夢十夜 ③
レタス

父の会社に泥棒が入ったというので
夜中に起こされ父の背中におぶさった
東の空に紅くて大きな月が登っている
黒猫が急げ 急げ!とせかしていた
下り坂をどんどん歩いても月は紅いままだった
父の歩みが遅いので
ぼくが父を背負っていた
黒猫が急げ 急げ!と急かすので
走りに走りに走った
父はすでにいなかった
会社に着くと
随分遅いな! と叱られて
ぼくは父になっていた

応接室のソファーに寝ていたぼくに
警察官がなめ茸の瓶詰をくれた



            初出 日本WEB詩人会 2024/03/11


自由詩 夢十夜 ③ Copyright レタス 2024-03-11 06:11:32
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