白々と冷えたゆびの先で
あかりを数えていた


ひとつ、ふたつ、みっつ
或いは
いちまい、にまい、さんまい
それとも
いってき、にてき、さんてき


夜の透明度が増していく
音 ....
それは、手のひらでした


空気が冷たくて目が覚める朝
寝床から出るきっかけを作るために
ひとつ大きな伸びをした
ふと指先に感じたもの


腕の中でほんの少し身体をひねる
バランス ....
はだけた空の向こう
だんだんと透明になる秋の模様と
そろりとかき回す
乾いた、みどりいろ


やがて
脱ぎ捨てていく
いちまい、
いちまい、
はらはらと、
はらはらと、


 ....
きっと
鋭角にはねかえったであろう
熱を
うっかりと飲み込む
お腹に、沈んだ


あらゆる隙間から
姿を変え形を変え向かってくる
じかに目を合わせないように
うつむいたまぶたの
 ....
それから、わたしたちは
たわいもない話をした
例えば
太陽熱の行方であったり
入道雲の裏側についてだったり
陽炎みたいな
曖昧な、話ばかり選んで


窓から顔は出さない
直線的に切 ....
舐め取ってしまいたかった


肌に忍び込もうとする熱を
流れる川に見える反射を
足元に伸びる影の創造主を


(つまり、光を)


一見しなやかに見えるそれらの正体は
水あめみ ....
赤と黄と朝焼け雲とくちびるを二人前ずつ欲しいのですが


こころもとなくなったから異国語を呟いてみる(気付かないでね)


ため息の量が午後だけ足りません枯葉の側に落ちてませんか

 ....
耳たぶがかさかさすると思ったら
どうやら蟻が一匹のぼってきてたらしい
上半身だけゆっくりと身体を起こす
よく伸びた夏草が足を覆いかけている


さっきまであおいろばかりだった空に
いつの ....
重心をほんの少しずらせば
スローモーションに身体は傾き
世界はするりとひっくり返る


そのままで
そのままでいて
頭の上に足をつけたきみが見えるよ


わたしたちが歩く世界は
 ....
昨夜の雨でまだ湿っているアスファルトは
打って変わった今朝の強い日差しを吸い込み
ジーンズに包まれた足元からじわじわとあたためる


今朝は目玉焼きを二つ作った
フライパンを火にかけて卵を ....
桜に混じって散り始めた朝も
川面を滑る鴨たちの口ばしも
濁さないほどそっと静かに
重ねた手のひらからさらさらと
留まることなくこぼれて落ちる


喉元がとくとくと同じリズムを刻む
指の ....
噛み付いた歯の先から、刺激


微笑みの国タイランド
とにかくひどく蒸し暑くて
立っているだけで背中を汗がつたう
ホテルの側で借りた自転車には
鹿児島県の防犯登録証が張り付いていた

 ....
身体とこころが、一番遠い日


時計はひとつだけではない
空腹を知らせてくれるのも
まぶたに重みを加えるのも
呼吸を始めるのも終えるのも
全部がばらばらに針を向けていて
アラームはそれ ....
女の声は殆どが水で出来ている


舐めとればそれはひどく甘ったるくて
お祭りの屋台で食べた綿菓子みたいに
口がべとべとになってしまうんだ


男の声は殆どが煙で出来ている


吸 ....
■チューリップ


包むように咲く花びらは
遠いむかしにわたしの頬を覆った
大きくて暖かな手のひらに似ていた


誰のものだったかは
もうとっくに忘れた


中に隠れている ....
いくら考えてみたって、それは
途方もなく大きな壁だし
やっぱり誰かの覗き穴なのだ


漏れてる光は淡くて黄色くて
きっと幸福を形にしたものなんだけど
爪あとに似た影も見えるね
だからき ....
視界の端っこでうたたねをしていたナナは
気付いたときにはもうそこにいない


寝る前にはいつも少しだけ読書をする
きりのいいところでしおりを挟んで本を閉じると
ナナはとってつけたようにそっ ....
間違えないで、空


ざくざくと刻んで煮込む白菜も
頬を薄く赤く染める風の痛みも
機械みたいにぎこちないゆびさきも
そろそろ片付けようと思っていたのに


ちらほらと芽吹いている梅の ....
自転車で


それは
全身がうす桃色に塗られており
まるで幸せを知った少女みたいだった
現実に乗っているものとは違い
錆なんてどこにも見当たらなかったし
ペダルはきいきいと不快な音 ....
母が愛用していた足踏みミシンは
居間の隅っこを定位置にしていた
毎日使っていたわけではないが
学校で雑巾を持って来いなんて言われると
その夜はかたかたと音を立てていた


ミシンは
物 ....
昨夜の雨を吸った落ち葉はぶよぶよと柔らかくなり
いくら踏みしめても何の音も鳴らさなかった
足跡さえも吸収してしまいそうな弾力は
寒さを忘れそうなほどの優しさで失望を覚える


冬はいつだっ ....
緩やかな上り坂を自転車で走ること十五分
月極駐輪場から歩いて五分
駅に着いたときにはいつだって息が上がっている


通学に使用していた路面電車は
この辺りの住民にとって大切な移動手段
そ ....
朝一番に窓を開けると真っ白に吹雪いていた
時が流れるにつれて徐々に雨へと変化して
暮れる頃にはそれさえもあがっていた


駅の改札を抜けて家路につく
空には呑気に星がちらついていて
コー ....
■罫線

歩くことなんか出来ないってわかっていても
真っ直ぐに続く道を知りたかった
言葉はあまりにも無防備すぎて崩れそうで
その柔らかさを利用して思い切り固くした


発しては、ほろほ ....
はじける光を逃がしたくなくて
手のひらで両耳をきゅっとふさいだ


いくらあたたかな毛糸で肌を覆っても
手足は温度を忘れたかのように冷たい
冬は嫌いじゃないし寒さにも強いほうだけど
この ....
熱帯夜みたいなきみの瞳はもの悲しくて
ひとつぶの砂も巻き上げることはなかった
湿らせたのはほんのわずかな空間だけで
振り返った背中の先には象のおりと高らかな歓声


きみのその長い首を支え ....
きみのひらがなにぼくの声を重ねて
地層みたいなしま模様になって
それはありふれたメロディーで
すき間にもぐりこむ小さな虫ですら
小気味良いアクセントにしかならなくて


さっき港を出発し ....
ひと気もまばらな公園で
湿った土の上に落ちた椿の花は
どこか心細げにこちらを見ていた
ささくれたこの景色には眩しすぎるので
その紅色を熱でとろとろに溶かして
指ですくいとりたいと思っていた
 ....
こぼれたミルクは飾りボタンの溝を泳いで
くるくると光を跳ね返していた
いつまでたっても混ざり合うことはなく
胸を埋めるような匂いが辺りに漂い
大気ばかりが乳白色に濁っていた


窓の向こ ....
握り締めることなんて出来ないってわかってるのに
風に翻弄されて舞い落ちる粉雪をつかまえて
その結晶を手のひらに刻み付けたいと思った


この冬最初に降る雪を見たのは
帰省先である少し北の街 ....
あ。(178)
タイトル カテゴリ Point 日付
いち自由詩711/12/15 8:14
101個目のぬくもり自由詩9*11/12/9 8:51
一葉自由詩411/11/1 11:19
飲み込む自由詩6*11/8/18 19:41
休息自由詩6*11/8/12 10:19
甘い光自由詩11*10/11/14 23:55
秋のうた・三首短歌4*10/10/7 19:57
ぼんやり自由詩10*10/9/30 22:04
鉄棒遊び自由詩16*10/8/5 23:58
夏を蒸らす、わたしの自由詩8*10/7/8 19:39
すきとおる自由詩16*10/6/20 21:21
空色の損、ソーダ水自由詩14+*10/6/3 19:48
五月二十四日自由詩11*10/5/24 20:06
声の実験自由詩22*10/5/16 17:28
春の或る日、植物園にて自由詩1510/4/21 0:02
ひみつ自由詩15*10/3/30 21:54
ひとりのナナ自由詩8*10/3/16 21:39
春のてまえ自由詩10*10/3/10 23:40
夢でぼくは、旅人だった自由詩12*10/3/5 23:17
ミシン自由詩8*10/3/1 22:24
帳尻を、合わせる自由詩21*10/2/22 22:26
路面電車自由詩12*10/2/16 13:53
水たまりには世界が写っている自由詩25*10/2/8 19:05
ノートのおと自由詩12+*10/2/1 22:50
真冬の灼熱自由詩9*10/1/26 23:26
きりんの首の骨自由詩9*10/1/25 13:02
地層自由詩8*10/1/18 22:01
おんな椿自由詩11*10/1/13 19:07
白く濁った世界自由詩16*10/1/6 23:23
この冬最初に雪を見たのは新年だった自由詩15*10/1/1 22:10

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