【petit企画の館】/蝶としゃぼん玉[191]
2016 09/29 19:18
田中修子
「子どものための幻想詩」
子どもらしい子どもにしたがる
大人のためかもしれない
大人になりきれない子どもがえがく
むなしい まぼろしかも
けれど中にはよいものが
目を磨くんだよ
まだ澄んだ水晶とゼリーのなか
いいものいれてく
疲れないよに
たくさんまばたき
耳をぴくぴくさせてごらん
すきとおった音、わらいごえが
やわらかい貝殻のなか響いていくように耳腹筋
手をひろげてごらん
葉脈みたいな血管
やわらかい爪
わるいことできない指紋
たくさんのものをつくり、さわっていくんだよ
ねがわくば よいものを
すべてのことばが
大人になりきれないこどもがえがいた
恋してかきならす虫のうたごえ
頬を撫でる気持ちのいい風
喉にしみるはちみつの甘さ
ひとたらしのバターのようにごちそう
ねむる前の牛乳みたいにあったか
そんな
むなしくない
まぼろしでありますように