雨粒が地面にゆっくりと落下していて
そのシズクに写る果てない未来は
僕をどうしようもなく打ちのめした
一?でも踏み込む事によって現実が駆動していく
刹那程の距離でも僕等は踏み込めないんだ
本 ....
ゴトっと落としたエレクトリックギターで
緩んでさえぎられた肩掛けに
白く鳴った譜面に気づかなかった
流れる視線をした瞳
長方形のシングルジャケットたちが脳裏に
並ぶ 年内に必ず
オリコ ....
秋が呼吸を拒み、冬が明けた
硝子質の夜の底に星明りが反射する
手を伸ばせば届くような気がした
夜の底を 垣間見たような気がした
全ては傲慢な錯覚で
明けぬ夜がないのと同じように
夜を見 ....
溺れたければ、どうぞ?
初めて笑った日のことを覚えてるよ
白い肌より白い包帯に血が滲んでた
君の無感動な眼差しに背筋は寒くなったけれど
君はたわいもないことを喋りは ....
そばにいつも近く
あるものは何だろうかと
声に向かう
手の内に知りたい
たどるほどに温もりを帯び
そしてやがて熱と冷たさ
熱さと熱 温もりに
全体が早まっていく
十字の開いた二本と ....
そのレースで彼は亡くなった
何かいつもと変わった規則をひとり、
実行しているかのように
静かなポツネンとした顔見せの並びであった
前のレースまではきれいな三分戦が続いていた ....
遠い空とつながったきみが
小さな点になる
それは消失してしまいそうな
さびしい孤独であるのに
ふしぎな水色に輝いている
逆さまから立ち上がるときのきみは
やさしい速度でやってくる
淡 ....
秋の日に桜の枝を締め殺す
王冠が水に溶けて
変なの! 変なの!
明日のない海の、揺れの
静かに氷が焼け 氷柱が身体の芯に
首傾げる山脈
あなたの願いは叶うように出来てい ....
オヤマアなんと穿ったご意見
私の領域の十も上を行く
懇意丁寧なご親切が
そこまであなたを貶めたのですね
アラマアなんと尊大な知識
荒野の海を跨いだ御袴
少々糊のきつい紋切を
拒む事も ....
真新しいクレパスの
いっぽん、いっぽんに
なまえを書いてゆく
きみのなまえだ
先端恐怖症の妻は
体育着の胸に
名札を縫いつけてゆく
今日は調子がいいの、と言って
慈しみの雨が屋 ....
聴力を失ったDJフランキー・ワイルドは
視覚できる振幅を音楽に換えた
超音波は直進性に優れており
音響の異なった物質間の境界面で反射がおこる
受信までの時間を元に物質の位置を計算できる
反射 ....
書いて逆らうことを止め
暫く闇に流されてみる
空白は私を包んで
静かに冷える
蓄光時計は
カウントする
ゼロ−ワン、
光や熱の胎内で
確かに私たちは始まったが
彼 ....
ハシブトガラスのジョージが死んだ
浄瑠璃町の舗道の上に
骨の折れたこうもり傘みたいに
貼りついていた
アオサギのジミーが言った
南の島のまがいものの空に焦がれて
旅行社の馬 ....
僕がみつめるひとはそっぽを向いて
僕をみつめるひとと目を合わせずに
交差点ですれ違いゆくお互いの間にはいつも
この手に触れ得ぬ、宙に浮いた
空気の破れ目がある
立ち止まり ....
工場長が、君の次の休みは火曜日です。と告げる。
俺はラッキーストライクの箱を開けて足りるかな、足りるか。と煙草の残量を確認する。
新規メール作成のボタンを押して「さようなら。」とだけ打って ....
稲妻が光って轟きが来る
光った時もうその下では絶命してるんだ
じゃあ向こうから聞こえてくるのはいったい何なんだ
死んだ後に聞こえてくる音はどこから
電気の光が織り成す出来あいの世界で
....
若さという加速が無くなった時
人は自分の未完成の部分を知る
完成した部分と
未完成とのアンバランスによって
アナタという人格はきしみ始める
無謀という名のレバーを引いて
空 ....
あなたが私を食べ散らかして
先生に怒られた
骨や皮や肉片までそこらに散乱、
そして何より血液が汚らしく零れていて
私が望んだことなのだから、別にあなたは悪くないのに、
先生はお行儀が悪いと言 ....
三日後にわたしは
三十三年間着ていたわたしを脱いで
風の衣を着るだろう
その時世界の何処かに響く
あの産声が
聞こえて来る
その時空から降る
透けた掌と差しのべるこ ....
「人は」とか
「人間は」なんて
平気で口にするあなたはいなくなってしまえ
みんな同じことや違うことを言ったり書いたり歌ったりして
その度に軽くなっていく言葉は
私を見限る
私が見限 ....
身体の中で潮騒を飼っている
辞書はそれを焦燥や憂鬱や歓喜などというが
潮騒はそんなにもシュハリ、と
姿を変えるものだろうか。
生まれて初めての始発に乗った。
どうしてだろうかとは考え ....
もう ラヴソングも描けないのさ
日の入りが終わった天空の
マゼンタがきれいでね
良い絵が描けた後の
水入れみたいでね
そんなことを伝える人も居ないのさ
眼球の奥でつくられる
とろんと ....
回転する空から
星がこぼれた夜
間違って少し失って
傷口がまた開いて
どうして人は
手を伸ばしても星は掴めないのに
大切な人の傷口に
ナイフを突き立てることはできるんだろう
....
ましろい部屋の空間で
宙に浮いたペンが
血と涙の混じった文字をノートに綴る
開いた窓を仰いだ神保町の曇り空から
誰かの涙がひとつ、落ちて来た。
ブルーのタイツの傷跡に
流星のようなひかりが宿る
夢に見た女の子のうなじに触れる
超新星爆発、
その スカートのなか見せてよ
まつげに触れると空気が震え
清潔すぎる白いブラウスもゆ ....
君と僕の
柔らかすぎるところは
交わりやすくて
忘れているわけじゃないけれど
柔らかすぎるがゆえに
止まることができなくて
傷ついたと言われるまで
君に言葉を投げてしまう
....
青空に向かうクレーンが指し示す方向に
ハンドルを切りながら
その造形の美しさに目を奪われる
一瞬
アクセルを踏み込むと滑らかに
あまりにも滑らかに加速していく車
陸橋の上り坂をカタ ....
午前四時五十七分
うつくしくひかりに濡れた朝のなか
しっとりと艶やかな群青に紺碧にきんいろのそらのなかを
あなたはおちてきました
たったひとり
東京は潰滅しました
炎を ....
偶然そこを通りがかった
空気の分子を押し退けて
鉄の日除けと私の肩は触れ合った
思いがけない邂逅に
声をあげ 日除けは歌う
それは初めての声 初めての歌
これに応えて 肩も歌う
それ ....
くしゃみをひとつする、と
私たちは地球儀から滑落して空に溺れる
あの日グラウンドから送った影は
手をつないだまま鉄塔に引っかかっていて
捨てられたビニールのレインコートのようだった
バス ....
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