裸足で
知らぬまに 遠くまできていた
虹色の汽車にのって帰ろうと想う
歩んだそこには、
軌道がしっかりのこっている
帰りは 来るときほどの苦労がないね
そんな声がする
ただ、さびしいあき ....
安らいでいたいと思ったら
あの人のことは忘れてしまえばいい
なんてちょっぴり寂しい
食器棚からティーカップを取り出し
角砂糖をぽとんと落としてみれば
落ち着くところはやはり見えない心の底 ....
あした咲く朝顔は
雨の軒下でこうもり傘みたいに
とじています
あしたも雨なのかな
朝顔って、おかしな{ルビ花=ひと}だね
傘をもって
生まれてくるなんて
いちど咲いたら
もう、とじ ....
人間になりたいのです
あなたという空気を吸い
歩くことを厭わない
言葉を知るけものに
恥をも知らぬまま
十八年も生きて参りました
空のままの身体に満ちるは
あなた ....
また新しい朝をもらって
水をやりすぎても花は枯れ
日照り続きでも花は枯れる
足跡を残すために砂浜はあり
足跡を消すために波が追いかけてくる
有る ということについて
猫の前足の ....
腐ったってがらがらへびなんだよ
抜け殻だなんていわせない
赤外線探知装置のついた最新鋭の進化論さ
きみの白い指のぬくもりなんていらない
金子みすずのお月様なんて絵本の
せかいのデザー ....
こんな日だ
薄曇りがやんわり晴れ
暑くもない、寒くもない
欠伸がよく合う昼下がり
うたた寝みたいな日曜日
乾いた目やにを払いもせず
裸足の男がリビングで
ぼんやりと窓を見ている
昨 ....
赤いサンダルと
傷だらけの膝小僧
くくく っと
笑いをこらえた君の影が
僕の靴をはらりとかわした
日曜日の太陽は
すぐに傾いてしまうから
それぞれの
背中に淋しさを背負ったまま ....
石で打たれるような
犬に追い立てられるような悲しさに
居ても立ってもいられなく
ただただ早く帰りたかった
日没に向ってひたすら走り続けた
貝のように固く握りしめている
決して手放し ....
わたしは
時々
星になる
星になって
{ルビ盲=めしい}の
黒蜥蜴の歩む道を
照らしたいと思う
わたしは
時々
風になる
風になって
見えないけれど
触れることを
証明し ....
窓を開け放ち
空気を入れかえる
朝の訪れを遮ってだらりと垂れ下がる
色褪せた思想を派手に揺らし
この胸を蝕み患わせている
積もりに積もった誇りや死っけを吹き飛ばし
....
夕べ僕はかわいい嫁さんをつかまえるために落とし穴をほっていたが
落ちていたのは中年の酔っ払いだったのでそのまま埋めてしまった
週刊誌の運勢をみたらあまりに悲惨なので世の中を憎んでいた
退屈で ....
明日がやってくる
道すじに
サァァ、サァァァ……と
雨が降る
──誰も寝てはならぬ
けれど
そのうち
雨だれのアリアを
聴きながら
いつのまにか睡ってしまう
今日に
....
お金を数えていたはずなのに
気がつくと
銀行の人は星を数えていました
こんなにたくさん
どうやって集めたんですか
と尋ねるので
生まれた頃からあったと言いました
使いきれない ....
雲をながめたり
雨をながめたり
次第におおいかぶさる
暗闇の手をながめたり
そのたびに
母に
「またぼんやりして」
と言われた
私は
実にぼんやりした子どもだったのだろう
....
金があれば と言うけれど
あったらあったで目先のものに使ってしまう
時間があれば と言うけれど
あったらあったで無駄な時間も増やしてしまう
もっと自由があれば とも言うが
自由の ....
軽い手荷物で降り立った
六月の駅
梅雨の晴れ間
見あげると若い鮎が
翼を休めていた
炎上、
前の雰囲気のなかで
穏やかに営んでいる街路
山羊のこどもに
みちをたずねると
右 ....
壁に吊されて
忘れたいことなどありはしない
色とりどりの画鋲が
それぞれの過去を留める
僕は整理できない
だから
貼っておきたいんだ
伝言板のように
メモみたいな思い出から
....
潜る
深い深い思考の中
深海魚みたいに
やさしい言葉はかんたんにでるのにね
ほら笑ってるそばから
胸がいたい
自分のことが好きですか
深い海のそこから
あたしは泳ぎはじめる
好きです ....
身ひとつで悩んでいる
可憐な花が逡巡している
体の調子を整えようか
発信音、着信音
花を喜ぶ顔を見ようか
可憐な花が逡巡している
身ひとつで悩んでいる
疲 ....
ベイビーこんな雨の日は
ひきずるようなブルースをきくんだ
だから
ともだちになってよ
それとも懐かしい曲で
こころを満たすかい
ベイビー3弦がきれたよ
へやのすみには
弾かない ....
雨の日は
透明傘がいい
値段の気安さがいい
ドームの曲線を
雨が流れていくのを見るのは
誰かが
泣いているのを
見ているようで
そんな後ろめたさもいい
そういえば女優でもないのに
....
朧な碧い部屋で
私、夢を見ていたのね
溜息一つ、デキャンタと冷めた灰皿
白いレースで覆い隠されて
私の全てが嘘みたい
スローでムーディな音楽を
誰と聞いていたかしら?
花の名前のグラ ....
いばらの影に
脈打つカルマ
音色を聴いて
たたずむ青さの
うつくしい夜明け
明日も深呼吸して
そのときを待ってる
だから、行くね
押さえ付けて
轢き潰して
そんなもの
そ ....
その花の悶えるさま
太陽を切り抜いて
ふさぐベルベットの壁に
寄り掛かる深淵
波の音を聴く
心の中
ひとの道がある
ゆっくりと
這うように跳ねる
明日からばら色の日々
燃え ....
都会のカラスが
明方、ゴミをついばむ
世界は汚れる
汚れた世界は
まどろみながら
都会の夢を見る
都会の夢の中で
カラスは増え続ける
唐突に産声
夢は端か ....
空洞が鳴る
鏡の道を
空洞がゆく
光と遊び
冬を呑む子
鱗へ 水へ
蒼をこぼし
葉を追いながら
双子のけだもの
銀を知らず
冬を知らず
....
ランタナのつぶつぶ
少女はコンペイトウ
春夏秋冬 気ままに咲く
甘美の花言葉も知らない ランタナ
ランタナのつぶつぶ
少女は大人のアジサイに
雨季の間 憧れの感情に
無垢のまま 引き ....
振れた雨の振動数に寄りかかって
あなたの鼓動は直進する
言葉の数々と濡れながら空を飛ぶ
カーキのマンションの3階に猫を見る
猫も猫であなたを見ている
卑しさに消え入るザクロの双眸で雨の玉を引 ....
自分らしさを
置いてきた
記憶もうすれた遠い果て
自我は幻想
行きでも帰りでもある
旅は途中
道見失い
落ちて滑って
深いふところ
いだかれるのは
自己の小ささ
....
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