春の夢
服部 剛
春の日のベンチに腰かけ
ひらひらと舞い落ちる
桜の花びらを見ていた
肩越しに吹き抜ける風が
「 誰かの為に身を捨てる時
そこに天はあらわれる 」
と囁いていった
散り始めた桜の
枝々の隙間の空色に
輝く太陽
陽射しに暖められ
ベンチに腰かける私は眠りに落ちる
〜
満開の桜並木のトンネルを抜けると
草木一つ無い上り坂の向こうに
青空の下
禿鷹の頭の形で
丘が盛り上がっていた
低い頂上に
十字架に架かる人が
力なく頭を垂れていた
( 背後には地に照りつける太陽が高く昇り
風の手のひらに握られた
見えない綱に引かれて
首輪をした痩せ犬の私は
上り坂を這ってゆく
遠ざかる背後の並木道に
舞う桜吹雪の向こうに並ぶ
家族や友人達
不思議と幸せそうな顔で
遠くから見送っている
十字架にかかった人の足元へと
渇いた喉を潤す
一滴の水を求めるように
ひと足ずつ近づいてゆく
痩せ犬の私を