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朝が来る
不鮮明に蓋をして
パンを食べて
珈琲を入れて
普通のふりをして
何もかも分からないようにして
口は何も吐かず
文字が頭を流れていく
雲を掴んで啜って飲み
訳が分からなく ....
紫色の
声が出なくなったのは、
冷気に触れた安らかな眠り薬の価値を
あらためて知ってしまって苦しんで
その罰に身を委ねてしまいたくなった
あのとき突然に、だ。
胸の中 ....
悪魔がおった
まだ動ける洗濯機や朝日の凧や風に舞うはずれ馬券
潮溜まりでたゆたう割れた鏡の反射裡に
悪魔がおった
夢にも愛にも解決されない憎しみや
みなし子らが消えてしまう足波に ....
水泡ひとつ
コ|ヒ|カップの上にみる
向かい合う顔の間の空間は
隙間なく埋められている
水蒸気が凝結
水滴が付着したグラスには
水が鎮座する
口に運ばれるのはあまりに容易で
喉越し ....
かつてお酒の好きな詩人が
青い背広を着て旅に出ようと言った
夏の来るのを待つ短い ひと時
休日の真昼間
私の心はスーツケース持たず旅に出る
海もあった
太平洋の波の音に吹 ....
揺れる楕円がことばを塞ぐ
甘い香りと露出した果皮が目前に迫り、
獰猛な括れと若い膨らみが
荒い呼吸とともに 静寂を犯した
仮面を剥いだ匂いを指がなぞる
然も危険な場所を呼び覚ますように
....
1 また明日
また明日、と言って彼女は顔を伏せた。また明日、明日はいつくるのかと聞いたらまた明日なんだから明日来るに決まってるだろうと笑われたがここは明日が明日来るかわからない土地なのだ。みんな ....
布のヒツジは並んでる
一直線に並んでる
布のヒツジは横向いて
一直線に進んでる
白 茶 薄茶も隔てなく
規則正しく進んでる
布のヒツジは夢を見る
羊になる夢を見る
草原を駆け 草を ....
紺碧の空のもと
緑の{ルビ渓=たに}に分け入り
髪より細い糸を頼りに
ときめく胸を押さえ
銀鱗が舞い踊る
※
物事や心は常に無常、
けれども、
今には、
今の、
今がある、
※
向かい風、
飛び立とうとする飛行機の、
それは、逆方向から促す推進力、
必死に生きよ ....
マンションの壁面に宿った
真冬の枯木立あるいは
悩める左脳の血管造影画像
執拗な風雨に晒されても
コンクリートの平面に
蔦は日々を描き続ける
人の暮らしが届かない背中で
意識 ....
瞼の裏側で眠りの松明が燃え盛る
タップを踏む睡魔が天然色の幻へと誘う
大地を俯瞰すれば麒麟の群れが走り
文明は密林のように摩天楼を生やした
水曜日の波が大通りへと押し寄せる
チョビ髭を歪 ....
暗渠の遊歩道で
綺麗なタチアオイを見つけ
立ち止まる
>今日が見頃みたいだよね
シャッターにかけた指が止まる
驚いて振り返ると
柔らかな眼差しの老人が立っていた
>実 ....
ふわふわ 浮いてる、どこまでも 浮いてる
私は海の中、どこまでも透明に拡がっていく、
私は今、肯定している、否定している、うちが外を包む、
はい、は、いいえを肯定しているし、いいえ、 ....
ぎゅっとにぎった手のひらに伝わる金属の鎖の冷たさ
そっけない硬い木の座面
離してはだめだよ と降ってくる、声
靴底で蹴るとざらっとして土埃
膝で漕ぐたびに
行ったり来たり
ふりこはゆっくり ....
1
やさしいきみはあまやかな声の中に居た
水のせせらぎの癒しにも似た音色
きみは水で形成されたうつくしい水精(ナンフ)だった
ぼくはひとつの水槽の中に入るように きみのなかに熔けてゆ ....
ふと遠いところへ行きたくなる
通過電車に手をのばせば届きそうで届かない
本気で身を乗り出すと本当に連れ去られてしまうから
「危険ですから、黄色い線の内側までお下がりください」
というアナウ ....
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