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道の遠くから 
何やら呟き続ける男が歩いて来る 
すれ違う瞬間 

「答は{ルビ空=くう}だ、答は{ルビ空=くう}」 

繰り返す呟きは背後に小さくなってゆき 
遠ざかる彼の背なかも小さ ....
私の脳内で指揮者は独り、無人の観客席
の闇に向かって、手にした棒を振ってい
ます。青く浮き出た血管の手がくるり、
棒を一振りすれば、観客席の暗闇に、幼
年期の幸福のしゃぼんが一つ、二振りす
 ....
これからの僕は 
嫌な上司のみみちい小言を、撥ね返す。 
これからの僕は 
苦手な注射も唇結んで、ぐっと耐える。 

どうやら親父になるらしい 
僕は自分の弱さを抱き締めながら 
日常の ....
落合選手は、凄い。 
原選手の引退試合でしっかりと  
糸を引くようなセンター前ヒットを、打った。 
(そのバットは刀の光で、瞬いた) 

王選手は、凄い。 
刀で宙吊りの紙を 
切り裂 ....
深夜一時すぎ 
スタンドの灯の下に 
原稿用紙を広げ 
私は夢の言葉を刻んでいる 

傍らの布団に 
聖母の面影で 
幸せそうに瞳を閉じる 
身ごもった妻よ 

バッヘルベルのカノ ....
金の光を体に帯びた 
釈迦の言葉を聴きながら 
緑の木々の下に坐る弟子達もすでに 
金の光を帯びていた 

夜の森の隅々にまで 
不思議な言葉は沁み渡り 
葉群の{ルビ詩=うた}も
森 ....
磯辺の岩に立ち、風に吹かれていた。 
僕の幻が、波上に輝く道を歩いていった。 
浜辺に坐る妻はじっと、目を細めていた。 

岩の上に立つ僕と 
海の上を往く僕は  
激しい春風に揺さぶられ ....
 三月十一日・午後二時四十六分、彼はデイ
サービスの廊下でお婆さんと歩いていた。前
方の車椅子のお爺さんが「地震だ」と言った
次の瞬間、壁の絵は傾き、施設は揺さぶられ
る海上の船となっ ....
いのちの綱を両手で握り、彼は崖を登る。 
時に静かな装いで彼は足場に佇む。ふいに
見下ろす下界の村はもう、{ルビ生=なま}の地図になっ
ていた(少年の日「夢」という文字を刻ん 
だ丸石が背後の ....
自分の素顔を忘れそうな日は 
林の中へ吸い込まれ 
木陰に腰を下ろし 
正午の空に輝く太陽を仰ぐ 

まっ青な空に向かって張り巡らせる 
桜の枝先に 
春をずっと待ちながら 
全身にひ ....
今も変わらず君は舞台に立ち、故郷の燃え
たぎる夕陽の耀きを、客席の一人ひとりの 
胸へ、放射する。僕が最も弱っていたあの 
日、濁らぬ瞳できらきらと「君は素晴らし 
い」と言ってぽん! ....
黄昏の陽は降りそそぎ 
無数の葉群が{ルビ煌々=きらきら}踊る 
避暑地の村で 
透きとほった風は吹き抜け 

木々の囁く歌に囲まれ  
立ち尽くす彼は 
いつも、夢に視ていた 

 ....
とある喫茶店の 
赤煉瓦の壁に掛けられた 
モジリアニの婦人画 

暗がりの四角い部屋から 
面長の顔を傾げて 
時を越え
こちらを視つめる、青い瞳 

(私は遥か昔から知っている  ....
私の胸に 
一つの小さい門があり 
見上げた天井を透きとほって 
下りて来る階段とつながっている 

何処からか 
さりげないピアノの単音が響けば 
昔の誰かの足音が 
この胸の門に入 ....
退職した職員とこじれ 
くたびれた顔をしていた呑気な社長が 
一人残って書類の仕事をする僕のもとへ 
ふらりと、やって来た 

お客様の心無い罵声を浴びて 
机に顔を伏せていたまじめな先輩 ....
机の上に置かれた 
黒い本の中に 
うっすらと、顔がある 

自分の貧しさに震える私と 
遥かな昔に交した約束を 
今も語っている 

蝋燭の火が 
風にふっと、消えた 
暗闇から ....
聴く、という姿勢で 
石の上に腰かけ 
微かに首を傾けながら 
瞳を閉じる少女よ 

冬の冷たい風に襟を立て 
凍える私の前で 
風に耳を澄ます 
銅像の少女よ 

閉じた瞳の裏に ....
ほんとうに美しい音楽は 
自らを主張せずに 
日常を漂う 

作曲家が世を去って久しい 
遠い異国のカフェで 
頬杖をつき 
もの思う私の胸に
ふっと、灯はともる 

瞳を閉じれば ....
「おつかれさま」
数日前は、ぎすぎすしていた人に 
ひとこと言って、お茶を置いた 

「あら、はじめてねぇ」 
その人は大事そうに 
両手で湯呑みを包んだ 

一日、隣で働けば 
自 ....
語り部は講堂内の明かりを全て、消した。 
百人の聴衆は、暗闇の一点に揺れる机上 
の灯を、観つめていた。(どんなに深い闇 
にさえ、この蝋燭の灯は負けないのです。) 
ぽっかり二つ空いていた席 ....
疲れた同僚に声をかけ 
代わりにゴミ袋を、捨てにいった。 

困った顔した同僚に声をかけられ 
休憩時間を少し削って、手伝った。 

(あなたを助けたい)という一念は 
口に出さなくとも ....
毎日僕を職場まで 
車で送ってくれる君は 
無邪気な少女になって 
窓越しに、手をふる。 

門の前で振り返り 
いつもは緩んだ顔を 
きりっと締めて 
こめかみにあてた掌を 
真直 ....
林道の枯草を踏み鳴らし 
彼は音楽室へ歩む

灰色の壁に 
暗闇の口を開けたドアを入り 
細い通路を奥へ進む

無人の音楽室は広く 
黒板の前に置かれた 
パイプオルガンと椅子の上で ....
暖かいミルクティーを入れた 
ティーカップは首を捻るように 
皿の上で少し、傾いている   

人生は、少しぐらい 
わからない質問のある方が、面白い。 

(僕等は日々のテストをクリア ....
いつものようにキスをして 
電車に乗った君の 
窓越しの笑顔に、手をあげて 

一人になった休日の僕は 
駅ビル内の喫茶店で 
朝食のパンをかじりながら 
ふいに 
自らを漂う雲と思う ....
のび太君はいつも 
スネ夫にからかわれては 
頭が煙の昇るエントツになるものの 
テストや体育の時間になると 
何故だか決まって、負けるのです。 

そんなスネ夫にも 
時折気まぐれの風 ....
今夜、Ben'sCafeという詩の家に集う僕等は、 
日常の全ての仮面を脱ぐだろう・・・言ノ葉
を愛する思い一つを胸に認めて、見えない風
に背を押され、見えない糸に引かれ、一つの
夜に ....
草原の何処に埋もれたかもわからない 
{ルビ薄荷草=はっかそう}の薫りを吸い込めば 
いつしか血の気は引いて来て 
遠い過日に、栗毛の少女が立っている 

もし、あなたがたった一人 
追想 ....
(ひとりの人の裏側に 
 かけがえのない死者が  
 音の無い 
 息をしている・・・ ) 

    * 

 浜に満ちては引いてゆく 
 海の呼吸の淵を歩む   
 痩せた青年画 ....
その夜の舞台で歌手が 
「ぞうさん」を唄った時 
観客様は皆、懐かしそうに 
うっとり微笑みを浮かべるのでした 

途中出演のチベット人が 
故郷の山々を唄った時 
タイムスリップした観 ....
山人さんの服部 剛さんおすすめリスト(94)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
壺の音_- 服部 剛自由詩411-4-12
音楽界の夢_- 服部 剛自由詩311-4-12
新米親父の詩_ー胎児の合図ー_- 服部 剛自由詩611-4-10
背番号「8」_- 服部 剛自由詩211-4-10
新しい家族_- 服部 剛自由詩4*11-3-27
釈迦の夢_- 服部 剛自由詩211-3-24
夢の核心_- 服部 剛自由詩111-3-24
日の丸の旗_ーSAVE_JAPANー_- 服部 剛自由詩411-3-17
今を登る_- 服部 剛自由詩411-3-9
春の夢_- 服部 剛自由詩311-2-24
Favorite_Friend_- 服部 剛自由詩311-2-24
涙の遺言_ー野村英夫への手紙ー_- 服部 剛自由詩511-2-11
青い瞳_- 服部 剛自由詩111-2-9
二重のまなざし_- 服部 剛自由詩411-2-4
夜の灯_- 服部 剛自由詩211-2-4
不思議な目_- 服部 剛自由詩711-2-2
裸の木_- 服部 剛自由詩711-2-1
無題_- 服部 剛自由詩611-1-21
お茶の効用_- 服部 剛自由詩311-1-20
夫婦の灯_- 服部 剛自由詩111-1-6
日溜り_- 服部 剛自由詩210-12-29
朝の合図_- 服部 剛自由詩210-12-29
黙想の部屋_- 服部 剛自由詩310-12-24
哲学者の顔_- 服部 剛自由詩3+10-12-4
雲の箱舟- 服部 剛自由詩410-12-4
ドラえもんのいない世界で_- 服部 剛自由詩310-11-28
黒い小さな舞台の上で- 服部 剛自由詩210-11-25
草原にて_- 服部 剛自由詩110-11-23
死者の息_- 服部 剛自由詩210-11-23
まどさんの夢_- 服部 剛自由詩410-11-17

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