アゲハ(百蟲譜22)
佐々宝砂

アゲハは真上に飛び立つ。
目的があるみたいに
だけど少しも慌てず鷹揚に
まっすぐに。

あかるい春の日
かわいた地面に
ゆらゆらと落ちている
アゲハの影。

高く舞い上がれば
薄れて消えてしまう影。
それは私の似姿かもしれない。

影があることも知らず
それを私が見ていることも知らず
アゲハは飛ぶ。


(未完詩集「百蟲譜」より)


自由詩 アゲハ(百蟲譜22) Copyright 佐々宝砂 2004-03-17 02:07:37
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
百蟲譜