海を渡る狼
クローバー


シャーロック・ホームズは、自らを猟犬と言う
時に住処を荒らす音楽をかけようか
イメージを膨らませたら
遠吠えを聞きなさい、愛すべき空白
ラジカセ持ってきてよ
掻き鳴らせギター、夜明けに雨に
さあ、波だって涙って、守っている
地球を盲目にしないため
海鳴れば白い狼の群が、泡に還って寄せては帰って
濡れているんだよ、声、聞きゃわかるよ
揺らいでいる、飛べばいいのに
君と呼べば、最短の君
追われる私は夕立にまるで歯が立たない
鮮やかだとか完璧だとか、名付けて
声を枯らせ、泣いてよ、私の代わりに、マーガレットが
充分に咲いて、雨に打たれている
百頭だての狼が、砕け散ってはまた帰る
暗い海の底からのぞき込む
仲間を求めた、地球は、眼球
ハッブルの望遠鏡が、素晴らしいレンズで
無くした右手を探している
白い獣が、溶けていくように
追われてしまう、赤い入り江に
神は私か、声は詩か
冷えていく身体に失われていく血を見て
見つからないまま
途方に暮れたあの繋ぐもののない手は
冷えていく
涙しか私を守らないように
私の声しか聞こえないように
誰のことも、聞かなくて良いように
百頭だての狼が、私のために砕ける
いつまで在れば、私の身体、白くなれる
猟犬になれないままに、砕け散る放たれた狼
ホームズのようには見つけられない
愛と叫べば、最短の君
ラジカセ
ボリュームを最大までひねって
耳を埋め尽くせ浜をかじる狼
もう誰のことも、聞きたくないんだ。


自由詩 海を渡る狼 Copyright クローバー 2010-04-19 21:22:49
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