 21:30
自由詩5*14/2/5 22:44
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ジンクス自由詩4*14/2/5 21:21
スイセン自由詩8*14/2/3 21:28
見送るとき自由詩1*14/2/2 22:16
Blues自由詩1*14/2/2 0:15
ブルース自由詩5*14/2/1 22:45
ひょっとこ自由詩4*14/2/1 19:03
Waiting for...自由詩2*14/1/31 22:59
不完全なヴィラネル自由詩2*14/1/29 22:24
冤罪自由詩2*14/1/28 23:51
乞巧奠自由詩3*14/1/28 22:22
ふゆげしき自由詩3*14/1/27 21:40
誤解あるいは放棄自由詩9*14/1/26 23:04
からげんき / 背中自由詩4*14/1/26 22:23
ヴェネツィア散文(批評 ...1+*14/1/24 22:59
フランス組曲第一番自由詩4*14/1/24 22:05
レモン自由詩3+*14/1/23 21:39
Hold me自由詩214/1/21 22:38
病室自由詩8*14/1/20 22:28
ゲトライデ自由詩314/1/19 21:05
ラグーナ自由詩214/1/16 21:51
イルシスカー −BWV535自由詩5*14/1/14 22:57
ネルドヴァ  −BWV534自由詩314/1/13 22:52
Far away自由詩114/1/9 22:43
ともだち自由詩314/1/8 22:36
ねこやなぎ自由詩414/1/7 0:13
ロンサール自由詩414/1/6 0:11
古いかけら自由詩214/1/4 23:13

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