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雨があんまりたくさん降ったので
ひとつふたつと数えるのもあんまりだと
仕方なく濡れてみる

そうでなくとも独りは淋しく
雨雲は灰色の陰から
あれはきっと汗や涙に似たもので
此処は海に ....
塾の講師なんて仕事をしていると
子供の心に触れてしまうことがある

前に受け持っていた女子生徒が
授業中に突然飛び出して
二階のベランダから飛び降りようとした

「死んでやるー!」と何度 ....
待たなくても夜はきてしまうから
朝はどうしょうもなく待ち遠しい


眠れない


そんなことはもう
考えなくなりました


「アシタカ」というのは亀の名前なんですが
てっきりオ ....
泣くために悲しんだことがある


砂浜にかじりつくようにくいこんでいた白い貝は
まるで生きているみたいに艶やかな色をしていたから
指先で撫でたら深くもぐりこんで逃げてしまうような気がした
 ....
見ていられない手つきで
君が包丁をにぎるものだから
僕は目がはなせない

指の皮すれすれで切り出される
それはきっと食べ物なのだろうけど

目を皿にしても
そこにおいしく彩られることは ....
(その1 時計屋のおじさん)


裏通りにある時計屋のおじさんは、まるで手品師みたいに器用だ。

おじさんの大きな手からは想像もつかないような、ちいさな部品をちょこちょこといじると、さっきま ....
雪融けのせせらぎが
草木に沁み込む速さで伝わる春

ひらいた花のはなびらが
舞い散る中で見た空の
青さを呼吸するような夏を過ぎ

虫の声に名残匂わす
涼しさにはほんのりと憂いの秋が
 ....
ガラン ゴロン
缶入りドロップをふると
そんな音がする


家を飛び出したはずの僕が
すっかりぼろぼろの身体になって
そんなふうにまた転がり込んできたとき
せっかく作ってくれた料理を
 ....
光と水と二酸化炭素から
酸素と糖をつくりだす

ずっと前に教わった

植物は
自分が呼吸するための酸素と
成長するためのエネルギーを
自分でつくることができる

僕にもできるかな
 ....
兄、あるいは姉と呼ぶべき
生まれなかった命にむけて

もしかしたらこの時代は
貴方たちの手で変えられたかもしれないと
そんな期待を寄せるわたしは
我が侭だとわかっています

 ....
戸惑いがちな指先で
そっと書いた「の」の字たち

あの その

真っ直ぐ言えないことだから
くるりと曲がってしまうんだ

その あの

「僕の好きな君の
好きな僕でいさせて下 ....
子供のころは簡単だった
青いクレヨンで雲のかたちをくりぬけば
それが空だと言えたけど


いま僕が描こうとしてる
この空には青が足りない


たくさんのことを知ると
たくさんのこと ....
季節はずれの花粉のせいなのだと
説明する僕のことを

受話器のむこうで
君がくすくすと笑っている

きのう雨の中でけんかして
雨なのか涙なのかわからなく濡れたふたりが
いまはこうして傘 ....
幼い頃に覚えた童謡を口ずさんでみれば
なぜか悲しい気持ちがわいてきて
もしかしたら
うたの歌詞が悲しいのかもしれないと
確かめるように繰り返してしまう


夏と秋のさかいめは
きっ ....
膨らんでゆく不安を感じていた
知らない人とすれ違うたびに
増してゆく孤独があった

遠のいてゆく誰かの背中に
思いつく限りの名前を呼んで
立ち止まらせたいと思ったのは

それが優しさだ ....
九月
雨が多いのは毎年のことで
それはさしてめずらしいことでもない
のかもしれない

秋というにはまだ早く
ちょうど残暑という言葉があてはまる
そんな晴れの日も多い
九月


家 ....
となり街にある
パン屋のお兄さんはいつも笑っている


入り口の貼り紙には
「冷めないうちに食べてください」と書いてあって

お店のショーケースにもところどころに
「冷めないうちに食べ ....
「サンタマリア」

僕は神様の名前を
あなたしか知らないけれど
僕は神様の存在を
信じたことはありませんでした

「サンタマリア」

僕にも名前があるけれど
あなたは知って ....
ふと遠いところへ行きたくなる

通過電車に手をのばせば届きそうで届かない
本気で身を乗り出すと本当に連れ去られてしまうから
「危険ですから、黄色い線の内側までお下がりください」
というアナウ ....
台風が近づいてくるという
天気予報通りに降りだした雨に
慌てて部屋の窓を閉めました

(淋しさというものは
 そんなささいなところに隠れていて)

窓の外から聞こえてくる雨音を
半歩遠 ....
僕はきっと虫なのだと思うありふれた夜。

その理由はいくつかあるのだけど、つまりそれは虫であるはずもない僕の外見からは想像もつかない。たとえば横断歩道をわたろうとするとき、わき腹のあたりがむずむず ....
つくんと

ときおり胸で感じる痛みを
悲しみのせいだとは
思いたくないから、僕らは
うたおうとする

好きな歌を

思い出せないフレーズで
立ち止まってはいけないと
覚えてるとこ ....
七月の窓辺

夏色の羽をはばたかせて
揚羽蝶がひとり
庭に迷い込んできました

羽を持って生まれてきた生き物は
そんなふうに飛ぶのが
当然なのだというように

ゆらりと抱いた風をふ ....
ある日
自動ドアの前に立ったら

開かなかった

押しても引いても
やっぱり開かなかったので

慌てて君を呼んだ

ちっとも開いてくれないんだよと言いながら
二人並んで立ってみた ....
入院してる友達のために折ってるのと
その子はちょっと淋しそうに

鶴を折っていました

それを手伝おうと
わたしも折ったのですが
できあがった鶴の
羽を広げようとしたとき

その子 ....
父と別々の家に住むようになってから
ときどきは会いに行こうと決めていた

小さい頃から
一緒に暮らした記憶などなくて
なのに父は
僕との思い出話を聞かせようとする

うんうんと
僕が ....
目の前を何回か通り過ぎたと思ったら
いつのまにか腕の中にいた

陽だまりのなか
生まれた熱をくるむようにして

うっとりと瞳を閉じたのは僕の方だった

     
はっぱをめくればなめくじ

みんなにきらわれて
しおをまかれたりする

おまえなめくじ

うまれてからずっと
からだじゅうでないている

おれだっておなじ

みんなにきらわれて ....
母さん僕は
あなたの子供であることを何度
嫌味っぽく言ったかしれない

似ていると感じるほどに
それを振り払うような喧嘩を何度
繰り返したかしれない



そんな母が
「田舎に帰 ....
毎日たくさんのものが
あなたから生まれることを知っている
それは言葉であったり、声であったり、感情であったりする、けれど
それらはあなたの分身でしかないことも知っている
そのことをあ ....
tonpekepさんのベンジャミンさんおすすめリスト(31)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
雨があんまりたくさん降ったので- ベンジャ ...自由詩9*06-7-19
知らないことを知っている- ベンジャ ...自由詩42*06-2-6
この空に星は見えていますか?- ベンジャ ...自由詩9*05-10-30
砂浜で拾った貝殻はどこまでも沈んでいった- ベンジャ ...自由詩11+*05-10-24
まな板の上の恋- ベンジャ ...未詩・独白5*05-10-24
シリーズ「おじさんと僕」1- ベンジャ ...自由詩9*05-10-4
リレーする季節- ベンジャ ...自由詩11*05-10-3
缶入りドロップ- ベンジャ ...自由詩8*05-10-1
夜書いた詩も光合成をしている- ベンジャ ...自由詩6*05-9-29
生まれなかった命にむけて- ベンジャ ...自由詩20+*05-9-26
「の」の字- ベンジャ ...自由詩12*05-9-25
この空には青が足りない- ベンジャ ...自由詩17*05-9-24
僕はくしゃみをする- ベンジャ ...自由詩12*05-9-21
夏と秋のさかいめは、きっとこんな夕暮れ- ベンジャ ...自由詩14*05-9-16
スクランブル交差点の真中で- ベンジャ ...自由詩10*05-9-15
夏からの手紙- ベンジャ ...自由詩14*05-9-13
パン屋のお兄さんは、やわらかい笑顔をしている- ベンジャ ...自由詩12*05-9-11
神様の名前- ベンジャ ...自由詩6*05-9-8
夜の地下鉄は海の匂いがする- ベンジャ ...自由詩53*05-8-31
雨が止むのを待ってます- ベンジャ ...自由詩14*05-7-26
僕はきっと虫なのだと思うありふれた夜。- ベンジャ ...自由詩23*05-7-16
そうやってうたえばいい- ベンジャ ...自由詩17*05-7-14
揚羽蝶- ベンジャ ...自由詩10*05-7-13
自動ドアのこと- ベンジャ ...自由詩9*05-7-6
千羽鶴- ベンジャ ...自由詩68*05-7-3
会話- ベンジャ ...自由詩10*05-6-27
抱き猫- ベンジャ ...自由詩11*05-6-7
めくるめくなめくじ- ベンジャ ...自由詩37*05-6-2
始発に乗って母は田舎に帰る- ベンジャ ...未詩・独白9*05-5-31
あなたから生まれる- ベンジャ ...自由詩14*05-5-16

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