月の滴りの十日間
   
問いと答えが
輪舞するので
ぼくは呪文を
唱えたかった
「ヨイヨイ」
   
見えない蝶が
カップの縁に
しばし停泊したという
気付かないまま
飲んで ....
名前のない花を見ている

水をやってはならない
理もなく咲いた花だから

だからこそ

萎れてゆくのを見届ける
膝を抱えて

一角獣が隣で寝そべる

せめて
泣けたらいいのに
何処にいたんだ
一人でいたのか
誰かといたのか
どこのスーパーだ
何を買ったんだ
いくら持ってたんだ
どうしてその時間なんだ
どうしてその店なんだ
どうしてパスタなんだ
どうしてうど ....
アゲハに向かって
サナギの頃の
あだなを呼ぶものはおばかです

晴れたり曇ったり
賭けをする空の下
泣いたり笑ったり
旅をする蝶がいて

(幸あれ、と言ってみる)

サヨナラを言 ....
悲しみのあまり
地球の上に這いつくばっていると
マントはもっと青くなる
おめでとう
これでようやく
動物の仲間入りだよ
頭上を銀河鉄道が
通り過ぎるのを気付きもせずに
四つん這いのまま ....
あんまり心が鬱屈するので
冷たい水でも買おうと
深夜のコンビニに立ち寄った
ポケットの中をまさぐると
入っていたのはコインと星屑
どちらが使えるかわからないので
両方差し出すと
店員が受 ....
東へ行ってとまどい
西へ行っておどろき
南へ行ってためらい
北へ行ってささめく

夕日だけは聞いている
旅人の来歴を
小さな声の問わず語りを

風の通り名を

城の孤独を

 ....
おかえり
おかえり
誰が帰って来たか知ってるのかい
その人は本当にお父さんだろうか
その人は本当に先生だろうか
本当に夫だろうか
本当に息子だろうか
本当に
ニンゲンだろうか
幽霊み ....
だきしめる
だきしめる
秋風をだきしめる
沈黙をだきしめる
他人をだきしめる
通りすがりにだきしめる
ぼくのアリクイをだきしめる
人食いアリクイをだきしめる
雲をだきしめる
幻をだき ....
庭の手入れをしていると
どこからかぶらりと
見慣れない動物がやってきた
とても悲しい目をして
物置や車のあたりをうろついている
保健所に電話するか警察に知らせるか
本来ならばするところだが ....
真っ青な悲しみが胸に飛び込んできて
今日も列車が出て行く

チュンセがポーセを探すのは無駄
チュンセがポーセを探すのは無駄

私はどうして酸っぱいという名の犬になり
夜の川まで駆けて行く ....
スーパームーンに照らされて
稲穂が豊かに頭を垂れる
案山子は笑顔
それとも泣き顔
百年に一度の夜が
今宵もまた
街では何も起こっていない
驚くほどに何事も
そして地下深くでは
悲しみ ....
君と
アリクイと
夜の道

お祈りは
メールで済ませ
即物的な
不幸の話

長い舌が
出たり
入ったり
するのを見ている

わたしたち
永遠に眠るまで
予行練習としての ....
いないのが普通
神なんて
だから黒光りする
泣いてても仕方ないから

この世のものでない
羽を広げて
偶像が立ち並ぶ
ぎざぎざの空を飛ぶ

他人の空に
飛散して
無理する無理数 ....
ふらんけんみたいなまちなかを
とおりまみたいなぼじょうにとらわれ
うろうろさまよういきものは
いかほどにけいけんなのか
いわのように
しまのように
ふるいうたのように
たにんのそらにのよ ....
夜の学問といえば
決まってる
誰にも星が
一つ宿っていて
どの星と
どの星が
つながるか
知りたがる
さあ
天文学を
始めよう
私の星と
あなたの星が
どんな星座を
描くの ....
黙ってはいけない
布団の中の
タツノオトシゴ
外は深い夜
または海の底
徘徊する
神や泥棒
黙って二体で
寝転んでると
動物みたいな気がしない
だから呪文ぐらい
言わねばならない ....
忘れてしまえる
青いマントにくるまって
北風といっしょに
懐の金管楽器だけは
悪魔に決して見つからぬよう
どこからか鐘が鳴る
氷の海でイッカクは
国境付近でミツバチは
忘れてしまえる
 ....
透明な医者が
透明な患者を手術
透明なメスといのり
透明なオスとさかり
透明な血が飛んで
透明な患部が放り出される
そして訪れる
透明な治癒
空は青く
なにごともなかったかのように
 ....
水の都を出発したのは
十五の頃
父と叔父に連れられて
大量の宝石を買い込み
船に乗り込んだ
タルタル人の庇護のもと
海峡を渡る蝶を見ながら
砂漠を越えた
王は大いに感心する
髭を撫で ....
夕暮れの駅前。
あの人は呆然としている。
空は焼けるような橙。
自分ながら不思議に思う。
 (いつも見慣れた光景なのに
  どうしてこんなにあっけに取られる。
  ばかなのだろうか。)
 ....
絵空事が好きだ

私の好きなものが
二つも入っている

ミロの絵はとてつもない
子どもの落書きのようでいて
都会の喧騒のようでいて
原始人のひらめきのようでいて
神話の亡骸のようであ ....
 タクシーがなければ 馬に乗って帰るといい 真夜中のどこかに 青白い馬が潜んでいる 二人乗りだから 相棒を見つけて 飛び乗るんだよ 鬣をつかんで しっかりと 離さないで 
 高速道路など 使うまでも ....
俺は帰宅の途中(フラリ)
とびどぐ買い求め懐に(ガサリ)
笑う悪魔のように(ニヤリ)
ふきげんだけどじょうきげん(ユラリ)
中古車はたやすく(ブラリ)
最高時速を記録する(ブロリ)
家族と ....
 不眠症の坊 夢遊病の嬢 おいで 深海魚になって スイスイと 無数の星に見張られて 夜遊び
 悪いことしていると 空に 一筋の流星 輝く裸足で追いかけたらば 森の中 何か着弾 地面にめりこみ 光を放 ....
 今宵 都市の片隅で 人知れず行われる 儀式 口封じ
 甘いだろうか 苦いだろうか いずれにせよ 言葉は四角い 箱に入れられ 心の海の 奥底へ 沈められる 秘密は 知られないほど 強い 光を放つ
 ....
行き先のない電車に乗って
あてのない旅に出る
ふらりと飛び降りて
名も無い街をうろついてみる
すると出会う
懐かしい感じの人に
初めて会うのに
いつか出会った気がしてならない
気の迷い ....
私は
食べるであろう
たまごかけごはんを
タクラマカン砂漠のことを考えながら
沢庵を向こうに押しやりながら
足りないものはなくならない
正しいものはどこかあやしい
楽しいことは覚えられな ....
これは
どこへゆく電車?
東京に行きますか?
故郷に行きますか?
被災地に行きますか?
きみんちに行きますか?
外国に行きますか?
天国に行きますか?
地獄に行きますか?
遅刻しませ ....
団地の片隅で
君と出会って
百ねんぶりの
再会みたいで
なきそうにわらいわらいそうになく!
世の中は不穏
という怪物に
藪にらみされ
ふるえ上がる
そのせいかな
よゆうがない
特 ....
やまうちあつし(469)
タイトル カテゴリ Point 日付
よい宵自由詩014/11/24 19:44
名前のない花自由詩1*14/11/20 15:35
alibi自由詩2*14/11/19 18:12
挨拶のはじまり自由詩1*14/11/17 19:40
青いマント自由詩114/11/16 17:23
使徒行伝自由詩1*14/11/15 19:13
夕凪自由詩114/11/13 15:31
おかえり自由詩4*14/11/10 13:33
だきしめる自由詩4*14/11/9 9:38
悲しい動物自由詩5*14/11/4 14:35
銀河鉄道症候群自由詩314/10/29 21:15
ほうろう自由詩014/10/28 12:06
アリクイのララバイ自由詩114/10/21 10:37
悪い虫自由詩1*14/10/20 10:09
ことばはひかる自由詩2*14/10/18 6:21
天文学自由詩4*14/10/16 14:33
魔法自由詩114/10/15 15:15
忘れてしまえる自由詩214/10/10 18:10
透視図法自由詩1*14/10/9 11:13
東方見聞録自由詩2*14/10/8 12:40
私の夕焼け自由詩3*14/10/6 13:37
絵空事自由詩4*14/10/5 10:08
YOFUKASHI自由詩3*14/10/3 12:36
とびどぐ自由詩114/10/2 12:19
夜遊び自由詩114/9/30 10:50
口封じ自由詩314/9/29 19:13
何もない街自由詩2*14/9/25 17:17
たまごかけごはん自由詩2*14/9/23 13:53
どこへゆく自由詩1*14/9/21 8:03
むー自由詩214/9/17 17:10

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