きりきりと張られた
暗い夜道
向かう音のない雨
片側だけで 聴く耳
もうひとつの行方
舗道を流れる
外灯の明りに
寄りすがり
つぶてに 落とされた 蛾
パタパタと 動か ....
いつしか子どもたちは
走り方を忘れていった
いつしか大人たちも
走らせ方を忘れていった
走ることの大切さよりも
走ることの危険さが
叫ばれるようになった
走ることによって
強くなっ ....
私はとても小さいので
海を見れば
海でいっぱいになってしまう
私はとても小さいので
空を見れば
空でいっぱいになってしまう
私はとても小さいので
風を匂えば
風で ....
家屋は言葉のように
優しく朽ち果てていた
時間があればそこかしこで
両親は笑顔を絶やさなかった
幸せな玄関ホール
その壁には今でも
兄と私の指紋が残されていて
静かに機械の匂いが ....
死ぬときはひとりでいたい
本当にひとりで
見守るものもなく
見捨てるものもなく
星が
星の瞬きが
気づかれないうちに黒く
黒く輝くように
かなしいとか
なみだとか
そんなも ....
やがて光が空から降りそそぎ
何かの形になると
それはわずかばかりの質感をもって
わたしたちの背中を押す
わたしたちは少し慌てたように
最初の一歩を踏み出す
でも決して
慌てていたわけでは ....
いつか訪れる日まで
答えを見つけられないないまま 生き彷徨う
何故この世に この地球に そして日本に
果てしない宇宙 一粒の丸い地球に 人として存在する
狭い とても狭いこの世で泣く ....
雨の音を聴きに
外に出ると
足あとがすべて
雨音で消えてしまうので
暗闇に映る
自分のそんざいを
たしかめたくて
あたりを眺めるけれど
なにひとつ
くっきり ....
雲の
静かな暴走
高い青へ青へ
ゆけない、わたしの上に
上空があって
午後、
稲穂というよりも、風だった
肌が痛いほどの
午後だった、秋だった
その風 ....
階段で滑って
尻を打つ
これで今年
三度目
お陰で
ケツの骨はこなごな
当分の間
悪いことできない
今日は
うつ伏せで寝る
りんが
突然死したら
だれか泣い ....
おとこは とても 悲しかったのです 。ぱそこんを みつづける ことが。 ぱそこんが 壊れて いくことが。 おとこは とても 嬉しかったのです 。 自分のてが こわれていくのが 。 おとこは はなしに ....
私はだんだん怠惰になる
輪郭が崩れて脂肪の塊
今、私は座るでもなく板張りの床をどろりと流れる液体となって
こちらから、あちらから、貴方向かってただよっている
崩壊すれすれ、破片だらけの私を ....
くもっていく
息をすればするほど
生きれば生きるほど
くもっていく
もう見えない
それが外か内かわからないけれど
気にしても仕方がない
もう見えない
途方にくれていたら
....
身体がモザイクに収められる
皮膚に塗られた薄黄色は
他の色と仲良く隣り合う
果てしなく続くグラデーション
世界を描くのに要らない色はない
強情な父にも歳月ふりかかり ポツリとつぶやく 弱音ひとこと
幼き日 父に連れられ行く公園 涼しき口笛 吹き進む道
口数の多き母にもうなずいて 男の生きざま 背で語る父
....
目をさますと
雪のように朝が降っていて
やさしい手順で
呼吸をおくる
あなたは
まだ
夢の体温で
きのう
よそゆきの服がでてくる詩を
読みました
愛とよ ....
幼い頃のひとり遊びの記憶は
影となって私に纏わり
誰かを愛そうとするたびに
耳元で呪文を投げかける
楓の色づく様を
薄の頭をゆらす様を
人と分かち合うやすらぎを ....
初秋の真夜中には
静かな鬼がひそんでいる
カラメルの味を口一杯にして
ゆっくり天井へと吹けば
セピアのまぁるいシャボン玉
鬼は大事そうに掌にのせ
凪に向かって謡うのだ
?天国での罪を今、 ....
眠りは当局から支給される
月にいちど注文をすることになっている
私は主に スタンダードな「白の眠り」を注文する
けれどいつもおなじ眠りというのも
あじけない気がするので
やはりスタンダードな ....
君は寝た振りが得意
わかっていてもウッカリ騙され
今朝もゴミ捨ては僕の役目
君は大人だから
分をわきまえているよね
僕はと言えば歳はくっても
燃える恋と燃えない恋の分別さえ
未だ ....
スカーフをひらつかせ彼女は
サングラスでキネマを見ようとしている
隣に座った男は 気がつくと
彼女のスカーフで涙を拭いていた
待望のロウドショウ
連帯の回顧嬢
サングラスは黒い彼女 ....
虹を渡すのは、雨の純真であるように
雨を放すのは、空の配慮であるように
空を廻すのは、星の熱情であるように
やさしき担いごとは満ちています
あなたを求めるわたし ....
ねぇ見て 不思議よね
こんなにちっちゃいのに
ちゃんと爪もあるのよ と
満ち足りた母親の顔で彼女は
小さなこぶしをを開いて見せる
アキアカネが飛び交う夕暮れに
生まれたから 茜
はい ....
パーティーは散々だった
おやすみ、のあいさつの方角へと
だいだい色のシロップが
ゆっくりと流れて
しだいに
粘性を増してゆく、
夜の
水の底で ゆうべ、まき散らされて
わたし ....
モノを置かないでください
と張り紙のあるところに
モノを置いた
そんな些細なことがきっかけで
そんな些細なことの積み重ねだったのだろう
「いつもの」
そう修飾された朝は
あっ ....
各駅停車の鉄道がはたらいている
ひとの数だけ
想いの数だけ
星空のなかで
各駅停車の鉄道がはたらいている
天文学には詳しくない僕たちだけれど
きれいだね
しあわせだね
このままでい ....
かくすためだけの
キャミソールに飽きて
このごろは いつも
はだかで過ごしている
夏はまだ
わたしの腰の高さで停滞している
午後4時をすぎると
夕凪に 夏がとけてゆく
....
ふと遠いところへ行きたくなる
通過電車に手をのばせば届きそうで届かない
本気で身を乗り出すと本当に連れ去られてしまうから
「危険ですから、黄色い線の内側までお下がりください」
というアナウ ....
あの頃、君に告げられなかったことを今
***
ねぇ、君
冷やし中華を誰よりも早く始めたいの、とはりきる君の姿が僕は好きだったんだ
ねぇ、君
扇風機の首フリに合わ ....
サフラン色の吐息をつめた
紙風船に
虚空の稚児は
灰色の笑みを浮かべている
道なりに歩いていると
小さな星がすすり泣いていたので
モザイク柄の
傘をさしてあげた
陰った景色は
....
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