あのひとは
とうとう
「すき」
とは言わなかった
すき
が大切なことと考えるひとだった ....
うんと強いウイスキーを頂戴。
赤いマルボロを灰皿に擦りながら女は言った
ハイヒールに収まった小さ ....
額の汗を無造作に拭うあいつより
きれいに畳んだハンカチで汗を拭う
そんな男のひとに憧れてしまう
....
手首の傷も やがてきえる
まん中はねらえなかった
だけど
甘えてただけなんておもわない
....
白いかがやき!
光のなかで 男は
悲しみに暮れる。
薔薇はまっすぐに
男へ 伸びる ....
わからない
君がさっきからどんなに説明してくれようと
よくわからない
もっとも、僕の中ではすで ....
時計が丸いのは
時間が丸いから
時間が回る
だから時計も回る
時間が回る
だから地 ....
おい貴様!
貴様と言っても誰に対して言えばいいのかわからないけど
とりあえず叫ばせろ貴様!!
....
どうか満月よ
あの人を忘れてしまいたい
あの強い瞳
あの柔らかな髪
時々見せる憎たらしい ....
これはもの、
こわれものだから。
とっても大切にして、
こわさ ....
触角と触覚を這わせつつ
小さな放電に胎児は笑うよ
仄かに点灯する眼球
路地裏の医院は
そのま ....
人には理解しがたい言葉で叫んだ。
僕は此処にいると、言わば俺語で。
mine Language. ....
探しものは
なんですか?
もしかしたら
「あの時追っていた夢」
ですか?
あ〜〜〜
....
すう…、と
夏が引いてゆくにつれ
風に乾いた砂が
自ら風になる
砂に埋められてい ....
お盆だった
お線香のにおいがする部屋
きゅうりとなすが殺された
殺したのは母 ....
青い目の太っちょネコは、ちいさくまあるい眠りからさめると、
弓をひくような格好で伸 ....
夜になると森の奥から
ピュー ピュー ピュー
と音が響いてくる
僕は竜のいびきの音だと思うんだ ....
金属が激しく鳴り響くような盲目の世界で
sufferの影の歩みに合わせ荒い呼吸を繰り返す大地
....
祈りを土に捧げましょう
記憶は
ひと知れず育ってゆきますから
たくさんの道で迷えるように
....
曇が曇に臥せ
金いろは
やわらかなひとりでいる
沼には醜い魚がいて
釣ら ....
木、その大きな直立
階段でいっしょになって笑い
二段抜かしをした九歳のように
セミの声だけ ....
雨が降っている
破れた蝙蝠傘をさした賢治さんが
しゃがみこんでいる
1 ....
その者はすべてを悲しくひきよせるという
そして誰も味わえない果実を実らせている
たったひとり)
....
曖昧な森の中の雑居ビルに共生している相違。愛していたとしても、僕の顔は君の爪先にもなれない。愛してい ....
人が創る地獄絵は
恐怖と醜さが鮮明で
人が想う天国は
幸福と美しさが不透明
人の批判は瞬 ....
まだここにあなたはいた
片足だけ残って、小石を崩していた
篠突く雨に耐えかねて、隻脚は交わ ....
まだここに少女はいた
片足だけ残って、小石を崩していた
篠突く雨に耐えかねて、隻脚 ....
漂う 粒子
温度差で 現わし
白き 霞
視界 狭まり
伸ばした 手の先
じんわりと 湿 ....
先生。
あなたの顔を 今頃になって心底懐かしく思う
先生。
あの頃、絶対死んでもなりたくな ....
鍋を洗うのと
お風呂のふたを洗うのが
あんまり好きじゃないです。
正常な者は立ち去れ 死の言葉を目撃してはならない 幸福を求めるものは立ち去れ
二十二時二十二分 ....
風がふいた
ふうわり さあ さあ
草がゆれた
君をみつけた
「なにしてるの?」 ....
あなた方の先祖は
地図も持たずにこの地にやってきた
古老は語る
女王に出会った古老の声は
氷 ....
透明な筆箱につめた夢は
いつも僕のポケットに入っていた
どこへでも持って行ったし
どこででも開 ....
カラスが三羽
七羽でなくて三羽
散歩するでなくて
散歩するふりをする
古くさい表現
古くさ ....
愛されたいなら
愛して欲しいと言う前に
愛されるに値する人になりなさい
孤独が嫌なら
寂 ....
夏のおわりが近づいたのだよと雷鳴が耳元で囁いた夜
わたしは小さなわたしの左の乳房にもっと小さな小さ ....
花が口々に言う
さざめくはわたしの耳
波のよう揺れ広がる青
かがみ込んで
口付ける
....
渦巻いている
頭の上で
あれもこれも
信じていいのか
世渡りのうまい人々
....
失われた街が視界のなかを流れる。
忘れられた廃屋に寄り添う墓標の上で、
目覚めた透明な空が、
....
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