「 こわちたのひとつめ。 」
PULL.







ラジヲが壊れている。

夕べ壊れた。
村にひとつだけしかないラジヨなので、
あれが壊れると、
ぼくらはすごく困る。

それを聞いた、
村長さんは慌てふためいて、
口から泡を吹いて倒れてしまった。
心臓発作だった。

父さんと母さんは、
あれから、
寝室に鍵を掛けて出てこない。
ふたりの悲鳴のような声が、
ときおり聞こえてくる。

村には、
おとなたちが溢れ出して、
みんなで略奪や殺人をして、
みんなの家を放火して、
みんな燃やしている。

ぼくらこどもは集まって、
みんなで手をつないで、
赤い空に向かって、
祈っている。
助けて。


壊れる前、
ラジヲはこう喋って、
ぷつりと事切れた。

「宇宙人が来た。」












           了。



自由詩 「 こわちたのひとつめ。 」 Copyright PULL. 2006-12-19 01:28:01
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