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空をさす小枝のような
父の指に
赤とんぼがとまる
お父さん
声をかけると
赤とんぼを残して
父は飛んでいってしまった
驚かせるつもりなんてなかった
いい年をして、と
笑われるか ....
 
話す声が小さくなっていく、朝
きみは一冊の
ノートになった

軽くなった身体をめくって
話の続きを書く
これからは大切なことも
大切、とは少し違うことも
こうしなければきみに届か ....
 
 
鳥として生まれ
鳥として逝く
その間にいくつかの
鳥ではないものがある

車の通り過ぎていく音を
人の小さな話し声を
洗濯物が風に揺れて触れ合う姿を
幸せと同等のものが包み ....
 
 
夜になると
鳥は空を飛ぶことを諦め
自らの隙間を飛ぶ

高い建物の立ち並ぶ様子が
都会、と呼ばれるように
鳥は鳥の言葉で
空を埋めていってしまう

知らないことは罪ではな ....
 
 
海賊が泣いていた
アスファルトの水たまりを見て
海を思い出していたのだろう

海の歌を歌ってほしいと言うので
何曲か歌った
関係ない歌もいくつかあったけれど
気づかれることは ....
 
 
男の人が白い塀に寄りかかってる
ぼんやりした格好で
衣服には模様のようなものがついている
何をしているのか聞くと
誰かの夢の中なので勝手に動くことができないんです
と言う
かわ ....
歯ブラシを持って
弟がどこまでも走っていく
小さいころから助走をつけないと
歯磨きのできない子だった
誰よりも美しい
世界で一番の助走だと思った
最近人の目を見て話ができるようになった ....
時計は空を飛んだ
時間のことなどすっかり忘れて

町工場の青い屋根と
遊園地の小さな乗り物と
チャペルへと向かう花嫁が見えた
風景はずっと続いているようだった

やがて良い感じのする原 ....
 
 
瞬きをすると虹が溢れてしまう目があるので
笑うと発音しないPを吐いてしまう口があるので
まだ誰にも褒められたことのない君が
冷蔵庫に自分の耳を並べている

僕は機関車と同じ匂いの ....
指専用のバス停に
思い思いの格好で指が並んでいる
やがて指専用のバスがくると
指たちは順番に乗り込んでいく
おそらく指にしか
行けないところがあるのだ
慰めが必要だったのは
本当は誰だっ ....
乾電池が足りない
と昨夜寝言を言ったあなたは
夢の中で久しぶりに
何を作っていたのだろう

今日は朝から雪が降ってる
あなたの故郷のように
たくさんではないけれど

もう誰も
あな ....
薄い網戸の向こう
何かの割れる音がする
今日は朝から寂しいものが降っているから
話しかけるみたいに一日を生きたい

消えていくシャーペン工場で作られた最後の一本が
同じ価格で店頭に並ぶ ....
どこまでも伸びていく高層ビル
の死体が落ちていた
凶器の不完全な空が
垂直に突き刺さっていた

その空は途切れ途切れに
けれど果てしなく広がっている
という噂話を
人々はこよなく愛 ....
妻が平日に東京へ行くことになった。
友だちが故郷の鹿児島から仕事の都合でこちらに来るので会いに行くということだった。
ほぼ十年ぶりの再会だそうだ。
鹿児島から東京に出てきて、僕と結婚し、千葉に引 ....
 
夜明け前の校庭で
父が賞状を受け取る練習をしている
もう賞状なんて
誰からももらえるはずないのに
ひとつひとつの段取りを
生真面目に確認している
毎日この時間になると
不自由になっ ....
父の髭を剃る
一週間たった柔らかいのを
電気で剃るのは難しい
首など歯のあたりにくい所は
よく伸びる皮をひっぱて剃っていく

その薄くなった皮膚の下に
赤くて細い血管が透けて見える
こ ....
手すりにつかまる
手すりのある国に生まれて
偶然とか必然とか
都合のよい言葉で
意識が今ここにある
手すりに指紋をつけた日があり
手すりの指紋を消した日がある
好んで手すりの話をしたこと ....
自転車はその肢体を空気の隅々まで伸ばし
僕らのささやかな会話は言葉を放棄して
水の海になってしまった
沖へとゆっくりこぎだして行く
すでに失ったペダルを懸命に踏みながら

陸のいたる所では ....
 
二人で大好きな
カニの話をした
 
その人はカニを食べるのが好きで
ぼくは見るのが好きだった
 
その間
大切なものに形はない
なんて嘘をつく必要はなかった
 
明日お嫁に行 ....
てのひらが
形を覚えている
包み込むと
うまくおさまらないので
足りないのだと気づく

これで消しゴムを買いなさい
少年は言いつけどおり
薄暗い文具屋で
できるだけ沢山の
消しゴム ....
部長室にはいつも
風が吹いてる
日あたりのよいところで
書類の端がめくれている
窓を開けているのは
たぶん部長さんだと思う

机の上で
ピストルが少し色あせてる
微笑みながら毎日 ....
 
ピッチャーの投げたボールが
輪郭をあやふやにして
雲の形になり

やがてひつじになって
待ち侘びていたバッターと
いっしょに頁から退場していく

指が擦り切れるまでめくり続け
 ....
バス停の近くで生まれ
バスを見て育った
バスを見ていないときは
他のものを見て過ごした
見たいものも
見たくないものもあった
初めての乗り物もバスだった
お気に入りのポシェットを持って
 ....
少し大きな動物が
足元に横たわってる
景色にあるどの線にも
斜めになって
昨日からの続きのように
滑らかな呼吸をしている
その鼻先から
しばらく行ったところを
とうがらし売りの少女が
 ....
 
 
まだ夜の明けないころ
街は少し壊れた
機械の匂いがする
昨夜からの断続的に降る雨が
いたるところ電柱にも
あたっている
いくつかの窓の中には
ささやかな抵抗と
使い古された ....
ブランコに乗って何度も旅をしたね反抗期の君と僕とで


ジャングルジムの骨組みの向こうに君の悲しい生家が見えてる


シーソーしながら語りあった夢の驚くほどあっけない軽さ


愛 ....
 
 
あまりに静かなので
どうしたものか
耳を澄ますと自分が
階段になっていることがわかる
踊り場には
温かい春の光が落ちて
多分そのあたりに
思い出はあるのかもしれない
遠くで ....
晴れた日の
親戚のように
父と二人並んで
日あたりの良い窓際
懐かしいことや
懐かしくないことを
とりとめもなく話し
毎日小さく丸くなる父は
明日はもっと
そうなんだろう
窓の ....
行方不明の洗濯機が二番線のホームで脱水していた


振り返ると家電フロアーの主任が裏口でまだ手を振ってる


今日もレンジの平和を願う君が両手でものを温めている


「いつも利用する ....
 
 
冷蔵庫を背負う
重くて温かい
海のようなものが
背中から体の中へと
伝わってくる
夏休みを終えて
少したくましくなった
児童たちの声が
外の方から聞こえる
かつてもこうし ....
千波 一也さんのたもつさんおすすめリスト(224)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
赤とんぼ- たもつ自由詩2908-1-29
軽い身体- たもつ自由詩2108-1-28
鳥の間に- たもつ自由詩708-1-6
鳥の隙間- たもつ自由詩24*08-1-3
大晦日- たもつ自由詩1507-12-31
夢を見る人- たもつ自由詩1407-12-24
助走- たもつ自由詩907-12-23
準備- たもつ自由詩907-12-18
機関車とくじら- たもつ自由詩1307-12-16
窓ガラス- たもつ自由詩1207-12-12
スノードーム- たもつ自由詩1307-12-10
網戸- たもつ自由詩807-12-9
証拠- たもつ自由詩1207-12-7
今週、妻が東京に行きました- たもつ散文(批評 ...21*07-11-29
表彰- たもつ自由詩707-11-28
髭剃り- たもつ自由詩707-11-26
理由- たもつ自由詩407-11-18
会話- たもつ自由詩2207-11-15
予定- たもつ自由詩707-11-12
てのひらの少年- たもつ自由詩1007-11-8
ゴムを踏んでる- たもつ自由詩1307-11-5
パラパラ漫画- たもつ自由詩12+07-10-27
他のもの- たもつ自由詩2107-10-25
少し大きな動物- たもつ自由詩907-10-23
拝啓、君は元気ですか- たもつ自由詩36*07-10-11
公園- たもつ短歌507-10-6
返事- たもつ自由詩28*07-10-3
親戚の欠片- たもつ自由詩807-9-30
家電- たもつ短歌2107-9-22
台所- たもつ自由詩307-9-21

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