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雨は夜更けすぎに雪へと変わって
けっこう積もったな
雪かきが大変だ
ここでただはしゃぐかどんよりするかが
子供と大人の境目なのかな
ラジオで
大人になるっていうのは責任を持って生き ....
暗い駅のホームにてかじかんだ手で
自販機から買ったホットコーヒーを飲む
コーヒーとともに朝が費やされる
未来の広がりよりも
過去の堆積の方が圧倒的に大きく思えるのは
いつからだろうか ....
尖った月を見上げて
寒さに首をすくめた
枯れた街路樹の枝のスキマから
冬の夜空が広がる
凍った街灯がぼんやり
あなたの影を映す
鋭い月を背負って
あなた怪物みたい
優し ....
津波と圧死
どちらも絶望だ
愛が掠れそうだ
あれから重ねる歳月
ペテルギウスはそのままだ
あれがもうひとつの月になるまで
無力でも反芻していようか
津 ....
世界史の教科書を開く度に
沖のことを思い出した
ジャン=ジャック・ルソーの
肖像画に浮かぶ面影
「おやじ、涅槃で待っている」
その一言を残し
新宿の空に舞った
あれからも ....
人の振り見てわが振り黙認
犬も歩けば僕に当たる
猫の手は貸さない
窮鼠猫をなでる
馬の耳にウォークマン
一を聞いて十を疑う
石橋を叩いて逃げる
急がば回りくどい
言うは易く行うは彼 ....
帰るとは
ふりだしに戻ることであった
帰るとは
ひとりぼっちに戻ることであった
帰るとは
ひとりですること以外の選択肢を失うことであった
帰るとは
下校のチャイムの様に
何かの終わりを ....
駅のホームには
人々の疲労と希望が散らばっている
コンクリートの怒りによって
掃き清められた余りにも尊い人生たち
線路は狂おしく悲しみながら
大きないかづちを流している
....
夢の中でのひとときを
まるで本当のように感じる
海を力なしで泳いで
えらで呼吸しているみたいに
大人に反抗している
とにかく不真面目だと感じて
理不尽だと嘆いてみせる
泣き叫ぶことし ....
ゆりかごに横たわる
緑児の口元に
朝霧のように蟠る
言の葉の胎児たち
邪気の無いむずかりは
苛立ちか歯痒さか
未生の語彙が萌え出ようと
口蓋をくすぐっているのか
まだ意味を ....
消えてしまったよ
いくつも重なっていくうちに
それらは透明になって
ゆらいでいるのさ
何処かへ
風はすがた無くすすむ
僕の体温をひやしながら
斜めにばかり向かっていく
もうなん ....
晴れた空が広がっているのは
誰かが空に感謝を投げたから
海がいつまでも青いのは
誰かが海に感謝を流したから
「ありがとう」は持続する響き
どこまで遠くへ行っても決して衰えない
....
この時間
どこを歩いてみても
ラーメン屋はやっていない
乾燥したファミレスが灯りを灯しているだけで
目的のラーメンは何処にもない
彼らもきっと眠いのだろう
けれど
キツネ顔のチャルメ ....
明け方 季節を忘れた
冷え行く寒さの中で
冬は姿を消し
沈黙は空気を透明に染めた
朝 差し込む光を浴びて
言葉を忘れた
荒涼とした会話が砕かれ
鳥の鳴き声は静寂に木霊した
昼 ....
秋の長雨 落ち葉を濡らす
行き場のない 人知れず孤独な
悲しみの樹 痩せた枝先に
溜まる涙に宿った光 いくつも
泡沫になる 紅蓮の炎
静けさの夜に 音もなく揺らめく
穢れた肉を ....
澄み切った均衡の成熟のもとに
季節の気まぐれな散逸を防ぐため
私は薪を手に取り機械で割っていく
身体が材料の要点をつかみ
材料を機械の中心に割り当て
身体と材料と機械とが
美しい諧 ....
三年前にどうにも眠れなくて
三か月半の入院をした
そして今度はどうにも食べられなくなって
また入院する
そこはさまざまな動物が生息しているジャングルだが
静謐な時間が過ぎる場所
い ....
可能な限り赤い空に
ぼくらがおもう神様がいた
ライトバンが光を揺らして
とぼとぼとぼとぼ道を行く
いき違いばかりの愛しさが
まかり通ってからから言う
からからか ....
千丈の真白い蓬髪を髭を靡かせ
岩塔に立つ
眼差しは虚空を刺し
何かをさがす
碧い瞳は一点を捕らえ
杖を突き
衣を翼に変え
邪悪な濁りを追求する
捕らえた濁りを
雷とともに緑の珠に ....
ひとの心は果てしなく彷徨う
距離や時間を超えてゆく
痕跡にすぎないものに捉われ
憶測の触手をあすに伸ばしておののく
ときどき何かを削ぎ落しながら
変わってしまうことをおそれながらも
....
平穏の訪れを告げる
朝の鳥の声が鋭い
町は信頼により配置され
道路は情義によって接続され
酒はすべての裂け目を流れ
裂け目をきれいに架橋した
笑いはすべてのとげを包む
....
幾億粒の{ルビ眼=まなこ}が煌めく
夜の底
磁気に繋がり
流れを描き
脆く途切れ
こぼれる様を
見ているようで
見ていない
視線の針が交差する
決して出会うことはなく
跳ね返る ....
風が悲しいため息をつく
かき曇った空に 葉を落とした大木の影黒く
烏が鳴く 惨めな輝きを目に宿して
閉ざした扉は 誰かが叩くのを待っている
開き果てた花薄は 干からびて
土の中で ....
コインランドリーでだれかのパンツが回ってる
そういえばあいつもトランクス派だったよな
そんなこと思い出す夜
だれかが忘れたハンカチとトランクス(
またトランクスかよ)
をよけてどっかりと ....
朝は人生のようだ
ようやく始まってもすぐに
終わりの兆しで満たされる
佇む人の内側には
透明な水が鏡を作っている
朝の人間は水でできている
信号灯は消し忘れられ
薄明 ....
右手に枯花
左手に造花
冬の雨と骨
水の径のひとつの影
陽の無い朝
海を照らす目
壁に描かれた
絵に消える羽
遅い午後
遠いはばたき
原に散らばる
....
幼い頃には特別な場所が在った
古い石橋のたもとだとか
椿の大樹の根元だとか
石垣のちょっとした隙間など
ぼくはそんな処に
緑色や赤や青い水晶の欠片など綺麗な石を
お供え物のように隠した ....
孤独がコトリと音たてて
薄いオリオン座拝みます
恨みもせず
妬きもせず
孤独がコトリと音たてて
街が滲んで見えるのです
避けもせず
罵りもせず
孤独がコ ....
寝たきり老人が
家族の厄介者であることは
偽らざる真実だが
だからと言って
正月に
「よし子さん、ちょっと
そこら辺散歩してくるわ」
と家を出てったきり
5年間音信不通のじいさんが
....
蟹は、
何かの匂いを感じると、
月をぐるぐるまわるように、
先へ先へと急ぐ。
何かの匂い。
それは芳しい花の香りではない。
じっとりとした、
タールのような
油 ....
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