むずかしい散歩道
あおば

             08/05/02



空気と水は
相性が悪いので
接着できません
のんきな顔した空気は
瑞々しい若葉の声を
恥ずかしがらずに遮った
緑の岡にも影は拡がり
生贄には相応しくないと
リストラ対象になってからは
相性の良い人たちとしか
付き合わなくなった筆無精な人たち
老兵は死なず
ただ消えてゆくのみだと
ちびたタバコをふかしながら
立ち入り禁止の山道を
禁断の草の葉を採りに
分け入って
空気と水の配合を
かき乱すのが面白く
草の葉を籠一杯つみ採るのは
第一目標ではなくて
禁断の山道に
分け入るための口実となっている
人の輪を
乱すのが好きで
乱すのが上手で
ベテランの域に達したのは
のんきな顔をした常さんだけで
彼だけが次の生贄候補になっているが
そのことを意識しない常さんは
人の輪を乱しているのも知らないで
タバコの灰を山道に落とすことも怠らない
雨上がりだから
山火事が起きる恐れはないと
些細なことと気にしないのは生贄としては当然のことで
気にするのは筆無精のお人好しだけなのかもしれない



自由詩 むずかしい散歩道 Copyright あおば 2008-05-05 14:51:16縦
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