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夕方まで盛んに降りしきっていた吹雪。部屋の床の上に転がっている、くしゃくしゃに丸められた、クズカゴの縁に跳ね返ってしまった。いくつもの紙クズ。それらに混じって、いつもよりもすこし早めに破り捨てた、今日 ....
夜の舟
櫂はいらない
ゆられているのは
こころのありか
星くずは
あかるく燃えながら
一瞬で消えてしまった
とても遠い闇が
触れるほど近くに落ちてくる
ここは宇宙の湊
願い ....
真夜中
ベランダに出て
こっそり小さな松の焚き火を作った
哀しいのか
ほっとしたのか分からない
いっそ雨が降ったら良かったのに
ひとり歩いて行く細い小路
遠くに雲を戴 ....
昨日、みぞれ交じりの雨が終日降り続き、積った湿雪はさらに重く
あたりを一面の白さに塗しつけている
どこからともなく、なけなしの高揚した気持ちが芽吹いてしまい
はずかしいくらいの言葉を書きなぐ ....
マガモがシベリアからやってきてはにぎやかに鳴いている
人造湖に多くの渡り鳥達が群れていた
赤い大きな橋のたもとにあった古い山小屋旅館は解体されて
長い年月に蓋がされた
昨日今日、ほぼ今年最 ....
夏が押し寄せてきた
ブルーのイメージ
ブルーだけど薄いブルー
暑さだけで考えればレッド
全体的に考えればブルー
夏は海というイメージ
青空というイメージ
ブルーで包まれている
....
夏の宵にサイレン聴いて
なくした痛みを思い出す
一度だけ開いた
僕の羽
飛べるわけでもないのにね
存在証明
頭に浮かんだワード
左 ....
君の耳にだけ寄せる波がある
その波に織り込まれた風を聴きながら
君は眠る
あるいは踊る
フォスフォラスが鏡に映れば
ヘスペラスになり
ヘスペラスが鏡に写れば
フォスフォラ ....
大きく膨らんだ乳房と
細く括れた腰と、
窪んで華奢な股間がある
女の人っていいな、素敵だな
髭も剃らなくていいし、
空しい自慰の後の罪悪感もない
夜な夜なエロ動画を観たり、
裸体を崇 ....
聞いたことがあるような言葉でしか人を誘えず
職業的な結婚、とか思って笑ったり
笑ったりしていると
幸せなの?と寄ってくる人々をひとり残らず張り倒す
池袋と渋谷の人混みの違いについて上手 ....
逃げ出したくて
吐いた嘘を
骨は知らない
抗いたくて
千切った縁を
骨は知らない
痛んで
悦んで
肉がくたびれていくのを
誤魔化して
宥めすかして
心がたるんでい ....
サイダー飲んで涙が出た
耳の不自由な彼は
音が見えた
と 言った
わたしには聞こえただけだった
目の不自由な彼女は
色が薫った
と 言った
わたしには見えただけだった
後ろめたくなかった
....
酷い痛みに涙するこの頃、己ごと荒れ模様となる日々に散々だと愚痴を吐くが改善は見込めぬまま自室は自堕落の様を模している
今はどうだっていい、耳鳴りが酷いのだから気が済むまで夢の中でもう一つの真夜中 ....
{引用=
青い水面に溶けこんでいる。眩暈。逆さまになったふたりの不定形。ぼくらの身体はまるで揺らめく塔のように、どこまでもながく伸びてゆくように、その揺らぎをなんども繰りかえす。それは途方もなく長い ....
夜をすぎて混ざりあった
イエローとピンク、
パステルカラーの朝が
たなびく空に滲む
満ちた潮の香りと
膨らんだワンピース
裸足になったキミは、ひとり
貝殻の残骸を数える
砂浜 ....
なみだ、
ぽろぽろと剥がれ落ちてゆく、
頑ななウロコの溶解、
あつい塩水が、
頬をつたうたび、
こころは、
飾らない、
まっさらな素裸になる、
なみだ、
かけがえのない、
....
歩んできた日々を
振り返る
一週間前に通り過ぎたばかりの
森の出口で道は消え失せている
歩んできた日々を
振り返る
あなたが遺した道が途切れてから
見知らぬ景色の中を彷徨 ....
サボテンとの別れ
身を切られるような痛み
きみとは何万語のことばを交わし
無言で見つめあったろう
きみはわたしの髭を
わたしはきみの棘を
お互い数え飽きなかった日々が
あえなく終わろ ....
ゆっくり上がって
ゆっくり下りる
破綻のない円を
描き続ける密室の中
あなたと向かい合った
あなたが指差す方向に
ひきつった笑顔を向けながら
まだ信じることが下手だったわ ....
朝から雨
雨はすき間だらけ
貴女へと降りそそぐ雨
雨傘の下の
雨漏り
或る足音を乱す雨
アルコールを和らげ
甘く染まり
悪童に遊ばれる雨
雨に出会うと ....
風景が霞むほどの雨のあと
水たまりには青空が映る
梅雨明けも近い
空を見れば
もう次の雨雲が控えていて
ころころと変わる空模様
そんな空の下を
こどもたちが
笑いながら走ってい ....
光の骨をなぞる指のことを もう思い出せない
言葉を思いかえすほどに
少しずつずれて嘘になってゆく
そのグラデーションをせめて美しく
夕映えに織り込んで
待っているうちに
身体は闇の鱗で ....
いかにもやはらかな
おくるみに包まれ
眠る赤子の真白き静かさ
もう逢わないわ
そう言う女の声音
記憶に深く刻まれた声、
相手を温たかく包み込む
少し低めのトーン帯び
も ....
{引用=たった一杯のカクテルに託した夢物語}{引用=月の流れのように見えたのは
私が酔っていたから
あなた自身の美しさを知らないあなたの
金糸雀の様な笑い声を
頭上高くに聞く}{引用=そのシル ....
{引用=
潤んでいる。日差し。君のその白い面持ち。夏のプールの青さを反映させながら、水面に浸かっている君の、まだ少しだけあどけなさを残した、その朱色のくちびる。水色の水鏡(みかがみ)にそっとくちづけ ....
よく冷えた琥珀のワイン
オイルサーディンで作った
新玉ねぎとトマトのサラダをつまみながら
扇風機で乾かす洗い髪
遅い梅雨の訪れ
濃すぎる緑の広さ
軽い頭痛におそわれ ....
ねえ、聞こえない?
空を見るとき空には全てがあるんだ
空白と、無を抱えて
あなたは、命を手掴みにして、
日陰に入れば、あなたは眠るだけ
それが、あなたの一生の、全て
空と、風と、眠り。
....
また 会いましょう
貴方はそうして立ち去っていきました
それは太陽が空を染め上げる夕暮れの時
それは月も登らない暗闇の時
貴方の姿は天使にも劣らない
純真な瞳はあらゆる悪意を払い除けるこ ....
旅立ちの朝
部屋が狭く感じる
キッチンテーブルに朝食
元気でね。仕事に行ってきます。と
母の書き置き
父の形見のシビックで裏通りを抜け
橋を渡り街を出る
ロサリオパークに車を停め ....
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