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部屋に椅子がある
隣に体育座りをした母がある
雲が青さを通り越して
手をとり椅子に導く、空は久しぶりね


玄関に並んだ靴
妻は夕食を作り、息子はトミカに夢中
1のつぎの靴 ....


夕空と海の混じり合うそのすきまに
すべり込むうみどりの影のさみしさ
赤い包みのキャンディーをポケットから取り出すと
口に入れる間もなく
風景に溶ける




”ちかみちは ....
サァサいよいよはじまるよ
秋の大綱挽きまつり
山が勝てば豊年満作海が勝てば大漁旗
ヤムイモウコンシロウリマコモ
マグロにハマチ、ミノカサゴ

スイサァースイサァースイサァサァー

サシ ....
アラームの鳴る朝はいつもくびまで浸り
電柱をたよりにからだをとどける

夜中に
空気を入れかえようと
窓をあけ
寄せる金木犀のかおりに
みちていく
いつもの朝から
今日は
水平線ま ....
そうなろう
そうなりつづけよう
来年もそこにいよう
また台風が先に来て
それでも豪雨のやむ一瞬に
背番号がなくても
立つ場所があるなら

星から降る雨が流れて
やみまに観測する一線を ....
老婆の隣をただひたすら歩く
そんな仕事があった
老婆はたいへんに知恵のある人で
そのため一階のおじいさんにとても恨まれていた
老婆にはパトロンがいて
足回りの綺麗な車が
いつも停まっていた ....
昼から雨が降るみたいなん
でもちゃんと
てるてるぼーず
つっといたし
今年の夏は本当に暑くて
公園にも行けなかったから
今夜の夏祭りだけは
出店がでるよ
絶対や
最近の出店は
 ....
一斉に発信される音を
受信したラジカセで変換し流す音楽が

ドアも窓もない部屋で飽和していき
ベッドの上で潰れそうになるから

カセットテープに録音してはつめを折って
レターパックへ入れても宛先が ....
帰路は
新月にしずむやみのはし
こと座に一服

リリ、

(きこえた?
(ああ、きこえたよ
(鳴いてるのかな
(鳴いてるのかもしれないね

夏を野辺送りし秋がやってくる

猫 ....
改札を抜けて、特急へ、準急へ
各駅へ
すみやかにゆきわたる
(還る)

のびていくかげぼうしの
澄んだ鼓膜をとおり

(低いファの音がぼーん、と)
ぬぐってもぬぐっても
幾度も響く ....
1)癌と診断された彼女の
ふわふわと帰路に着く足取り
おかあさんにあるがまま言ったらと
想像して
抱えることを選ぶ

2)
親の下の世話をし、食事を食べさせ
洗濯機をまわし
エアコン ....
つづら坂のてっぺんが赤く燃えて
曲がり角のそれぞれに暗がりが生まれる
それがくねくねと蛇のように眼下の町へ
影法師が一組
手前の角の煙草屋の暗がりからあらわれて
穏やかな夕日にそっと目を ....
黒い布で顔を覆い隠した女が
まるみをおびた重いはらをかばいながら
前から、後ろから早足で通り過ぎる人々に
おびえるような足取りで市場を歩いている
ときおり女の腰のあたりにぶつかっては
”ベバ ....
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