嘘をついているつもりじゃない
都合のいい部分だけを繋ぎ合わせたら
彼女の話になる 騙すつもりじゃないのに
暖かくて居心地のいい 四角い部屋


田舎の家に帰りたい
思いは増殖して 連 ....
命日には 花が咲き始める
あの時のまま 時間は止まっている
部屋は汚れ果てた 誰も来なくなったから
すべてが汚らしく見えて 手ばかり洗っている


不安の海は時化て 人魚は深い水底へ
押 ....
あたしの悲しみは 彷徨った後
水仙の咲く堤の 老いた桜にたどり着く
蕾はまだ固いのに 水は
香りに混ざった 陽の光を揺らす 軽やかに


きらきらと 光の粒はころがって
橋を渡る老人 ....
しばらく前まで そこには山があった
ショベルカーの快活な饒舌や
ブルドーザーの笑い声と共に
預金通帳に増えていく 零のよろこび


狸は自動車のライトに眼が眩んで
白いセンターライン ....
家の玄関を出たら 右へ
春なら 左向かいの医院は花盛り
秋なら 正面遠くにお寺の紅葉
雨さえ降らなければ 毎日の日課


石段を昇って 神社にお参りして
参道のパン屋で パンを買う
 ....
彩色された 醜い些細な日常を
覆い隠すつもりで 目を閉じて見ている
心に残った出来事だけを 何度も何度も
繰り返し話す 自分の世界に浸って


大根の葉が 黄色くなった
裸になった樹 ....
救急車が 走り回る
寝静まった街を 音もたてずに

誰かが 泣いている
悲しい出来事は もうないのよ と

地下街の換気口から ため息
焼かれた鶏の モツになった牛の

生暖かい ....
守り子の唄は 灰色の雨に滲む
擦り切れた赤い帯の 風車が回った
竹田じゃ雪に変わって トタン屋根が
静かになる しんしんと寒さだけになる


姉さまは 池に身を投げた
三条のぼんぼん ....
過去への扉を閉めて 歩み去った
思い出を 燃やしている その日までの
カレンダアに 印を付けるように
胸をつつく 夢の欠片を夜の河原に捨てる


葉を落とした 桜の小枝が 空に描く
 ....
揺れた 真珠の耳飾り 不意に
きみが撮った あたしの写真
声をかけられて驚いた 振り向いたとき
真実の醜さなんて 知らなかった頃


夢や希望は 歪んでいなかった
青空は澄み切って  ....
骨だけになった 樹の群れは
古い写真の中で 諦めている時計に似て
遅れていく時刻 ついさっきまで耀いていた
枝の露は 跡形もなく消えた


誰かからの便りを 待っている
いつか訪れる ....
ピアノ協奏曲第2番が流れていた
雲の切れ間から射し込む くぐもった冬の陽は
積み上げる書物の埃を 頼りなげに
浮かび上がらせて ストオブの気流に乗せた


この部屋に 何年いたのかな? ....
風の止んだ朝 林は広くなって
生まれたばかりの顔をした 陽ざしが
汚れ果てた落葉を 白いレエスで隠す
あなたが霜柱を踏む 乾いた音


リズムは不規則で 頼りなく
不自由な足が もど ....
ゆらめくキャンドルの炎
白い妖精が舞いおりる街
鐘の音を流す教会
はじめての聖夜

コートのポケットで手をつないで
石だたみの坂道をのぼった
華やいだ街角に仲間たちを残して
ふたり ....
堆く積まれた 書物は昔のままに 
午後の斜光に 照らされた埃の層は
舞い上がることもない 部屋は死んでいる
窓ガラスは乾いた風に ことこと揺れる


紙魚が食べた詩集には 空洞になった ....
狸の死骸を突いている鴉は
国道の真ん中で ダンプに踏み潰される
黒い羽は飛び散って
自分も狸と同じように 一塊の肉になる.


通り過ぎる助手席の婦人は 眼を背ける
汚らしい物を見て ....
モノクロームの写真に 影だけが見える
真珠の耳飾りが 揺れる 泣いているのに
あたしの瞳は 無垢な少女のように
耀いている 嘘をついている


アンリエット… きみの墓は 毀たれた
 ....
「その紙に書いて…」
ぶっきらぼうに言った
彼女の横顔は デジタルに
その上 形而上学的に

LEDに代わった信号は
きっぱりと 黄色から赤に変わった
車のウィンカーだって 余情なく ....
死んだ犬の名前を呼んで 秋の夜
泣いているのは 初老の男の独り暮らし
妻が亡くなり 娘は家を出た
錆び付いたぶらんこは 荒れ果てた庭に 


2階のヴェランダには 溜まった土埃に
埋 ....
リルケの詩集を 雪の積もった日に
重いコートの襟を立てて 携えてきた
大事な宝物のように 頬を赤くして
そんな時代に きみの後姿が重なる


茶色くなった 欅の落ち葉に書いた
秋の香 ....
月のない夜 銀河からの光に
山の端の木枝は 浮かび上がる 黒々と
花は眠っている 午後の明るい顔のままで
川音は 青くさざめいて 流れる


あてにはならない 行く末へ
いくつもの悔 ....
刻まれた目盛りの 一箇所に
あたしは基準点を作っている
それ以上だったら しあわせ 満足
それ以下だったら ふしあわせ 不満


ものさしは
あたしが作ったものじゃない
あたしが作 ....
ぽたり ぽたり
胸の上に 滴る 暖かい
天井裏に隠した おまえの死体から滲み出る血
硝子の破片で刺した 傷口から


あの時 息の根を止めたつもりだった
どこかに潜んでいた 自己憐憫 ....
白ワインのグラスに 逆さまに
10月の雨に濡れた ムフタール通りが
もの憂げな 縮れ毛のきみの 髪の色と
愛した少年の 産毛の耀きが 悲しく重なる


こちらの世界に 繋ぎ止める すべ ....
静謐だった森が ざわめき始める
築いている壁の 空だけで繋がった向こうで
錬金術師が 花火を打ち上げる
賑わいが 壁を越えて 壁を通り抜けてくる


あたしの心を鎮めてください
立ち ....
柔らかい悲しみは 降り積もる
落ち葉に埋もれて 腐敗の暖かさに
林の樹木は無頓着に 日々を紡ぐ
自然な 季節の移ろいに 滑らかに


回転運動の 単調な繰り返しに
追随して耀く 儚く ....
「こんなとこにおったら,殺されてまうわ」

自覚症状のない患者は 大抵こう言う
痛くもない腹を探られるような 不快感
PCが作った断層映像など 何の説得力もない
説明すればするほど 脅し ....
洋燈が揺れている 心を反映する
「愛しています」 わからなくなった夢
見知らぬ暗い森を 彷徨っていた
遠く微かに 木々の隙間に瞬く 暖かな光


秋の夜に 影をなくした 心へ
何かし ....
白い萩の花は 秋雨にうなだれて
庭の隅には 夏蝉の死骸が朽ちて
宛名のない手紙は 燃やされる
薄い紫の煙が 竜胆の花と混ざる


黄金色の思い出に 溺れて沈んだ
綺麗なものしか 見え ....
風が止んだ 窓に凭れている月光
まるくなった猫の瞳に 映る洋燈の揺らめき
一枚の油絵から 零れ落ちる泉のしずくが
なめらかに滑り落ちた 鍵盤の上


都会のざわめきは遠く 静けさに
 ....
藤原絵理子(245)
タイトル カテゴリ Point 日付
まことしやかな嘘自由詩415/4/5 22:56
花の色は自由詩815/4/3 21:19
早春に自由詩815/3/26 21:58
郊外の風景自由詩715/3/17 20:51
散歩自由詩415/3/9 22:48
祖母の春自由詩515/3/4 22:06
街の風景自由詩615/2/21 0:21
戻り橋自由詩415/2/4 23:02
サ高住自由詩615/1/29 23:07
ヨハネスの少女自由詩315/1/24 21:21
囲炉裏の上自由詩715/1/19 23:51
去る人自由詩615/1/11 22:41
老いた冬に自由詩715/1/5 22:07
White story自由詩314/12/22 23:48
冬の午後自由詩714/12/17 22:52
肉食動物自由詩614/12/12 22:23
17歳だった_ Delft自由詩314/12/5 22:51
図書館の魔女自由詩514/11/24 18:44
寂寥自由詩514/11/11 21:57
夕萓に自由詩8*14/11/8 22:34
千鳥しば鳴く自由詩7*14/10/28 21:56
ものさし自由詩7*14/10/26 22:44
迷い自由詩4*14/10/21 22:43
エルレーヌ追想自由詩6*14/10/18 22:24
鎮魂の歌自由詩6*14/10/13 20:38
もみぢ踏み分け自由詩8*14/10/10 20:50
徒然に自由詩6*14/10/7 22:48
枯葉の歌自由詩3*14/10/5 22:41
祖母の肖像自由詩6*14/9/30 22:14
晩秋_冬支度自由詩6+*14/9/26 22:16

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