皇墜
高原漣

狭い狭い座席に押し込まれている

にらみつける視線の先で計器盤にひしめき合うメータが囀る

昼、透き通った天蓋は憎たらしいほど美しく蒼い空を見せつける

悪意ある小宇宙だ、ここは

凍砂辺の果から南溟辺の弥終まで

燃料のつづく限りに飛ぶ

そのうち、朱の珠がどこかに消えてしまう

海、ひたすらに黒い

夜光虫の光、上も下もない(天上は不気味なまでに星星がさんざめく)

広い広い虚空だ

単調な爆音の調べ、甘辛いガソリン臭がただよう

歌は聞こえない

意味など、とうの昔に喪われ

ただやつを墜とすためだけに

おれは征く



※凍砂辺、南溟辺

辺…國の意味。


自由詩 皇墜 Copyright 高原漣 2018-11-28 23:21:26
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