手の届く所に星の光はある
殿岡秀秋

ソファーの模様が動く
ぼくは向かいのソファに座って人を待っている
周囲を見ても
動かしているものはない
中に軟体動物でも潜んでいるのだろうか
いくら見つめなおしても
模様が左右に動く
ソファが歩くわけではない
模様だけが
鮮やかな毛虫のように

ぼくの目の錯覚なのだろうか

中学校の校庭で生徒を並ばせて校長の長話
秋の空をみると
銀色に光るカプセルのようなものが
小刻みにうごく
飛行機雲がないので
ジェット機ではない
プロペラが見えないので
へリコプターではない
では何か
隣の男子に声をかけようかとおもうが
周囲を教師が監視している
いったいなんだろう
秋の空に銀色のカブセルが
移動していく

正体のわからないものが平然と動いている

房総半島の空を
雲がものすごい勢いで飛んでいく
昭和三十五年の秋のこと
たくさんの雲が次々と流れていく
気象現象のひとつかとおもったが
その後
激しく流れる雲の群を見たことがない

みんなが観ているのにだれも不思議がらない

知床半島の星座鑑賞ツアー
大きな携帯電灯で
夜空を照らし
ここがカシオペア座
ここがオリオン座とガイドが照らす
みんなで
天然のプラネタリウムを楽しんだが
後で不思議に感じた
どうして星まで
電灯の光が届いたのか

星は手の届く所にある







自由詩 手の届く所に星の光はある Copyright 殿岡秀秋 2011-07-15 06:20:41
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