夜風の唄
服部 剛

夕暮れ
男は空を見ていた
世の何処どこにもぞくさぬように
草原に独り立ちながら

ただ あかつき色に染められた雲が
宵闇に流れて姿を消してゆく様を

夜風にでられる草々のうたを聞きながら
男は暗闇の草原に身をうずめる 

いつか逢った女が光を帯びた白い体で夜の草原に現れた

男は立ち上がり
光に包まれた顔を見つめると
赤い瞳に涙を浮かべていた

周囲の草々が身を躍らせてざわめく暗闇の中で
男は光を帯びた白い体をいつまでも抱きしめていた
夜風の唄に 幻のひとが 消えるまで 





自由詩 夜風の唄 Copyright 服部 剛 2006-01-25 20:50:00
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