図書館で君は少し死んでいる
少し死んだ体で雑誌を読み本を選ぶ
本は死んでいるから
本を欲する君も少しだけ死ぬ
僕も図書館では少し死ぬ
少し死んだ体で本を借りるとき
僕たちこんな死んだ部分で ....
巨人になって
谷を飛び越すことがある
足裏に地上の凸凹を感じながら
足首に絡む電線や
田んぼのぬかるみを楽しんだり
街を念入りに踏み潰す
そんな時、人は
わずかな寒気を感じて振り返り
....
過ごす時間に一つ一つ、ふせんを挟んで名前をつけて、たまに見返さないと思い出せない記憶の塊、あなたは、わたしのことを愛せていたのかなわたしは、あなたのことを愛していたのかな 教えてくれるかな、証明の数式 ....
記憶体、
ざっく ザックリと 切り開かれます
映像群、
ぽっか ポッカリと 映し出されます
汽笛、
鳴ります 遠い国
流れる流れる追いつけない
洋上の青 浴びる太陽
溶け合 ....
欲しい時にない
焼き豚するときとか
あった気がした場所探しても
見つからないから忘れてた
長いタコ糸
自販機の灯りをたよりに
蛙の鳴声の
隙間をぬって
脱げそうなサンダルで
....
おずおず手繰ろうとした楕円のような温みは、そのやわらかな縁取りをいたずらにみだしてしまう指先で、わずかにほころび、くずれ、わすれもののケチャップのようにてのひらのうえで台無しになってしまう ....
降り始めたちいさな雨粒を
ひとつひとつ
こぶしで撃っていく
敵のいない闘い
ボクサーのロードワーク
撃ちきれない雨粒のなん粒かは
火の玉になり
眼球の中で
また、道々の砂利のす ....
水に押された風が
屋根の上を梳き
かがやきを降らせ
音を降らせる
光の羽の子と光の蜘蛛の子が
どうしたらいいかわからずに
ずっと見つめあったままでいる
風の螺旋が ....
廃田の草を刈っていると突然大雨となった
しばし、刈り払い機を雨の当たらない所に置いて
雨の中に立ったまま私は辺りを見ていた
これからのことを打ち消すように
雨は降りしきり、そしてまた
何 ....
湿る金属 の臭いと 舌の先
{引用=金属は湿っている
唇は乾いている
それは六月二十三日
信号は点滅している}
主の無い 蛍袋と 荒屋敷
{引用=壺屋の水は ....
梅雨にぽつんと挟まれた晴れの日には、
いつも同じ日を思い出す
きっと色々な光を浴びた記憶たちが、
今朝の紅茶のように綺麗に溶けて、
同じ日と、定義しているだけだけど
心はもう何もかも ....
{引用=むかしばなし}
幾千幾万の囁きで雨は静かに耳を溺れさせる
まろび出た夢想に白い指 {ルビ解=ほど}く否かためらって
灰にならない螢の恋は錘に捲かれて拷問されて
透かして飲んだ鈴の音も夜 ....
蒼いインクを流し込まれて
世界は行き暮れた
やがて長い夜が明け
暮らしの屋根から細く立ち上るかまどの煙や
打ち寄せられた農具さえ
インクの色に染まっていた
それでも 鐘の音を聞くと ....
横たわる
目を閉じる
頭の中が巡る
眠ってるというよりは
潜ってる感じ
夢を見るというよりは
見られてる感じ
潜っては浮かぶの
くり返し
深い呼吸の
くり返し
....
しとと濡れ
薄紫に咲きほこる中
とおりゆく
あたたかい
階段は紫陽花におおわれ
濡れたままの手
とびらあけたらさ
毎日まいにち
あっていたのに
小さなはこになってた
....
The golden door
うちの猫はキーボードを踏んで歩き
スリープ状態のパソコンを呼び覚ます名人である
ぼくの彼女は何時も地雷を踏んで歩き
その意味ではとても有能な詩人でもある ....
おわりかけの日々に
柔らかい泥を塗り
火をくべる
似たようなことが
何度もあったはずだけど
何度も
感傷しかない
空気ひとつぶにもいちいち動じてる
吸い込むたびに途方にくれ ....
熱風吹く光の午後、
女の子が木に登って
何かを夢中で取っている
何を取っているの?
思わず私がそう問い掛けると
女の子は秘密を見られた顔をして
突然姿を消してしまう
木の下に ....
〇一日目
お盆には帰ってくる? と聞けば
コロナ次第かな、と答える息子
じゃあね、と手を振る
新幹線の改札口
人はこんなにもさみしくなれる
胃袋までさみしさでいっぱい
白薔薇
花言 ....
とどまる 1
{引用=ここに
とどまっていると
裁かれる
変化のない停滞に見えて
それは罪であると
見做される}
とどまる 2
{引用=ここになんとか
と ....
微睡む窓から
静かな私が飛びたつ
静かさに沿うかぎり
どこまでも遠くまで飛んでゆける
さえずりや
せせらぎや
さざめきや
ざわめきや
を 内包しつつも
静かさは静かさのままで
....
声と声が木霊する街角で
チョークを引っ張り
路上に描かれていく線と線
子供はガッタンゴトンと身を揺らし
列車はゆっくり出発する
世界が微睡む午睡時、
すべては無垢に浸されて
....
世界の端っこで
瓦礫にくるまれた
十代の残滓を
山道に捨てられた
切り裂かれたタイヤの
あちこちに散乱した破片を
白紙のノートを
汚すことはもう出来ない
指先のみで
脳味 ....
あなむにしす αναμνήσεις
すべて無くしてしまった
その記憶だけが積もって
ふたりはひとつになって
ひとつはみんなになって
そんな頃のあなむにしす
....
双つの矢が
雨にまぎれ 落ちてくる
見るものの影を
激しくはためかせながら
夜から朝
残る風の門
片目だけの雨
手のひらの雨
はためくものがうずくま ....
気づいたら
こうしてインターネットの宇宙に
言葉を蝶々の折り紙にして
息を吹きかけて飛ばしている
私がいた
だけど
表現の自由が無限に与えられてるなんて
あり得ない
けして
....
空を見上げると
青い悩みが売れてしまう
それは誰かが路地裏で
書いた絵のような話
君の重さを知りたくて
レースのカーテンを抱いた
微熱を出したみたいで
裾が千切れて叫んだ
不器用な針と ....
落ちこぼれの僕たちは、硝子瓶の外へこぼれ落ちてしまおうぜ。
美しいだけの硝子瓶の外へ、泥臭いトレッキングブーツを履いて。
幾重もの黄昏が
共鳴する中を歩いている
自分の黄昏
知っている誰かの黄昏
あるいは知らない誰かの黄昏
数知れぬ意識の黄昏
黄昏てゆくのは今日という日
あるいはなんらかの時世
あるい ....
波が
たちあらわれる
形たちが 昏ませる
黄色いセーターの
喜劇的なふくらみ
勇敢な笑い
あの時の光
花弁がひらくように
ゆ ....
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