春の夢 
服部 剛

春の日のベンチに腰かけ 
ひらひらと舞い落ちる 
桜の花びらを見ていた 

肩越しに吹き抜ける風が 
「 誰かの為に身を捨てる時
  そこに天はあらわれる 」 
と囁いていった 

散り始めた桜の
枝々の隙間の空色に
輝く太陽
陽射しに暖められ
ベンチに腰かける私は眠りに落ちる 

  〜

満開の桜並木のトンネルを抜けると 
草木一つ無い上り坂の向こうに 
青空の下 
禿鷹はげたかの頭の形で 
丘が盛り上がっていた 

低い頂上に 
十字架に架かる人が 
力なくこうべを垂れていた 

( 背後には地に照りつける太陽が高く昇り 

風の手のひらに握られた 
見えない綱に引かれて
首輪をしたせ犬の私は
上り坂を這ってゆく 

遠ざかる背後の並木道に 
舞う桜吹雪の向こうに並ぶ 
家族や友人達
不思議と幸せそうな顔で 
遠くから見送っている

十字架にかかった人の足元へと 
渇いたのどうるおす 
一滴の水を求めるように 
ひと足ずつ近づいてゆく 
痩せ犬の私を 








自由詩 春の夢  Copyright 服部 剛 2006-04-14 22:33:22
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