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時は切れ目のない波
凪いだ海の
ゆるやかなうねりのいただきの
光るところから
暗い窪みまで
隈なく見つめていた
幼い日

小学校でいやなことがあると
深くうねる波の底に下って
浮か ....
小路の角を曲がると
家並みの
屋根の傾きの下で
格子戸が眼をつむっている

晴れても明るくならない
印画の街
軒と軒とが接するように
建てこんでいる

植物は軒下におかれた
盆栽 ....
青紫の花びらに
涙がひとつ
めしべの奥の
白い洞窟に
隠されているのは
新しいいのちが
育まれる仕組み

蜂がはいっていく
蟻が群をなしてはいっていく
ぼくもはいっていく
男は虫 ....
異星人の女
ぼくより背が高い
コトバをしゃべる
ぼくを見て笑顔を作る
食事にさそう
女はよく食べる
ベッドに行く
ちゃんと乳房がある
触ると反応する
「チキュウジンニ
ニテイルワネ ....
薄桃色の貝殻
蓋を開けるまで
固く身を閉じている
指の先がはいらない
貝の根元の
薄い毛を撫でる
息をふきかける
声をかける
唇で吸う
貝から液がもれる
蓋が少し開く
指であける ....
ぼくは沸騰するスープである
ジャガイモが崩れていく
ぼくは真っ赤に茹で上がる毛蟹である
苦しさに前脚を伸ばして泡を吹く

底から熱せられていて
二重の蓋がかぶさる
重くてもちあがらないで ....
地上で使った資料の多くを海の藻屑にする



書斎は浅い海の底
侵食された岩の本棚に
小さな貝が貼りつく
整理された書斎には
イソギンチャクや
蛸や珊瑚が棲みつく
海面 ....
笑うと金語楼になると
細くなった母の目を
指さしながら父が笑う
明るいさざ波が立って
子どもたちの顔まで
福笑いの目になる
母が笑う日は少ないが
その笑顔はぼくの
胸の引き出しにある
 ....
夏の朝
海浜へ続く道
サンダルと
ランニングシャツで歩く
道端に月見草が揺れる

雲が盛り上がっていく
形が何かに似ている


腕がのびて
腰がひろがって
口が開いて
何 ....
子どものころに左手を切った
人差し指と親指の間から掌の中央にむけて
傷口から桃色の肉が見える
手を動かすと痛い

消毒するために
ヨードチンキを垂らす
滲みて痛くて
畳の上を海苔巻きに ....
雲を帽子に四人の巨人が
千住の街に立っている
頚に銀色のネクタイをつけて
黒い服を着ている

ぼくが手をふると
こちらをみおろす
狭い路地に入っても
のぞいてくれる

走る電車の窓 ....
雨の一粒ひとつぶは
空気を孕んでいて
引力にひきよせられて落ちるときに
真ん中に窪みができる

屋根から
下がる糸の鏡に
することもない子どものものおもいが
写しとられる

傘から ....
あるけるけれど
おぶってちょうだいと
おかあさんに
おねがいしたの

いいわよといって
おかあさんは
おぶいひもをだして
せおってくれた

秋の日よりも
あたたかい
おおきなせ ....
ソファーの模様が動く
ぼくは向かいのソファに座って人を待っている
周囲を見ても
動かしているものはない
中に軟体動物でも潜んでいるのだろうか
いくら見つめなおしても
模様が左右に動く
ソ ....
坂の上で微笑んでいる雲に
吸いこまれそうになる
たどりつくには早すぎる気もするが
そこが頂上だろうか

登りきると
目の前に下り坂
正面にさらに険しいのぼり坂
その上にある四国の形をし ....
胎児

鰓で呼吸していました
母が引越しのための交渉している
子宮の中が狭苦しくなったので
ぼくはからだを硬くしました

誕生

はじめて空気が
喉をとおったとき
胸が裂ける痛み ....
コトバになる前の液体が
血管のように
からだじゅうをめぐって
指のさきからしみでる

溶けているのは
うれしい
かなしい
すき
きらい
うつくしい
きたない
そして
点滅する ....
小学校の修学旅行で
男子は三つの班に分かれる
クラスのほとんどがいずれかに手を挙げたが
ぼくはどの班に入っていいかわからない

先生が人数を確認していく
「男子がひとり足りないわ」
それ ....
朝起きて具合が悪いといったら
「休みなさい」
と母がいう
ぼくよりいつも遅く出かける父は
今日は会社に行ってすでにいない

うまくいった
とぼくはおもった
普段なら熱をはかられて
「 ....
小学校から帰ったぼくに
「今夜はお母さんの店で夕食だぞ」
と微笑みながら次兄がいう
長兄が帰ってきたところで
兄弟三人で冬の夕方の千住の町を
母の店に向かった

今夜は母と一緒の夕食だ
 ....
北大路京介さんの殿岡秀秋さんおすすめリスト(20)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
時の高速回転機- 殿岡秀秋自由詩913-3-1
路に記憶がある- 殿岡秀秋自由詩1012-12-16
朝顔の顔- 殿岡秀秋自由詩912-9-2
未知の人- 殿岡秀秋自由詩11+12-4-15
貝にささやく- 殿岡秀秋自由詩612-4-1
二重蓋の圧力鍋- 殿岡秀秋自由詩912-3-15
海底の書斎- 殿岡秀秋自由詩1112-2-15
母の笑顔- 殿岡秀秋自由詩1112-2-1
雲の人- 殿岡秀秋自由詩612-1-17
終りから射す光- 殿岡秀秋自由詩711-11-14
お化け煙突- 殿岡秀秋自由詩911-9-15
雨の溜め息- 殿岡秀秋自由詩711-8-15
秋の日のぬくもり- 殿岡秀秋自由詩411-8-1
手の届く所に星の光はある- 殿岡秀秋自由詩211-7-15
コトバの山- 殿岡秀秋自由詩511-7-2
呼吸期- 殿岡秀秋自由詩811-1-18
記憶の小道- 殿岡秀秋自由詩710-12-20
お化けになりたい- 殿岡秀秋自由詩910-2-28
長い休み- 殿岡秀秋自由詩1209-9-2
冷えたカレーライス- 殿岡秀秋自由詩809-6-3

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