謎は何
こたきひろし

狭い道は迷路のように入りくんで両側に犇めく家々は道路ぎりぎりまで押し寄せていた
空間が開ける 古いアパートの建物が左側に現れて二階建ての佇まいがまるで幽霊屋敷のようだった
鉄の階段は怖いくらい急で危なげだった 若い女は短いスカートをはいていたから下から誰かに覗かれはしないかと不安になった
アパートにはいったい幾つ部屋があるのかなんて女は数えた事はなかった 男の部屋は真ん中あたりにあってノックすると中から返事があった
間もなくドアが開けられて男が顔を見せた
女は男に抱かれる為にきた からと言って男を愛していた訳じゃない
単純に女の性欲を充たす為にインターネットに引き寄せられてきたのだ
だから女は男に素性を知られなくはない 普段は穏やかな生活をしていてお金に困る事はなかった
安全で確かな男性と結婚していたからだ
けれど若い女の体には隠してある性癖があった
通常の関係では不完全燃焼しか起こらないのだ
完全な燃焼を求めて出会い系に登録した 秘密が欲しかったのだ
自由奔放にふしだらな女になりたかった

部屋に入ると男と女は発情する獣に成り下がった
男も女も内面は迷路のように入り乱れて
いた


自由詩 謎は何 Copyright こたきひろし 2018-04-08 06:59:34
notebook Home 戻る  過去 未来