尾根道
あおば


             080506



屋根裏部屋に潜む青大将
舌をぺろりとだしたりまま
垂木を登って外に出る
尾根伝いの道を這い
生け垣を越え
横町の角を曲がり
ひっくり返ったままの馬の背も越えて
隣町に逃げてゆく

逃散ということばを習う

中学三年生には
逃れようもない受験体制の罠が
アチィーブメントテストが待ちかまえ
落ちたら地獄の日々が口を開けていると
地獄から帰ったばかりの兄貴達が脅すので
机の下にカンニングペーパーを隠して置こうか
読書100編丸暗記してしまおうか
考え出すと落ち着かない
授業中は先生の言うことなんかまるで耳に入らない
耳にはいるのは丸太小屋の屋根裏に潜む
ミミズクのような大きな丸い目玉から放たれた
落ち着かない子は許しませんの厳しい声音

ひっくり返ったままの馬は薬殺されて
町に運ばれ解体されてバラバラになり
だれかの口に飛び込んで旨い旨いと言われて
それを聞き納めに地獄に行くのだと
アチィーブメントを逃れたものの
喰われてしまうのも
辛いものだと考えたりして
テストの成績はさんざんで
三者面接の時には
村を捨てて逃散するしかありませんねと
言いたそうな口ぶりを
捨て台詞も思いつかないままに
黙って坐って眺めているばかりでした。

馬の尾根を逃散した村人が着の身着のまま通り過ぎるのを
想像したことがあるかどうかで君の将来は決定されるとしたら
勉強なんかしない方が幸せかもしれないと
無邪気な顔した妹がしたり顔する
なんだか分からないままに頷いて
給食の残りのパンを囓りながら
横町を通り過ぎる人を見張るのが
午後の日課となったとか
なんとか
でたらめなことを書いて過ごす振り替え休日の朝。





自由詩 尾根道 Copyright あおば 2008-05-06 09:44:58
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