しきたり
さとる

 
お盆だった

お線香のにおいがする部屋

きゅうりとなすが殺された

殺したのは母親

いつものテエブルにまっ白い布

遺影の祖父母はほほえんでいる


台所の母親 息子はそのとなり

母親はばきんばきんと割りばしをへし折った

はじめはきゅうり つぎはなす

ぶすりぶすりと突き刺した


息子がわんわん泣きはじめる

ひどいひどい 惨酷だよ悲惨だよ

いつか母さんにばちがあたってしまうよ 


はりつけにされたきゅうりとなす

きれいなみどり きれいなむらさき


母親はひややかにいう

しかたがないの しょうがないの

しきたりなのよ誰でもするの


きゅうりとなすは殺されたまま

遺影の祖父母はほほえんだまま


きゅうりとなすはかわいそう

祖父母はやさしい

母さんは 母さんは
 


自由詩 しきたり Copyright さとる 2006-08-23 16:12:06
notebook Home 戻る  過去 未来