青い薔薇
1486 106

軽やかな指先で美しい旋律を奏でている
貴方のピアノの音色がとても好きだった
薄地のカーテン越しに差し込む陽射しに
光のベールを纏っているかのように見えた

思い出を頼りに貴方の仕草を真似してみた
けど無骨な指は思い通りに動かせなくて
壊すように叩き付けた手のひらが奏でる
不協和音が誰もいない部屋に響いていた

愛していると言葉にしたはずのこの口で
傷付ける言葉をいくつ放ったのだろう
都合のいい台詞ばかりを並び立てても
きっと修復するのは不可能なんだろう


片付けでもしようと決めたのはいいけど
広すぎる部屋に途方に暮れてしまったよ
クローゼットの奥には小さなイヤリング
最後に貴方が残していった唯一のもの

突然吹いた風にカーテンが大きく揺れた
小さな窓の外を覗き込んでため息を吐く
話したい言葉ばかり浮かんでは消えていく
人知れず枯れていく冬の花のように

守ってみせると貴方を抱きしめたこの腕で
壊してしまったものがいくつあっただろう
何とかして引き寄せようとして込めた力の
使い方なら他にいくらでもあったのに

愛していると口付けを交わしたこの口で
一体いくつの嘘を吐いてしまっただろう
違えてしまった約束を叶えようとしても
今更やり直すのは不可能なんだろう


貴方は青い薔薇のように美しく
まるで奇跡のような存在でした

花瓶の水を入れ替えてからテーブルに置く
溢してしまった水を拭き取ったその後で
限りなくゼロに近い可能性だったとしても
不可能が可能に変わる日を待っている


自由詩 青い薔薇 Copyright 1486 106 2018-01-13 08:17:10
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