あおい満月


どこにもいない自分を探した
どこにもいない自分は
本当はシンクのなかのボウルに
貯めこまれた水を掬う手のひらのなかにいて
さかなのように鰭をかえして
私の指先をすり抜ける
沸かしたお湯に注ぐ珈琲を
啜る唇から
どこにもいない自分が入っていく
自分は赤々と流れる川へと繋がる
水の花から花を伝って
海を目指して流れていく



笑い声を聴いた
それは私の内側で
毛穴から聴こえてくる
どこにもいない自分の笑い声だ
声は部屋中に充満する
誰も気づいていないが
私にはわかる
声が無性に何かを欲しがっている
それは私のことばだ
指先をひりひりさせた
どこにもいない自分は
キイボオドに向かい
言葉にならない
血にまみれた肉体を持つ
ことばを私に書くように
私の背中を押す
べっとりとした血のぬくもりから
声が聴こえる
それはどこにもいない自分が見た
彼を認めなかった
求めなかった世界への
静かな肉体を持つ復讐だ




自由詩Copyright あおい満月 2018-01-13 08:07:40縦
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