きれいに舗装されていない夜道は
鳥目のわたしには危なっかしく
雨上がりであることも重なって
慣れた道なのにつまづいてしまう


自動販売機にコインを入れ
ミネラルウォーターのボタンを押す ....
抱えきれないほどに大きくなりたかった


青々としたたくさんの細長い波が視界を埋め尽くし
何処まで続いてるのかなんて見当も付かない
涼しい風が吹く頃には黄色く重い稲穂が頭を垂れ
やがて精米 ....
庭先に止まったアゲハチョウの羽には
感情の全てが閉じ込められている

そのざらざらとした声色が気持ちよくて
いつまでも肌をなぞっていてほしかった
淡い空にうろこ雲がほわりと浮かび
右目の向 ....
明後日の今頃には
きっとわたし、泣いてる

ハナキンなんて言葉が流行ったっけ
週末の空気はほこりっぽくて
ろ過された部分だけを吸い込もうと
口を無意識にぱくぱくとさせる

大嫌いなもの ....
暑さにうなだれている名も知らない花は
剥がれかけたマニキュアと同じ色をしていた

使われているひとつひとつの配色が
くっきりとしたものばかりなのは何故だろう
まぜこぜしないのがこの季節で
 ....
なぁ、オカア

子どもの頃から口癖みたいに
女の子はこれくらいできなあかん言うて
台所に立たせてたやろ
うちはあれがすごい嫌いで
何だかんだと理由をつけては逃げ出して
そういえばお弁当一 ....
夢に溺れた人がいた

夢に溺れた人は口を閉じなかった
本棚にはおとぎ話と空想の国の絵本しかなく
晴れた日には空を眺め花と歌い
雨の日は水滴に合わせて踊っていた

夢を捨てた人がいた

 ....
浮いた光は気まぐれに運ばれているのか
それとも決まった順路を漂っているのか
ただ、示されたとおりに視線を動かす

乾きから守ろうとする瞳は水の膜を張り
鮮明だったはずのものがぼんやりにじむ
 ....
忘れかけている遠い記憶のあの子

白いワンピースがお気に入りだった
生まれつき色素が薄かったようで
肌は陶器のようにつるりと白く
髪は太陽に透けるような茶色だった

大人は口をそろえて
 ....
大切かどうかわからない記憶は
抱えていた膝小僧のかさぶたにある

転んだのは最近のことだったか
それとも遠い過去のことか
鉄さびのようなすすけた色は
かつて赤い液体であっただろうことを
 ....
遠くばかりを探していたら
いつの間にか目の前に立っていた
思わず向けてしまった人差し指

音楽の授業でピアノのテスト
弾けないわたしは放課後まで練習
ミの位置にはいつも中指

教えてく ....
わざわざ好んで痛みを求める必要などない
足場の悪い苦境を選ぶ必要もない
水面に浮かぶ蓮の花みたいに白々と
空っぽの美しさを知ることのほうが重要だ

ぽかんと丸い広がる空の誕生日が
ぼくと一 ....
おさなごの手で目隠しされたみたいに
まだ薄白くぼんやりとした月は
うろこ雲のすき間から顔を少しだけ見せる

指で四角に切り取って覗き込んでみた
ぼくたちよりうんと長く生きたこの風景は
瑞々 ....
あんさん、覚えておきなはれ
京都のおんな、みんながみんな
はんなりしてるおもたらあきません
御着物似合うおもたらあきません

夜の先斗町はえらいにぎやか
酔っ払った兄さんたちがふらふらと
 ....
まだ色を持たない紫陽花は
ふつふつと泡みたいな蕾をつけて
くすんだ背景に溶け込む

重たく湿った空気の匂いがし
右足の古傷がしくしくと痛む
身体は正確に天気を教えてくれる

 ....
ねずみ色のコンクリートが暗く染まる
何か落としものがあったような気がして
歩いて来た道を右から振り返ってみた
つうつうと機械的に落ちるさみだれ

庭に投げられっぱなしの花切り鋏は
いつから ....
大騒ぎしていた隣の部屋の大学生も
煙を撒き散らしていたスポーツカーも
凛と顔を上げていた向日葵も
みんなみんな、眠ってしまった

ベランダから両足を突き出して
ぶらぶらと泳がせて笑ってみる ....
はじめて母親のお手伝いをした日
食卓には不格好なハンバーグが並んだ
焼きすぎてかさかさになったそれをかじり
父親はくしゃくしゃ頭を撫でてくれた

求めていないとは言わないけれど
ただ、とっ ....
すうっと堕ちていくような感覚と
鈍いしびれがあるという
それでいて苦痛ではないらしい

幼なじみのあの子も
隣の席の委員長も
さらにはわたしのママまで
患ったことがあるらしい

大人 ....
季節のしるしを見つけたくて
うろうろと瞳を泳がせ歩いていたら
夢とうつつの小さなすき間に
足をとられて転んでしまった

うつぶせで顔を伏せたまま
両手をありったけ広げてみる
土の匂いが身 ....
熱い生成りのロウで封をした
真っ黒の布をかけて見えなくして
夜みたいな部屋に投げ捨てていた
そんな忘れかけていたものが

ふとした、はずみで
なが、れる。

止める事なんて出来るはずも ....
風景描写。

足首ほどの深さの川には
この時期多くの人が集う
或る子どもは魚を追いかけ
或る男女は飛び石を渡り
或る老人は側で居眠りをする

風景描写。

一両編成の青い電車は
 ....
夏祭りですくった金魚は
10年以上経った今でも元気で
水槽の中を気ままに揺らぎ
ときどき思い出したように
視線を合わせてくる

特に感情は見受けられない

小さな家の小さな水中で泳ぐお ....
投げかけてしまうのは
簡単なことだけど
それでおしまいじゃないって
みんな、知っている

自分の足で立つことが
どれだけ大切かなんて
色んな人が色んな言葉で
語ってきたこと

それ ....
しなびたような風にはたはたと
力なく揺れている黄色い旗

近くの小学校からだろう
校内アナウンスが外に漏れ聞こえる
時折キンとした音が混じりながら

光化学スモッグ注意報が発令されました ....
きっとまだ
折り返しにすら着いていないと思う

それでも
人生の半分以上
きみがいた

裁縫の授業が苦手で
いつも居残りしていた
なかなか針が進まないわたしを
いつもこっそり手伝っ ....
光を認めたときから
歩き始めている

最初の頃は
目に見えるもの全てが
新しくて
眩しくて
喜びに満ち溢れて

時の流れと共に
すっかり見慣れてしまい
踏み出してい ....
つかまえることの出来ない
角の取れた風が丸く波打つ

花ごと落ちてしまったつつじが
こつ、こつと小石にぶつかり
涼しい上流から泳いできた

花街にいる女性の唇のような
程よく熟した艶の ....
上澄みをそっとすくう
余分なものはなく
柔らかくしなやかで
手のひらからさらさらとこぼれる

太陽の光で酸素を作り
葉は濃緑を強める
表面の細い産毛には
小さな雫が張り付いている

 ....
生きることは
漂流することだ

海路は
はっきりと見えるものではなくて
だから時々迷ってしまったり
沈んでしまいそうになる

大波にさらわれたら
口からぷくぷくと細かな泡を吐き出し
 ....
あ。(178)
タイトル カテゴリ Point 日付
つきあそび自由詩9*09/7/10 22:39
回帰する海自由詩9*09/7/7 18:41
アゲハチョウの夢自由詩11*09/7/4 23:52
予定された金曜日自由詩9*09/7/1 18:30
ある日の夏、水の爆発自由詩18*09/6/28 23:00
なぁ、オカア自由詩14*09/6/25 23:50
夢を見る人自由詩6*09/6/22 19:53
ほたる追い自由詩17*09/6/19 17:08
白い世界自由詩15*09/6/16 23:42
かさぶたの記憶自由詩20*09/6/12 17:43
ゆびについて自由詩12*09/6/9 23:46
ア、雨自由詩9*09/6/8 22:06
地球の子ども自由詩15*09/6/5 23:03
京都のおんな自由詩19*09/6/2 23:43
綺羅花自由詩12*09/6/1 21:58
季節に置いていくもの自由詩7*09/5/30 0:28
ところで、発売はいつになるんですか?自由詩16*09/5/26 21:23
料理と詩について自由詩10*09/5/25 0:05
はやりやまい自由詩21*09/5/22 23:28
みちくさ紀行自由詩7*09/5/21 0:05
おぼれる。自由詩7*09/5/19 23:50
風景描写 〜初夏の日〜自由詩5*09/5/18 21:33
金魚自由詩16*09/5/16 14:55
繰り返す、のは自由詩7*09/5/14 23:30
陽炎の記憶自由詩10*09/5/11 18:54
友へのてがみ自由詩11*09/5/9 23:08
忘れるとは、刻み込むことだ自由詩5*09/5/8 12:49
ながれ、ばな自由詩4*09/5/7 21:53
上澄み論自由詩20*09/5/5 14:11
大後悔時代自由詩9*09/5/5 11:45

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