岩手の村、夜の街
ヒヤシンス


 ピアノの音に重なるように朝の気配を感じる時、
 私は私の半身と共に旅情の只中を彷徨っている。
 頭と心は信じられないくらい透明で、
 静かな人の温もりは優しさを帯びている。

 自然の厳しさを肌で感じながら、杉群の中にこの身を置く。
 初めて聞く滝の名前に胸は躍る。
 雨続きのこの村に青い霧が立つ。
 遥かに聳えるあの山も麓から私らを覗き見るのみだ。

 おーい、岩手の偉大な山よ。
 人見知りはやめておくれ。
 お前のその大きな胸で私らを迎えておくれ。

 ジャズの流れるジョニーの店で闇夜は明けない。
 頭と心は限りなく透明に輝いている。
 旅情の神秘に街のネオンは静かに揺れる。


自由詩 岩手の村、夜の街 Copyright ヒヤシンス 2018-04-08 03:20:20
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