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春の日のベンチに腰かけ 
ひらひらと舞い落ちる 
桜の花びらを見ていた 

肩越しに吹き抜ける風が 
「 誰かの為に身を捨てる時
  そこに天はあらわれる 」 
と囁いていった 

 ....
半年振りで姉は嫁ぎ先の富山から 
5歳の{ルビ姪=めい}を連れて帰っていた 

家族{ルビ揃=そろ}って
僕の出版記念すき焼パーティーをするので 
今朝の出勤前母ちゃんに
「 今日は早めに ....
夜明け前の道を 
自らの高鳴る鼓動を胸に秘め
歩いていく 

川に架けられた橋をわたり 
駅の改札を抜けて 
無人の列車に乗り込む 

腰掛けると 
発車を告げるベルがホームに響く  ....
誰から声をかけられるでもなく 
彼は{ルビ日陰=ひかげ}を静かに歩む 
足元に人知れずなびく草の囁きを聞きながら 

上というわけでも 
下というわけでもなく 
{ルビ只=ただ} 彼は彼と ....
あのレストランの前を通り過ぎるといつも 
寂しげな人影が窓の向こうに立っている

何年も前、飲み会を終えた夜 
あなたはいつまでも電車を降りず 
家路に着こうとしていた私は仕方なく 

 ....
身に覚えのないことで
なぜか{ルビ矛先=ほこさき}はこちらに向いて
誰かの荷物を背負う夜 

自らの影を路面に引きずりながら
へなへなと歩いていると
影に一つの石ころが浮かぶ

理不尽 ....
春の陽射しに 
紅い花びらが開いてゆく 
美しさはあまりに{ルビ脆=もろ}く 
我がものとして抱き寄せられずに
私は長い間眺めていた

今まで「手に入れたもの」はあったろうか 
遠い真夏 ....
少女は高い{ルビ椅子=いす}に上ろうとしている 
小さいお尻をどっかり下ろすと 
食卓には色とりどりのご馳走とデザートが並んでいる 

食べ終えると飽きてしまう少女は 
物足りず他の何かをき ....
団地の掲示板に 
吊り下げられたままの 
忘れ物の手袋 

歩道に
転がったままの
棄てられた長靴 

{ルビ棚=たな}に放りこまれたまま
ガラスケースの中に座っている
うす汚れた ....
{ルビ濁=にご}った泡水が浅く流れるどぶ川に
汚れたぼろぞうきんが一枚 
くしゃっと丸まったまま{ルビ棄=す}てられていた 

ある時は
春の日が射す暖かい路上を 
恋人に会いにゆく青年の ....
目の前に桜の老木が立っていた

土の下深くへと 
無数の根を張り巡らせ 

空へと伸びる
無数の枝を広げ 

( {ルビ薄曇=うすぐもり}の雲間から 白く光る日輪が覗いた

太い幹 ....
雨の降る仕事帰りの夜道
傘を差して歩く僕は
年の瀬に冷たい廊下でうつ伏せたまま
亡くなっていたお{ルビ爺=じい}さんの家の前を通り過ぎる

玄関に残る
表札に刻まれたお爺さんの名前  ....
    私は今まで
    気まぐれな風に吹かれるたびに
    力なく道に倒れていた

    だが、夢を追うということは
    眼前に漂う暗雲を
    光の剣で貫いて ....
よく晴れた日の午後
逃げ場の無い闘いに疲れた僕は 
ベッドに寝転がり
重い日常に汚れた翼を休めていた

ラジオのスイッチを入れると
君の{ルビ唄声=うたごえ}が流れていた 

窓の外に ....
( あさ )

おきてかおをあらってかがみをみて

「きょうも1にちがんばろう
 できのいいにんげんにならねば」

てにしたドライバーで
からだじゅうのねじをしめた 

こわばった ....
オリオン座が西の空に瞬く午前三時

部屋の中で独りの男が
机を照らすランプの明かりの下
白紙にペンを走らせる音 

時を忘れ
宛先の無い手紙を{ルビ綴=つづ}る深夜に
眠れる街の何処か ....
真夜中の部屋で独り
耳を澄ますと聞こえて来るピアノの音
沈黙の闇に 響く「雨だれ」

( ショパンの透き通った指は今夜も
( 鍵盤の上で音を{ルビ紡=つむ}いでいる

写真立ての中で肩を ....
二月の冷たい雨が降る午後
近所の喫茶店でお茶を飲みに
愛読書を鞄に入れ ビニール傘を差し
家の門を出て川沿いの道を歩いた 

川の流れる{ルビ辺=ほとり}の土に
一羽の{ルビ白鷺=しらさぎ ....
私が生まれるより前に
戦地に赴き病んで帰って来て間もなく
若い妻と二人の子供を残して世を去った
祖父の無念の想いがあった
 
私が生まれるより前に
借家の外に浮かぶ月を見上げて
寝息を立 ....
カレンダーを一枚めくり
二月の出かける日に ○ をつける

数秒瞳を閉じる間に過ぎてしまう
早足な{ルビ一月=ひとつき}の流れ

数日前話した八十過ぎの老婆の言葉

「 あんた三十歳? ....
夕暮れ
男は空を見ていた
世の{ルビ何処=どこ}にも{ルビ属=ぞく}さぬように
草原に独り立ちながら

{ルビ只=ただ} {ルビ暁=あかつき}色に染められた雲が
宵闇に流れて姿を消してゆく ....
玄関のドアを開くと
右手の壁に一枚の絵が{ルビ掛=か}かっていた

六十年前
I さんが新婚の頃に過ごした
緑の山に囲まれた海辺の村

二十年前
定年まであと一年を残して
急病で世を ....
{ルビ烏=からす}と{ルビ鳩=はと}は向き合い
静止したまま じっと {ルビ睨=にら}み合っていた

空から舞い降りた一羽の白鳥
両者の間に立ち{ルビ嘴=くちばし}を天に向け
広げた翼はそれ ....


昼休みの男子休憩室の扉を開くと
新婚三ヶ月のM君の後ろ姿は正座して
愛妻弁当を黙々と食べていた

「 おいしいかい?
  結婚してみて、どうよ・・・? 」

と買ってきたコンビ ....
{ルビ穏=おだや}かな初春の陽射しを{ルビ額=ひたい}にあびて
目を細め のんびりと自転車をこいでいた

狭い歩道の向こうから
杖をついたお{ルビ爺=じい}さんがびっこをひいて
ゆっくり ゆ ....
先輩が威勢良く{ルビ梯子=はしご}を駆け上がり
天井近くの狭い{ルビ頂=いただき}に腹を乗せ
{ルビ扇子=せんす}を指に挟んだ両手・両足を広げて

「 {ルビ鷹=たか}・・・! 」 

と ....
定食屋で
食後のお茶を飲んでいる友の後ろに掛かる
絵画の入った{ルビ額縁=がくぶち}に
向かいの壁上の「非常口」の光は透けて映り
緑の人が白い出口へと{ルビ駆=か}けている

友と語らいな ....
真夜中の浜辺に独り立つ
君の{ルビ傍=かたわ}らに透明な姿で{ルビ佇=たたず}む 詩 は
耳を澄ましている

繰り返される波の上から歩いて来る
夜明けの足音

君の胸から{ルビ拭=ぬぐ} ....
もう何年も前
遠い北国に{ルビ嫁=とつ}いだ姉が
新しい暮らしに疲れ{ルビ果=は}て
実家に帰っていた頃

日の射す窓辺に置かれた
白い植木鉢から緑の芽を出し
やがて赤い花を咲かせたシク ....
いつのまに
我が胸に吹き込んできた
風の{ルビ女=ひと}よ

君が踏みつけられた花を見て
傘をさしたまま立ち尽くし
ひび割れた心のすき間をほの青く光らせ
雨音に{ルビ滲=にじ}む心を痛め ....
千波 一也さんの服部 剛さんおすすめリスト(186)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
春の夢_- 服部 剛自由詩6*06-4-14
姉のまなざし_- 服部 剛自由詩18*06-4-7
始発列車- 服部 剛未詩・独白13*06-4-4
青年と老婆- 服部 剛自由詩6*06-3-18
朧な太陽_〜空の色_♯2〜- 服部 剛自由詩8*06-3-18
六地蔵- 服部 剛自由詩13*06-3-15
夕暮れの並木道- 服部 剛自由詩14*06-3-13
小景_〜父と娘〜- 服部 剛自由詩6+*06-3-10
空白の呼び声- 服部 剛自由詩16*06-3-8
ぼろぞうきんの春- 服部 剛自由詩18*06-3-3
木の幹に浮かぶ人影- 服部 剛自由詩10*06-2-27
光の滲む雨の夜道を- 服部 剛自由詩18*06-2-24
哀しみの夜に_〜僕を励ます十五年前の唄声〜- 服部 剛散文(批評 ...10*06-2-17
傷ついた翼で- 服部 剛自由詩10*06-2-16
「しゅうりずみ」- 服部 剛自由詩6*06-2-13
ある真夜中のポエジー(第二稿)_- 服部 剛自由詩10*06-2-12
夜想(第二稿)_- 服部 剛自由詩11*06-2-6
雨に濡れた白鷺- 服部 剛自由詩10*06-2-1
私が生まれる前に- 服部 剛自由詩18*06-2-1
幼年期の情景_〜アルバムの中に〜- 服部 剛自由詩8*06-1-31
夜風の唄- 服部 剛自由詩8*06-1-25
妻の背中- 服部 剛自由詩9*06-1-20
翼を広げた白鳥- 服部 剛自由詩7*06-1-17
「結婚」についての考察- 服部 剛自由詩15*06-1-17
そらにひびくこえ- 服部 剛自由詩8*06-1-15
穴の中_〜冬眠の詩〜- 服部 剛自由詩9*06-1-13
夜の車窓- 服部 剛自由詩5*06-1-10
明け方の碧- 服部 剛自由詩13*06-1-7
花を育てる_〜一年の計〜- 服部 剛自由詩13*06-1-2
夕暮れに咲く花- 服部 剛自由詩11*05-12-30

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