晩秋、午後四時、
佐々宝砂

晩秋の午後四時
まだ夜ははじまらない
こんな時間に酒を飲んでいるのは
私の朝が今日は午前四時からはじまったからだ
ふつうと数時間ずれているのだと考えてほしい
ああそうだ
確かに
先月の私はふつうとちょうど十二時間ずれていたのだけれど
その仕事はもう終わってしまった

秋ももうすぐ終わってしまう
私すこしは今年の秋を愉しんだかしら
冷蔵庫のなかで生栗が黴びかけている
窓のそと柿もいちじくもすっかり熟して
食べもしないうちに腐って落ちてしまった

うつりにけりないたづらに
私も腐って落ちるだろうか
熟して けれど 食べられないままに

私は働く
働かないと生きている気がしないから働く
私は役立たずではない
そう思わないと死にそうに思うから働く
子育てや介護や芸術やそのほかもろもろとても大切なもののための
大義名分をひとつも持たないから働く
誰も私を味わいはしないとしても
そんなこと知らない
私はとにかく働く
私は働くことができる

夕飯は鍋物にしよう と考えている
白菜がバカ高いのでいやんなるけど
そろそろ鍋物がおいしい季節
酔ってたって
鍋物くらいつくれるよ

おかえり
私のダーリン

酔っていて
ごめんね


自由詩 晩秋、午後四時、 Copyright 佐々宝砂 2004-11-02 17:12:38
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